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文在寅政府の改革の成功を左右する「三つの分かれ道」

登録:2019-05-10 09:06 修正:2019-05-10 10:47

 文在寅(ムン・ジェイン)政府は成功することができるだろうか。与党の戦略家数人の力を借りて、文在寅政府の残りの任期3年に影響を与える要因は何かをまとめた。

 すべてが政治的だ。文在寅大統領の成功と失敗を左右する要因も政治的だ。政治では、選挙はα(アルファ)でありΩ(オメガ)だ。選挙で勝てば仕事ができ、仕事をちゃんとしてこそ選挙で勝つことができる。

 文在寅大統領の前には、2020年4月15日の第21代国会議員選挙、2022年3月9日の第20代大統領選挙が待っている。国会議員選挙は不利で、大統領選挙は有利だ。なぜだろうか。

 国会議員選挙は回顧に対する投票だ。政権を審判するというフレームが作動する可能性が高い。

 大統領選挙は展望に対する投票だ。最近の世論調査で、次期大統領選候補1位は自由韓国党のファン・ギョアン代表だが、イ・ナギョン、パク・ウォンスン、キム・ブギョム、イ・ジェミョン、ユ・シミン、キム・ギョンスなどに分かれている与党の候補者たちの支持率の合計は、ファン・ギョアン代表を含めた野党候補の支持率の合計よりはるかに高い。政権交代よりも政権維持を望む有権者が多いということだ。

 そうとはいえ、国会議員選挙で負ければ文在寅政府の改革は水の泡となる。国会議員選挙は単に国会議員を選ぶ選挙ではない。国会は立法府だ。大統領制は、大統領と国会という二つの選出された権力が相互協力と牽制で国政を導く分立型権力構造だ。総選挙で一つの権力を生み出す議員内閣制とは異なる。

 米国は、大統領制のこのような原理が作動する。「トランプ行政府(administration)」という言葉はあっても、「トランプ政府(government)」という言葉はない。対外的には大統領が国家を代表するが、対内的には行政府の首長であるだけだ。

 韓国は違う。「文在寅政府」はあるが、「文在寅行政府」はない。大統領が無限の責任を負う方式で大統領制を誤って運用している。独裁と権威主義の残滓だ。文在寅政府の改革が遅々として進まないのは、国会で法案を通過させることができていないということが大きい。

 1987年の大統領直接選挙制改憲後、議会権力と大統領権力の不一致は最も大きな政局の不安要因だった。政権を握った勢力は、迎入れ、統合、連立などで規模を大きくした後、国会で予算案と法案を強行処理する方法で国政を導いた。

 しかし、2012年の国会法改正後、法案の強行処理がほとんど不可能になった。自由韓国党が今のように文在寅政権を「左派独裁」と規定し全面闘争をする状況では、文在寅大統領が国民に約束した国政課題を完遂する方法はない。

 大統領が発議した憲法改正案が国会で投票不成立で否決され、政府が提出した地方自治法全面改正案を自由韓国党が「全面的に」反対するというのが、冷ややかな現実だ。文在寅大統領と共に民主党が来年の国会議員選挙に必死になるのもそのためだ。

 簡単な算数をしてみよう。文在寅大統領が残りの任期中に改革法案を可決させるためには、共に民主党が議席の5分の3以上を占めなければならない。そうすればすべての改革法案をファストトラックに上げることができる。可能だろうか?不可能だ。

 2004年、盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の弾劾の逆風が吹いた時も152議席にとどまった。しかも準連動型比例代表制では、第1党と第2党の議席が今よりも減るのは避けられない。

 民主平和党、正義党など文在寅政府の改革に賛成する野党と共に民主党の議席を合わせて5分の3以上を占める可能性はあるだろうか? ある。

 文在寅大統領と共に民主党が、選挙後にこれらの勢力を集めて改革立法連帯を構築すれば、公正取引法、商法、国家情報院法改正案など重要な改革法案をファストトラックに上げることができる。

 改革立法連帯の必要条件は、準連動型比例代表制だ。その理由は何か。270日後に国会本会議で選挙法改正案が否決されれば、高位公職者犯罪捜査処(公捜処)設置法案と検察・警察捜査権調整法案も全て否決される。文在寅大統領は何の成果もなく中間評価を受けなければならない。成績が良いわけがない。民主平和党、正義党も意味のある議席を確保しにくくなる。文在寅政府の改革法案はすべて流される。

 したがって、文在寅大統領と共に民主党は何が何でも今ファストトラックに上がっている準連動型比例代表制(選挙区225議席、比例代表75席)で選挙を行わなければならない。

 基本の枠組みが維持されれば、議員の定数を増やすことは可能だろう。自由韓国党の議員も、選挙区議席を今の水準で維持するなら、準連動型比例代表制をあえて反対する理由はない。

 選挙で良い成績をおさめたからといって、改革立法連帯、改革法案のファストトラック指定、法案本会議通過が自然に行われるわけではない。

 第21代国会の任期は、2020年6月に始まる。院構成の交渉に1、2カ月はかかる。2020年の秋ぐらいに法案をファストトラックに上げれば、国会本会議の採決は2021年夏以降にようやく可能となる。大統領選挙の日程を考えると、この時期になれば与党内部の権力が次期大統領候補らに移動し始めるだろう。権力の移動は、改革法案通過の障害になりかねない。

 結局、文在寅大統領が今から来年の4・15国会議員選挙以降、そして任期末までの3年間ずっと、相当なレベルの政治力を発揮しなければならない。大統領は最も重要な政治家だ。

 多くの人が、文在寅大統領に野党との対話拡大を注文している。文在寅大統領も、野党との対話と妥協がどれほど重要かよくわかっている。

 昨年11月5日、大統領府で文在寅大統領と与野党5党の院内代表が与野党・政府の国政常設協議体を発足させた。小商工人・自営業・低所得層支援法案の処理や弾力労働制の拡大適用など、12項目の合意を出した。「経済活力のための規制改革」「朝鮮半島の完全な非核化と平和体制構築のための超党的協力」「代表性と比例性を拡大する選挙制度改革」まで含まれていた。大統領が直接乗り出せば、かなりのレベルの政治的合意がいくらでも可能だという事実を十分に証明した。

 与野党・政府の国政常設協議体を再稼働すれば、ファストトラックに上がっている選挙法改正案、膠着局面に入った朝鮮半島非核化を含め、ほぼすべての分野で合意を引き出すこともできる。経済活力をもたらすための規制改革案は、自由韓国党に主導権を渡す方がかえって効率的だ。

 対話と妥協を文在寅大統領一人で行うことはできない。ファン・ギョアン代表は、自由韓国党の次期大統領選候補の立場を固めた状態だ。残り3年、少なくとも来年の国会議員選挙の時まで、政局の半分はファン・ギョアン代表が責任を負わなければならない。

 ファン・ギョアン代表が文在寅大統領との対話に出るだろうか。今すぐには難しいだろう。ファン・ギョアン代表は全国を回りながら次期大統領選挙運動を始めた。

 しかし、院内第1野党が場外闘争ばかりを続けることはできない。自由韓国党の議員たちにはそのような意志もなく、金もない。民生を活性化させなければならないという大義名分で国会に戻ってくるだろう。文在寅大統領と共に民主党は、その機会をつかまなければならない。

 在寅大統領の政治力には、人事、道徳性、メディア政策など政権管理能力も含まれる。

 文在寅政府の人材プールは狭すぎる。何とかして広げなければならない。性格は合うべきだが、公平中正性を維持しなければならない。政権後半期に決まって起こる権力型不正は致命傷になる。監督を遅らせてはいけない。

 文在寅政府にはメディア政策がない。広報もない。いわゆる保守新聞の攻撃はあまりに度を越している。政権後半期になるほど大きな負担になる。能動的に対応しなければならない。論争で押され続けるのは危険だ。

 経済活性化と朝鮮半島非核化という構造的な変数もある。文在寅大統領が統制するには限界がある。しかし、成果よりは態度が民心を左右する。結局、どのように説明し、どう説得するかという問題だ。漠然とした楽観論も無責任な悲観論も正しい態度ではない。文在寅大統領が真摯に最善を尽くす限り、国民の信頼は損なわれないだろう。

ソン・ハニョン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/893350.html韓国語原文入力:2019-05-10 07:14
訳M.C