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信号弾打ち上げた株主行動主義、「支配構造の改善」の動力へとつながるか

登録:2019-03-29 06:35 修正:2019-03-30 22:53
アジア地域における株主行動主義活動の推移(単位:件)//ハンギョレ新聞社

 株主行動主義の時代が本格的に到来した。国民年金が株主権の行使を通じて、チョ・ヤンホ韓進グループ会長の大韓航空社内取締役の再任を阻止したのは、その信号弾だった。 資本市場では、機関投資家のスチュアードシップ・コード(受託者責任原則)に基づく活動や国内の株主行動主義ファンドの出現などで、今年から韓進グループ以外の企業でも支配構造(コーポレート・ガバナンス)の改善効果が現れるなど、多くの変化が起きると予想されている。

 バリューパートナーズ資産運用のキム・ボンギ代表は28日、「長期的に見ると、今年は大きな変化の始発点になるだろう。昨年までは株主提案があまり見られなかったが、今年は大幅に増えた」とし、「今年には、少数株主の行動が社外取締役や定款を変更するのは難しいかも知れないが、来年にはスチュワードシップ・コードがより活発になることが予想され、可能になるだろう」と見通した。株主行動主義とは、株主が経営に直接関与し、企業や保有株の価値の上昇を追求する投資方式を指す。

 株主行動主義の活動はすでに世界的に広がっている。全世界の行動主義ファンドの規模は2017年に1256億ドルで、2011年の509億ドルに比べて147%成長した。米国投資銀行JPモルガンは、行動主義ファンドが昨年企業の支配構造の改善や取締役の選任への反対などに乗り出した活動が、全世界的に651件にのぼると集計した。

世界における行動主義ヘッジファンドの規模の推移(単位:億ドル、資料:JPモルガンの「アジアの株主行動主義」)//ハンギョレ新聞社

 一方、国内では株主行動主義の活動がこれまであまり見られなかった。行動主義ファンドが2011年から2017年までアジアで展開した活動の割合を見ると、韓国(6%)は、日本(32%)や香港(24%)、中国(10%)に遠く及ばない。新韓金融投資のキム・サンホ研究員は「国内では行動主義ファンドに対し、外国ファンドが国内企業を奪取するという否定的なイメージが強かった」とし、「行動主義ファンドが企業の不合理な点を指摘しても、世論の後押しを受けることが難しく、制度的に外国人投資家のような少数株主が行動主義を実現するには不利な環境だった」と分析した。同期間、国内の企業支配構造は改善されなかった。アジア企業支配構造協会が公開した調査によると、韓国は2016年と2018年の2期連続で9位を占めた。日本(7位)やタイ(6位)、インド(7位)より順位が低い。

 国民年金などの機関投資家らは、このような状況の中で、頭を抱えていた。特に、韓国経済の高度成長が終わり、何もしなくても投資企業が高収益をもたらす時代はもはや終わった。さらに、大韓航空のように経営能力に対する検証もなく役員になったオーナー一家が、パワハラなどで企業のイメージを失墜させ、資産収益率が急落するリスクも露呈した。仕事の集中発注などで、企業の利益が株主ではなくオーナー一家に流れたケースも多かった。結局、顧客の老後資金などを守るためには、投資した配当を増やしたり、価値が落ちた企業の問題点を改善させる作業が必要になった。このような背景から、スチュワードシップ・コードが導入された。

 スチュワードシップ・コードは、韓国ならではの株主行動主義の活動を引き起こした。29日、韓進大韓航空(KAL)の株主総会で、チョ・ヤンホ会長と社内取締役の選任などをめぐり票対決を行うKCGI(カン・ソンブ・ファンド)は、国民年金の支援射撃を期待している。ハナ金融投資研究院のオ・ジンウォン研究員は「スチュアードシップ・コードの導入がもたらすバタフライ効果」報告書で、「スチュワードシップ・コードを先に導入した日本の場合、株主行動主義など責任投資規模が急増した」と指摘した。国内でも、バリューパートナーズ資産運用に続き、韓国投資バリュー資産運用やライム資産運用などは、行動主義私募ファンドの発売を検討している。個人投資家が加入できる行動主義スタイルの公募ファンドもある。株主価値フォーカスファンドを運用するKB資産運用のチョン・ヨンヒョン・マネージャーは「公募ファンドの市場自体はまだ活性化していないが、スチュアードシップ・コードの活動が多く紹介され、販売先でも顧客に商品を説明しやすくなったと話している」と伝えた。

 資本市場では少数株主が大株主をけん制できる制度的基盤がまだ弱いという指摘もある。文在寅(ムン・ジェイン)大統領の選挙公約である集中投票制の導入や監査委員の分離選出のような少数株主権の強化はまだ実現していない。私募ファンドの10%経営参加要件とヘッジファンドの10%超過保有株式議決権制限条件などの規制を緩和し、産業を大型化・多角化しようとする資本市場法改正案も、まだ国会で審議中だ。共に民主党のキム・ビョンウク議員室関係者は「野党が法案審査への意志がなく、スピードが出ない。4月の法案審査小委で論議が行われるかどうかも分からない」と話した。このほか、大韓航空の株主総会でもわかるように、議決権の諮問機関が反対意見を勧告したにもかかわらず、チョ・ヤンホ会長の社内取締役再任案に賛成した民間運用会社の独立性の強化も課題に挙げられる。

イ・ワン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/economy/finance/887834.html韓国語原文入力:2019-03-28 19:52
訳H.J