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[ルポ]機関砲が外された空っぽの陣地には冷たい風…580メートル前方には北陣地跡が

登録:2019-02-14 22:55 修正:2019-02-15 08:42
「9・19南北軍事合意」に伴う非武装地帯(DMZ)内の試験撤収監視警戒所(GP)のうち、歴史的価値を考慮して原形を保存することにした江原道高城GPを13日、国防部がマスコミに初めて公開した=高城/写真共同取材団//ハンギョレ新聞社

 要塞に入る鉄門には鍵がかかっていた。周囲を囲む鉄条網は、67年の風雨に打たれ、赤く錆ついていた。江原道高城(コソン)保存監視警戒所(GP)は、南側の最北端にある最も古い要塞だ。1953年に停戦協定が締結されて以来、昨年の9・19南北軍事合意で撤収するまで南側の軍人はここで北側に銃を向けていた。

 高城の民間人統制区域に入り、一般前哨(GOP)の鉄条網をすぎればそこから非武装地帯(DMZ)だ。停戦協定以後、南側の非武装地帯には監視警戒所が60余り、北側には160余りが作られた。南北は「9・19南北軍事合意」により昨年10~11月にそれそれの監視警戒所11カ所から火器、装備、兵力を撤収した。ただし歴史的象徴性を考慮して、それぞれ一カ所ずつはその形態を保存することにした。南側は海抜340メートルに位置する高城GPを選んだ。このGPから軍事境界線まではわずか300メートル、向かい合う北側の監視警戒所までは580メートルの距離だ。「南側GPで大声を張り上げれば、北側ですべて聞こえるほど」と保存GPの関係者は話した。13日、軍当局は初めてこの警戒所をマスコミに公開した。ハンギョレが直接現地を見て回った。

取り去られた窓。「9・19南北軍事合意」に伴う非武装地帯内の試験撤収監視警戒所(GP)のうち歴史的価値を考慮して原形を保存することにした江原道高城GPを13日、国防部がマスコミに初めて公開した。使われなくなった警戒所の内部=高城/写真共同取材団//ハンギョレ新聞社

 一般前哨の鉄条網を通過し、未舗装道にそって3.4キロほど走れば、その終端に古い城のように見える保存GPが姿を現す。この日の体感温度は零下11度。軍人も武器もすべて撤収した保存GPは、強烈な海風に吹かれてぽつんと立っている。鍵で堅く閉ざされた鉄門を開け、中に入ると冷気が漂っていた。武器と弾薬が積まれていた倉庫は、口をポカンと開けていた。中は黒くガランとしていた。

 昨年10~11月、警戒所から兵力が去るまでは、1個小隊規模(30~40人)の人員が常駐していた。警戒所の中には、将兵の勤務のための内務班、食堂、トイレが用意されていた。だが、どこがどんな用途で使われていたのか、すぐには識別できなかった。取材のために持っていった照明を隅々に照らすと、壁には取り外されそこねた“残飯”の標識が見えて、食堂だと思われた。白い便器が置かれているのでトイレだとわかる程度だった。

 1階の生活館から階段で最上階に上がると、45人程度が一度に入れる“部屋”のような施設がいくつか見えた。北側で異常兆候が捉えられれば、軍人が走って行った所だ。GPの関係者が「機関銃、機関砲などが北側に向けて据え置かれた共用火器陣地」と説明するまでは、コンクリートの塊りにしか見えなかった。今は空っぽの陣地には、砂袋10個程度だけが残されていた。警戒所の監視塔と防護壁の周辺にはためいていた太極旗と国連司令部旗もすべて外され、旗竿だけが煙突のように残っていた。

 GPの撤収で軍の警戒態勢に支障が生じるのではないかとの取材陣の質問に、この関係者は首を横に振った。「南側は北側とは違い、GPの後方に一般前哨を運営しており、保安装置が二重になっていて、科学化された警戒システムで監視システムを運用中」だと答えた。

「9・19南北軍事合意」に伴う非武装地帯(DMZ)内の試験撤収監視警戒所(GP)のうち、歴史的価値を考慮して原形を保存することにした江原道高城GPを13日国防部がマスコミに初めて公開した=高城/写真共同取材団//ハンギョレ新聞社

 警戒所に上がって北側を見れば、真下に軍事境界線を意味する黄色い旗がはためいている。少し視線を上げれば、うす赤い地肌をむき出しにした丘が目につく。昨年まで北側の監視警戒所があった場所だ。その後方には、朝鮮戦争当時に南北が接戦を行った月飛山高地が高くそびえている。東に視線を移せば、トンムヒョン展望台があり、かつて金日成(キム・イルソン)主席と金正日(キム・ジョンイル)委員長、そして2014年には金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が直接訪問し放射砲射撃を指揮した所だ。

撤収された北側GP。「9.19南北軍事合意」に伴う非武装地帯(DMZ)内の試験撤収監視警戒所(GP)のうち、歴史的価値を考慮して原形を保存することにした江原道高城GPを13日国防部がマスコミに初めて公開した=高城/写真共同取材団//ハンギョレ新聞社

 分断の最前線で“戦争の傷と痛み”をそっくり経験したこの場所の象徴性を考慮し、文化財庁は14日、文化財登録を推進すると明らかにした。

高城/ノ・ジウォン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/882174.html韓国語原文入力:2019-02-14 21:27
訳J.S

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