「韓国最大の到来地」の名も空しく
越冬に訪れるオオハクチョウなど急減
10年間で「9000羽から3900羽」に減少
えさの多い所でも姿を消す
「ハクチョウは警戒心が多い…すべて人間のせい」
「大渚・厳弓大橋など各種の開発事業が
河口生態系を破壊…すぐに撤回すべき」
釜山市「交通量増加は避けられない」
「ブウウウン」
突然の轟音に、えさを探して水中に頭を突っ込んでいたハクチョウたちが一斉に首をもたげた。羽に頭をうずめて休んでいたオオハクチョウたちも驚き、周囲をきょろきょろ見回した。飛び立とうとばかりに羽ばたくハクチョウも見えた。27日午前、洛東江(ナクドンガン)下流の釜山江西区(カンソグ)の大渚生態公園の南端で起きた状況だった。轟音の主は、華明生態公園のボート係留場から出発したモーターボートだった。
現場に同行した「湿地と鳥の友」のパク・ジュンロク運営委員長は「渡り鳥のストレスが激しい。保護区域に指定された所でもちゃんと休むことができないのに、他の所ではますますそうだ」と述べた。オオハクチョウは10月にシベリアから冬を越すために朝鮮半島の南端に飛んできた後、翌年2月にシベリアに戻る代表的な冬の渡り鳥だ。環境部指定の絶滅危機第2級の保護種で、洛東江下流が主な生息地だ。パク委員長は「韓国を訪れるハクチョウ類の70%以上が洛東江河口に来る。一時はここでも1カ月平均でオオハクチョウが500羽ほど観察されたが、徐々に減り続けて、ここ2年間では200羽ほどしか見えない」と残念がった。
もう一つのハクチョウの群落地である江西区大渚2洞の麦島生態公園の南端の浚渫土の積置場付近も事情は同じだ。河へ向かう散歩道は渡り鳥保護のため閉ざされていたが、ハクチョウは目につかなかった。パク委員長は「ここもエゾウキヤガラ(湿地にある多年草)などえさが豊富で、毎月ハクチョウが50羽以上観察されていたところだが、最近すっかり姿を消した」と話した。近くを見渡すと、川につながる葦林の周辺に車の車輪の跡が残っていた。釣り人も数人いた。パク委員長は「すべて人間のせいだ。ハクチョウは警戒心が強く、騒音や振動が激しい所には行かない。洛東江でハクチョウが生息する場所が消えつつある」と嘆いた。実際、洛東江を横切る洛東大橋など大型橋の周辺では、ハクチョウがまったく見られなかった。
渡り鳥が多く集まる江西区明智洞(ミョンジドン)の南明小学校近くの干潟でも、ハクチョウは2、3羽しか見えなかった。沙下区(サハグ)多大洞(タデドン)の峨嵋山展望台では“三角州島”の周辺でのみ何羽かのハクチョウを観察できた。
湿地と鳥の友が2004年から集計した冬季(10月~3月)の洛東江河口の鳥類現況資料によると、毎年訪れるハクチョウの数は2005~2006年の9000羽あまりから、2017~2018年には3900羽あまりに減少した。ハクチョウの個体数は初冬の12月に最大値に達するが、2011年に約4200羽で最高値を記録した後、最近は急減している。2017年は1500羽あまりに過ぎず、2018年度も1000羽台にとどまると推算される。パク委員長は「各種の開発事業で河口の生態系が悪化しているという証拠だ。釜山市は洛東江に推進している橋の建設など開発計画を撤回すべきだ」と主張した。
釜山市は洛東江河口に大渚・厳弓大橋を追加で建設し、ヨット係留場3カ所も新設する計画だ。市道路計画課の関係者は「昨年を基準に洛東江を行き来する一日の平均交通量が56万台にもなる。釜山新港湾の物流量増加で交通量がさらに増えるものとみられ、今の3つの橋(洛東・亀浦大橋、河口堤)ではまかない切れない」と述べた。釜山市は近く環境団体などと協議し、橋梁建設が渡り鳥の渡来地に及ぼす影響を最小化する方案を設ける方針だ。