「韓国軍が合意したんです。それに不信感を抱くなら、韓国軍を解散させろという話ではないですか」
キム・ジンホ在郷軍人会長(77)の声のトーンが落ちた。「9・19南北軍事合意」が安保力を損ねた惨事だという一部の予備役将軍の批判をどう考えるかという質問を投げかけた時だった。そのような主張が一時軍を指揮した人々の口から出る状況がもどかしいようだった。22日、ソウル在郷軍人会館で行われたキム会長とのインタビューは、南北軍事合意をめぐり、いわゆる進歩と保守の間で意見の食い違いが生じる昨今の状況に対する憂慮から始まった。
キム会長は「9・19軍事合意は究極的に北朝鮮の非核化を推進するための過程だ」とし「これをまるで軍が対備態勢を弱めたと評価するのは適切でない」と指摘した。「北朝鮮の非核化は多くの難関を乗り超えなければならない課題です。我々が核を持たない状況で、北朝鮮の核を廃棄するには、南北間の軍事的緊張緩和のための協議過程が避けられないことを認めなければなりません」
国内最大の安保団体である在郷軍人会を率い、自らを「典型的な強硬保守主義者」と呼ぶ彼の言葉としてはかなり異例的だ。彼は合同参謀議長時代、1回目の延坪(ヨンピョン)島海戦を経験し、北朝鮮の核実験に対抗して独自の核武装を主張した。今も韓米同盟の強化を主張し、戦時作戦統制権の返還については慎重さを注文し、代替服務制が兵士たちに剥奪感を与えないかと心配する。
彼は軍事合意をめぐる意見の違いを「北朝鮮を信じない側と朝鮮半島の平和定着を追求する側の認識の差」と診断した。そして「進歩か保守かの理念論争ではなく、国と国民の生存権を脅かす北朝鮮の核をどのように廃棄させるかに対する国民的合意が必要な時だ」と指摘した。「われわれは今、北朝鮮の核をなくし、平和と繁栄の新たな未来に進むのか、それとも分断から半世紀の間続いた対決構図へと引き続き進むのかという分かれ道にいます。安保は国民の生命と国家の存亡がかかった重大な問題なので、決して政治的論争の対象になってはなりません」
9・19軍事合意に不信感を抱くなら
韓国軍を解散せよというのか
安保問題は左右の理念ではなく
国民の命がかかっている重大な事案
政治的論争の対象になってはならない
西海に平和水域が造成されれば
紛争がなくなり軍人が安全になる
核を頭に載せて生きるのか
非核化政策が現在としては最善
キム会長は先日、ある日刊紙に掲載された広告を見て首をかしげたという。「南北軍事合意の討論会を知らせる広告でした。そこに『国軍は死んで語り、生きている間行動する』と書いてあります。国軍に何を行動しろというのか疑問を持たずにはいられませんでした」。彼は「南北軍事合意は在来式要素の有利・不利をただす前に、偶発的な衝突が全面戦争に飛び火することを防止するためのもの」だとし「軍が決定した南北軍事合意を自ら否定しろという要求は適切でない」と強調した。「合同参謀議長時代、西海北方限界線(NLL)一帯で『戦うな、死ぬな』という指針を下した記憶があります。西海に平和水域が造成されれば、北方限界線一帯の紛争がなくなり、兵士も安全になると思います」
在郷軍人会は19日、「政府の非核化政策の立場」と題する資料を発表し、文在寅(ムン・ジェイン)政権の朝鮮半島平和定着努力を支持すると明らかにした。軍事合意書に関しては、軍を無能な集団と罵倒したり、国民を不安にさせる扇動を自制するよう求めた。このため彼は「左派政権の使い走り」「政権の下手人」という非難を浴びたという。韓国社会の陣営論理がどれほど頑固かを痛感した瞬間だった。
昨年8月には「アカ(共産主義者)」という声まで聞いた。「在郷軍人会米州支会で、朝鮮半島の安保政策に関し米国同胞たちを相手に講演を行いました。北朝鮮の非核化を実現するために、米国同胞たちがトランプ大統領を積極的に支持することを望むという内容でした。ところが韓国に帰ってみると、この講演内容がユーチューブに上がっていたのです。『こいつもアカだ』というコメントが書き込まれているのを見てショックを受けました」。彼は合同参謀議長まで務めた軍事専門家をアカに仕立てる陣営論理が、軍事合意書に対する評価を妨げていると考えている。
キム会長は、現在政府が推進する北朝鮮の非核化政策が、現時点では最善策だと考える。「李明博(イ・ミョンバク)政府も朴槿恵(パク・クネ)政府も一様に南北平和の定着を最優先目標に設定し、南北の交流協力を推進しました。しかし、文在寅(ムン・ジェイン)政府は北朝鮮が最も拒否感を感じる核問題の解決を要求したという点で違いがあります」
彼は「大韓民国が核を保有できなかった今日の状況では、すべての加用手段を動員して北朝鮮の核を廃棄させなければならない」と強調した。「北朝鮮は核を簡単には放棄しないだろうと多くの専門家が主張しています。だからといってわれわれが核を頭に載せて生きることはできないという現実を直視しなければなりません」。
彼は「北朝鮮が必要なものを得れば最終的には核を放棄するだろう」とし、「誰も保障できないが、われわれが進まなければならない道だ」と話した。