(裁判官)「キム・ピョングクさん?」「手を挙げればいいんですか?」「パク・ドンスさん?」「はい!」
29日午後4時、済州地裁201号法廷。済州4・3受刑者16人が出席したなか、再審公判が70年ぶりに開かれた。先月、再審開始が決まった受刑者18人のうち、体の不自由なパク・スンソクさん(90)、チョン・ギソンさん(96)は法廷に出席できなかった。16人の認定尋問(訴訟の当事者に間違いないかどうかを確認する手続き)を終えた済州地裁刑事2部のチェガル・チャン部長判事は「法廷で被告人の供述は証拠として使われるため、被告人を保護するために法律では供述拒否権というものが保障されている」と丁寧に説明した。認定尋問も供述拒否権もなかった70年前の軍事裁判(高等軍法会議)で有罪が言い渡された受刑者たちが、初めて“裁判らしい裁判”を経験したのだ。
検察の立場は違った。捜査記録も裁判記録も残ってない同事件で18人が犯したという罪、すなわち公訴事実を、まず具体的に立証する必要があると主張した。済州地検のチョン・グァンビョン検事は「1948年に軍法会議裁判を受けた10人は、1948年4~11月の間に大韓民国政府を転覆させる目的で暴動を起こした。1949年に軍法会議裁判を受けた8人は、1948年4~6月の間に敵を救援・保護し、スパイとして行動した」として、旧刑法の内乱罪と国防警備法第32条をそのまま公訴事実として提示した。チョン検事は「記録がないという理由で公訴棄却の判決を下せば、70年ぶりに開かれる歴史的な再審の意味が薄れてしまう。被告人尋問で最大限公訴事実を特定することに力を注いだ後、裁判所の判断を受ければ、被告人も正当な裁判を受けたと感じるだろう」と明らかにした。無罪を主張する被告人に、ひとまず「何の罪で収監されたのか」を聞き、公訴事実を確定するという趣旨だ。
弁護人たちは、当の検察も何の罪を犯したのか分からないため、直ちに公訴棄却の判決を下さなければならないと反論した。刑事訴訟法は犯罪を犯した日付・場所・方法を具体的に示さなければ罪を問えないとしている。受刑者を代理するキム・セウン弁護士は「具体的な公訴事実は検察官が特定しなければならない。裁判記録を管理・保存する責任が国家にあることを考慮すれば、記録が存在しない不利益を被告人に被せてはならない」と主張した。イム・ジェソン弁護士も「70年前の当事者の多くが理由も分からずに捕まったが、検察が行おうとしている被告人尋問は罪の自白を受けた後で起訴するということだ」と批判した。
裁判部は検察の主張を受け入れる一方、今年末か遅くとも来年初めに再審の結論を下すと明らかにした。裁判部は「被告人たちが高齢であるため、1人でも万が一のことがあれば裁判部は責任を取らなければならないと考える。裁判が遅延されるのは容認できない。ただし(今回の再審が)他の裁判の資料として使われる可能性があるという検察側の主張にも一理があり、場合によっては被告人たちにより良い結果が出る可能性があるため、被告人尋問の機会を与える」とまとめた。
キム・ピョングクさん(88)は法廷に入り、「再審開始の決定を聞いて舞い上がるような気持ちだった。年寄りが一回ずつ集まるのも大変でなかなか来られないので、早くちゃんと進めてくれたらありがたい。良いことだから今日もちゃんと話さなければ」と述べた。1時間余り行われた裁判が終わった後、イム弁護士はキムさんの手を握って「検察官がもう一度尋ねると言っている。全員無罪になると思う」と励ました。