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韓国は80年代の再開発補償法のまま…現実と格差

登録:2018-05-24 21:07 修正:2018-05-25 09:58
長位4区域再開発現場。当該地域の近隣のマンションなどの移住が終わり行き来する人もなく、道端に各種の廃棄物が積まれている=キム・ギョンホ先任記者 //ハンギョレ新聞社

 2009年の「龍山(ヨンサン)惨事」以後、今でも再開発を巡る葛藤と悲劇はあちこちで絶えない。 2005年ニュータウンに指定されたソウル市城北区(ソンブクク)長位洞(チャンウィドン)の再開発地域も同じだ。 再開発組合は常に現金清算者(住宅などを有しているが分譲の代わりに補償を選んだ場合)や借家人らと争い、補償金で問題が解決されなければ“請負警備員”の暴力が登場することもある。

 追い立てられた人々は極端な選択をすることが少なくない。 今年2月、ソウルの「長位4区域」で再開発に反対する遺書を残して自ら命を絶ったニット工場の社長キム・ヒョンシクさん(仮名・64)がそうしたケースだ。 キムさんだけではない。 昨年11月、「長位7区域」ではある現金清算者が刃物で胸を刺した。 4時間の手術後かろうじて一命をとりとめた彼は、最近まで借家人らと共に撤去地域で座り込みをして請負警備員に引きずり出された。 彼らは今「長位7区域」のモデルハウスの前で座り込み中だ。

 結局問題は金だ。 組合側は「法によって補償した」と主張する。 だが、現金清算者と借家人の相当数は「話にならない水準だ」と訴える。 民主社会のための弁護士会のリュ・ハギョン弁護士は「少なくとも今住んでいる家と同様な水準あるいは若干低い水準で生活できるようにすべきだ。 だが、現在の補償金は家や店を半分以下の坪数に減らさなければならない水準だ」と指摘した。

 「龍山惨事」以後法改正があったが、実際に変わったことは多くない。 再開発補償には「公益事業のための土地などの取得および補償に関する法律」(公益事業補償法)が適用される。 工場や商店街借家人のための営業損失補償金基準は公益事業補償法施行規則で決められている。 この施行規則は2014年に「営業場所移転後に発生する営業損失計算基準を従前の3カ月から4カ月に増やし、営業場所の移転後に発生する営業利益減少額を補償に含む水準」に変わっただけだ。

 組合側も言い分はある。 長位ニュータウンのある組合関係者は「自営業者が税金を逃れようと国税庁に税金申告をせずにいて補償金が少なく出るケースがある。 そうなると営業損失を把握する資料がなく、補償金が少なくならざるを得ない」と説明した。 税金をちゃんと出さずになぜ大きな補償を望むのかという主張だ。

 しかし、韓国不動産情報学会長である全北大学公共人材学部のホ・ガンム教授は「税金と補償は別個の問題だ。 税金を出さなかった部分は国税庁が取り立てればいいのであって、補償は別に適切にすればいい」と言い切った。 ホ教授は「現在の補償関連法の枠組みは80年代に作られた。 その時とは経済規模も変わり、営業を新しく始める条件も変わった。 営業損失補償金の基準が4カ月しかならないのが問題だ」と指摘した。 彼はまた「最も根本的な問題は、現金清算者や借家人には開発後に発生する利益が回らないということだ。 だが、彼らが引っ越していく周辺地域は開発利益が反映されて相場が高くなっている状態だ。 結局少なく受け取り多く出すという二重苦が発生する」と説明した。 組合員だけが利益をさらっていく再開発の基本前提自体を変えなければならないという趣旨だ。

 このような葛藤を防ぐために事前の合意が重要だという提案もある。 建国大学不動産学科のシム・ギョオン教授は「率直に言って、再開発の葛藤を完ぺきに解決する方法は特にない。借家人のために組合に一方的に利益を放棄せよと強要することも難しい」として「むしろ再開発事業以前に葛藤を調停することが重要だ。 韓国では再開発事業が極めて早く進められる。 先進国は普通、住民の90%以上の同意を受けなければ再開発ができない。 だが、韓国は住民同意の水準が75%と低い」と指摘した。 シム教授はさらに「補償方法についても多様な形を考えてみる必要がある。 住宅所有者だが分譲も現金清算も受けられないという場合、近隣の事務所を提供する方法などで葛藤を解決することもできる」と付け加えた。 事前合意と葛藤の解決のためのさまざまな補償方法について、深く考えてみることが必要だということだ。

 大規模な再開発自体が問題だという指摘もある。 ソウル市立大学都市工学科のチョン・ソク教授は「ニュータウン方式の大規模再開発は様々な問題を生む」として、日本の東京近隣の多摩新都市の事例を挙げた。 1970年代に作られた新都市だが、今行ってみると小・中・高校の半分が廃校になっているという。 最初に作られた時入居した30~40代が今は60~70代になり、住民の相当数を占めているためだ。 このようになれば都市の活力は落ちざるを得ない。 チョン教授は「都市は“小さな単位で”変化する必要がある。 開発単位が小さくなってこそ零細自営業者も仕事の場が得られる」と強調した。 今のように大規模に再開発をすれば大型建設会社だけが利益を得るという指摘だ。

 すでに住居環境管理事業など既存の町内を維持した状態で住宅などに手を入れる制度が作られているにもかかわらず、全面再開発の方が事業性が高いので皆その方法ばかり考えるというわけだ。 「再開発がもっと難しくなるべきだ」というのがチョン教授の助言だ。

チョン・ファンボン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/845822.html 韓国語原文入力:2018-05-23 11:17
訳A.K