「セウォル号事故の原因調査は全世界の旅客船の安全を向上させることに貢献するだろう」
オランダの海事研究所マリンでセウォル号のシミュレーションを総括するヘンク・ボーム氏は26日、ハンギョレとのインタビューで「この40年間で大型惨事を経験し、旅客船を建造する国際規定はさらに厳しくなった」としながら、このように語った。造船工学を専攻した彼は、38年間船舶の設計者、シミュレーション分析家として働いた海事専門家だ。この20年間で20回余り訪韓するほど韓国の造船業界とも縁が深い。ボーム氏は初日に遺族がプレゼントしたセウォル号のリボンを模型実験中ずっと付け、哀悼の意を表した。
ボーム氏は、セウォル号惨事を1987年のヘラルド・オブ・フリーエンタープライズ号(193人死亡)と1994年のエストニア号(852人死亡)の惨事と比べた。彼は「二つの惨事以降、国連の国際海事機関(IMO)がカーフェリー構造と効果的な脱出方法を研究し、関連規定をさらに強化したように、セウォル号事故の原因が明らかになればもっと安全な旅客船を建造するための新しい国際規定が生まれる」と話した。
旅客船は、国際的に他の船舶より危険だという評価を受けている。まず、層がいくつかに分かれていて重心が高いためだ。船首を向ける時に大きく傾き、船の中の物が移動することで復元性(元の位置に戻らせようとする性質)が落ちる恐れがある。また、浸水速度を遅らせるためには細かい隔壁が必要だが、最近の旅客船は大型貨物車を乗せるために隔壁を減らしている傾向だ。ボーム氏は「セウォル号惨事の原因を徹底的に明らかにするのは、韓国を越えて世界の旅客船の安全のために必要なこと」だと強調した。
特にボーム氏は「船舶事故の調査は一般的に一回で終わらない」と説明した。信頼性を高めるため、2~3回調査を繰り返し、調査期間も5年を優に超えるという。セウォル号の場合検察が、セウォル号の乗組員の操舵ミス▽清海鎮海運の貨物の過積載▽ウリョン通運の不良固定を事故原因と発表したが、裁判所はセウォル号を引き揚げていない状況で事故原因を確定できないという結論を下した。セウォル号の船体調査委員会は現在、操舵機の故障と操舵の過失▽急旋回の航跡と横傾斜に関する調査▽セウォル号の復元性に関する調査などを行っている。ボーム氏は「セウォル号事故から3カ月後の2014年7月、オランダのアムステルダムを離れマレーシアのクアラルンプールに向かっていたマレーシア航空旅客機事故(298人死亡)も、依然として事故原因を調査している」とし、「事故の経緯を徹底的に把握してこそ問題点を解決することができる」と強調した。
セウォル号の航跡と浸水の過程をシミュレーションする海事研究所マリンは1932年にオランダの造船業界が設立したが、その後船の安定性向上を研究する独立した団体に成長した。模型船9900隻余りと船舶プロペラ7400個余りを作った。セウォル号はマリンが製作した9929番目の模型船だ。