2年1カ月ぶりにひざを突き合わせた南北は、会談開始からわずか10時間後で3項目の共同報道文の文案に合意し、体育会談・軍事当局会談など後続会談を開くことにした。南北の最高指導者が直接乗り出して“間接対話”する形で会談を実現させたことが、意見の隔たりがあっても、それを縮められる動力として作用したものとみられる。会談を控え、板門店(パンムンジョム)連絡チャンネルが復元されたのに続き、会談当日の西海地域の軍事通信線まで連結(1月3日)された事実が確認されたのは、新年を迎えて変化した南北関係を象徴的に示している。
同日、南北が合意した3項目は、大きく分けて平昌五輪と南北関係の改善問題の二つの分野に関わるものだ。南北は、平昌五輪への北朝鮮の参加問題めぐる協議を、会談開始から急ピッチで進めた。南が平昌五輪への北側代表団の派遣▽開・閉幕式の南北合同入場▽共同応援に向けた応援団の派遣を提案したのに対して、北は高官級代表団、民族オリンピック委員会代表団▽選手団▽応援団・芸術団・参観団▽テコンドー示範団▽記者団まで派遣するという、予想をはるかに超える対応を示し、そのまま共同報道文に盛り込んだ。南北は、五輪を機に北朝鮮代表団が訪韓することで合意し、これに向けた後続会談の日程などは今後、文書で協議することにした。
平昌五輪への参加問題とは別に、南側は今年2月の旧正月をきっかけに離散家族再会行事を開くための赤十字会談と、軍事境界線上の偶発的衝突を防止するための軍事当局会談の開催も提案した。昨年7月、文在寅(ムン・ジェイン)大統領がドイツのケルバー財団での演説で示し、統一部がすでに北側に提案した内容だ。北側は当初「引き続き議論しなければならない。そのような環境が作られる必要がある」という反応を示したが、最終的に軍事当局会談には合意した。
会談を控えた4日、韓米が電撃的に合意した合同軍事演習の延期について、北側がいかなる形で立場を明らかにするかも関心事だった。金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長が今月1日の新年の辞で、「民族の一大行事」と表現した平昌五輪の成功的開催を名分に、北朝鮮が五輪期間中に核・ミサイル発射実験の一時中断(モラトリアム)を宣言すれば、米朝対話に向けた暫定的な「双中断」(北朝鮮の核・ミサイル試験の中断と韓米連合演習の中断)状況が作られる可能性もあるからだ。チョ長官は「(演習の)延期と関連し、北側も評価するという立場を明らかにした。軍事演習関連問題について従来の立場を会談中に説明した」と伝えた。これに関する具体的な協議は、今後開催予定の軍事当局会談で行われるものとみられる。
今回の会談を通じて、南北が平昌五輪への北朝鮮代表団の派遣の実務協議に向けた体育会談と軍事当局会談に合意する一方、南北高官級会談と各分野の会談も開催することで合意(第3項)したことで、今後の南北当局会談が相次いで開かれ、対話の動力を維持できるようになった。また、様々な分野で接触と往来、交流と協力を活性化(第2項)することにしており、民間レベルを含めた南北交流も活気を帯びるものとみられる。
ただし、早急に進めるべき事案にもかかわらず、共同報道文に離散家族再会行事についての言及がないことには、残念さが残る。北朝鮮はこれまで中国浙江省寧波の柳京食堂で集団脱北した女性12人の送還を離散家族再会の前提に掲げてきた。チョ・ミョンギュン統一部長官は同日の会談を終えた後、記者団に「(離散家族問題の)必要性と緊急性について十分話し、北側もかなりの部分で私たちと同じ考えを持っているという意見交換が行われた」としたうえで、「北側なりの事情と立場があるため、様々な分野の接触・往来・交流協力(共同報道文第2項)に離散家族を想定しながらも、具体的な表現を盛り込むことはできなかった」と説明した。
非核化など平和定着に向けた対話も難航が予想される。南側は「朝鮮半島で相互緊張を高める行為を中断し、速やかに非核化など平和定着に向けた対話を再開することが必要だ」という立場を明らかにしたが、北側は会談中には特別な反応を示さなかった。しかし、リ委員長は終結会議で「南側のマスコミが今回の北南高官級会談で非核化問題に関する協議を進めているという、とんでもない世論を拡散している」と非難し、「このような問題は必ず良くない影響を及ぼす。今後、北南(関係)を改善され、やるべき事が多いのに、開始からミスリードするような声があがってしまうと、今日良い成果を出したにもかかわらず、水泡に帰すこともあり得るし、望ましくない形をもたらしかねない」として、遺憾を表明した。