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“韓国 両極化 激しくなるほどスウェーデン モデル 浮上”

登録:2009-09-03 12:30

原文入力:2009-09-02午後11:18:15
ストックホルム未来政策フォーラム 2009
社民主義勢力 政治的影響力少なく現実適用 難航

イ・スボム記者

←去る8月28日スウェーデン,ストックホルム都心のあるカンファレンスホールでスカンジナビア政策研究所が主催した‘ストックホルム未来政策フォーラム2009’で参加者が主題発表を傾聴している。

北ヨーロッパ社会民主主義の典型に挙げられる‘スウェーデン モデル’(the Swedish model)はあたかもトゲを持ったバラのように見える。抱きしめたい理想的模型のように映ると同時に、危険要素も抱いているようだからだ。

“経済成長と福祉という二匹のウサギを捕まえた国”,“資本主義経済の基本骨格を維持しながらも相当に高い水準の平等主義的所得分配を達成”した国、成長重視の経済政策と普遍的福祉指向社会政策の共存、解雇の自由と強力な社会安全網稼動….

他方では市場主義的経済政策の強化,学生の高校選択権と営利法人の学校設立権を許す自由主義的教育実験,競争力・効率性の減退といういわゆる‘福祉病’、中道・右派連立政権再登場….

スウェーデン モデルは私たちの社会の熱い関心対象の一つだ。米国発全世界金融危機以後、より一層しばしば広く知られるようになった‘ノルディック モデル’(the Nordic model),‘北欧モデル’のような用語と並んで。だがスウェーデン モデルの探求は簡単に正解を提示しない、私たち自らが解決方法を探すように刺激する苦難もまるで試験問題のようだ。

去る8月28日(現地時間)スウェーデンの首都、ストックホルムでスカンジナビア政策研究所(www.scips.se,所長 チェ・ヨンヒョク スェデルトン大学教授・政治学)が開いた‘ストックホルム未来政策フォーラム2009’は“スウェーデン モデルから何を学ぶか”という質問に対する解答を模索する討論の場だった。今年初めにスタートした研究所が初めて用意した今回のフォーラムには韓国の政治・経済・社会学者ら,スウェーデン学者・政党人,スウェーデン同胞など50人余りが参加し熱い討論を交わした。

スウェーデン モデル‘形成過程’に注目しよう

シン・チョンワン聖公会大教授(経済学)は「今まで韓国研究者らの関心は主にスウェーデン モデルの‘構造’と‘作動方式’に焦点を合わせてきた」とし「今後は‘スウェーデンの人々がどのようにしてこういうモデルを作ったのか’を見回すことが重要だ」と強調した。1996~97年スウェーデン ウプサルラ大学で、2007~08年ストックホルム大学に留まり研究した彼は、この日のフォーラムで‘2つの国の話:韓国におけるスウェーデン モデルに対する研究と論争’という主題で発表した。

シン教授はこの間、韓国のスウェーデン モデルに対する研究主題を3方向に要約した。△労使関係と労働市場(中央集中的組合主義的交渉方式,連帯賃金政策,賃労働者基金,積極的労働市場政策) △福祉国家(welfare state)と社会政策(1997年金融危機以後、金大中政府の社会政策プログラム大幅強化,盧武鉉政府の‘ビジョン2030’,福祉国家ソサエティーの‘躍動的福祉国家’論など) △スウェーデン大企業ヴァレンベリ家(Wallenberg)一族などの企業支配構造(財閥改革論争)がそれだ。こういう主題と関連してスウェーデンは韓国の進歩的学者・社会運動家たちに理想的モデルとして映ったが、これを現実化する政治勢力の不在のためにこれという影響力を発揮できずにきたと診断した。

シン教授はスウェーデンが1980年代以後、市場指向的体制に移行し韓国で保守的政治環境が造成されたことにより、スウェーデン モデルに対する関心が当分大きくなりそうにないとしながらも、韓国社会の両極化が深化し労使・政治葛藤が激化するほどスウェーデン モデルは注目を集めると展望した。

民主主義,市民教育で後押し

←‘ストックホルム未来政策フォーラム2009’を主催したストックホルム未来政策フォーラム事務総長イ・チュンホ博士(左側)とスカンジナビア政策研究所の所長チェ・ヨンヒョク スェデルトン大学教授.

スウェーデンの市民教育経験に注目してきた中央選挙管理委員会選挙研修院(院長 オ・ボンジン)も今回のフォーラムに関心を持った。コ・ソンギュ選挙研修院教授(情報科学)は‘韓国の民主市民教育と選挙’という主題発表で、韓国が1987年以後 制度的側面の民主化では大きな進展を果たしたが実質的側面では1987年以後 投票率が25%以上下がる‘投票率激減’という問題に直面したと診断した。2008年総選挙で投票すれば現金をもらえるインセンティブ制度まで導入したのに投票率は50%以下に下がったことが端的な例だというものだ。特に2007年の大統領選挙で政治無関心や無能感のためというより個人的なこと(忙しくて)のために棄権したという有権者が急増したことは政治参加と関心を高める民主市民教育が至急必要だということを示していると指摘した。

現在韓国の民主市民教育関連団体らはプログラム開発と講師確保などを個別的・散発的に推進しているが、スウェーデンの労働者教育協会(ABF・Arbetarnas Bildningsfrbund,www.abf.se)等のように‘財源は国家が支援するものの、独立的・中立的ハブ(hub)組織がプログラム進行と全国小規模団体の活動などを支援する方式’に注目しようと彼は提案した。スウェーデン労働者教育協会は1912年社会民主党の支援で労働者教育のためにスタートした後、まもなく市民教育・生涯教育などを引き受ける民主市民教育機関に変貌し、スウェーデン民主主義を後押しする礎になっているということだ。

ファン・アラン釜山大教授(政治学)は最近の世論調査に基づき、韓国政治世代の理念的指向を分析してみると「全般的に自由より秩序を重視し、自由よりは平等を重視する指向を確認することができた」として「政治的価値観などでは世代間格差がそれほど大きくない同質的な特性を示した」と明らかにした。彼は「特定政党支持を標ぼうしない独自的指向の有権者が増え政党に対する支持もゆるやかだという点に韓国の政党らは注目しなければならない」と指摘した。

チェ・ヨンヒョク教授は「スウェーデンでも若い層の政治に対する関心がだいぶ落ちて参加度が低い」として「しかし労働者教育協会のように政党から生まれたが、政党と関係なしに動く自律的な組織,メドゥボリアルスコルラン(Medborgarskolan,www.medborgarskolan.se)のような民間市民教育機関などが政治的補充を媒介し民主政治教育を引き受けているという点が韓国との大きい違いと見える」と話した。20年を超えてスウェーデンで政治学を研究してきたチェ教授は、多様な意見収斂と利害関係調整を通じて葛藤を解きほぐす装置としてのスウェーデンの特別委員会(Kommittvsendet)制度および国家特別調査報告書(SOU・Statens Offentlig Utredning)制度を最近韓国社会に紹介しいわゆる‘協議民主主義’(deliberative democracy)モデルに注目することを提案したことがある。(チェ・ヨンヒョク,社会葛藤予防の政治と立法府の役割).

スウェーデンの中学校で8年にわたり英語を教えてきたチョン・インア(49)教師は「スウェーデンの学校では注入式でなく幼い時から自ら考える思考力を育てることに努めている」として「民主的市民として自身の権利を考え論争(debate)できる能力の育成は、目にはよく見えなくてもスウェーデン民主主義に力を集める要因であるようだ」と話した。

両性平等,行く道遠し

スウェーデンは女性の政治・社会参加で世界最上位圏国という点で,女性界の関心対象に違いない。ムン・ギョンヒ昌原大教授(政治・国際関係学)とオ・ユソク聖公会大教授(社会学)は‘韓国の選挙で女性割当制’と関連した主題発表を通じて、韓国女性運動団体らが大統領候補や政党に女性候補割当制を圧迫することによりスウェーデンなどに比べれば短期間に成果を上げたが、2008年総選挙でも女性国会議員比率は13.7%(299人中39人)に留まっていると分析した。スウェーデンは2006年総選挙の結果、女性議員が47.3%(349人中165人)に達し、女性長官比率は45.5%(22人中10人)に達している。ムン教授は「性平等と関連してスウェーデン モデルは制度的に先んじており、色々な争点も提示している」として深層研究が必要だと話した。

女性政治勢力民主連帯代表を兼ねているオ教授は「韓国とさまざまな面で背景が異なるスウェーデンでも、女性の政治参加拡大を巡り論争が激烈だったという」として「女性が持った潜在力を社会的に引き出そうとする努力を政治的に行わなければならないだろう」と指摘した。30年以上にわたりスウェーデンで暮らしてきたハン・ギスク(一般内科専門医・民主平和統一諮問会議スウェーデン諮問委員)氏は「韓国女性も(スウェーデン女性のように)市民教育に積極的に参加し共に行動するならば大きく役に立つだろう」と話した。

シン・チョンワン教授は1950年代スウェーデン社会民主党の連帯賃金政策,すなわち‘する仕事が同じならば同じ賃金を与える(同一労働同一賃金)’政策で男女賃金格差が減り、女性労働者が恩恵を得たとし「韓国女性問題の核心に貧困女性問題があるという点を念頭に置くこと」を女性界に注文した。

教育・福祉などで具体化すること

この日のフォーラムではカール ピーター トルバルドゥソン スウェーデン労働者教育協会議長,イェニー サライ スウェーデン社会民主党前財務次官,カティヤ エクバル マグヌスン メドゥボリアルスコルラン国際担当官,パタイ アブイセイパン社会民主党青年委員会常任委員,エリック スェルロ自由国民党青年委員会常任委員などがスウェーデンの経験を紹介した。

スタン チュィボロビシュィチ教授(ポーランド アダムミキエビシュィチ大学・政治学)とガブリエル ヨンソン(ストックホルム大学・韓国学)教授,現地同胞イ・ヨンミ(ペステルビック電力会社営業担当常任理事)・チョ・ヘジョン(ストックホルム韓国学校校長)氏などが発表・討論に参加した。ホルゲル クスタプソン スウェーデン議会議員(スウェーデン-韓国議員親善連盟会長)は歓迎辞で、韓国とスウェーデンの掛け橋の役割を引き受けたストックホルム未来政策フォーラムとスカンジナビア政策研究所に感謝するという意向を明らかにした。

1986年に留学し、スウェーデンに留まってきたストックホルム未来政策フォーラム事務総長イ・チュンホ サーブ コンビテック(SAAB Combitech)システムエンジニア(電算学博士)は「このフォーラムは国民と地域間に生活の質が等しくバランスが取れた社会、葛藤を最小化する社会が何なのか、両国経験を土台に一緒に模索する場」として「来年には教育,福祉,環境などさらに具体的な主題についてフォーラムを開く計画」と話した。

ストックホルム/文イ・スボム記者kjlsb@hani.co.kr,写真スカンジナビア政策研究所ミン・ヒェア氏(ソウル市立大学生・現 スェデルトン大交換学生)提供

原文: https://www.hani.co.kr/arti/society/schooling/374476.html 訳J.S