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[時論]キム・ミンソンとオフラ・ウィンフリー

登録:2009-08-13 19:35

原文入力:2009-08-12午後08:16:45
←チョ・グク ソウル大法学専門大学院教授

米国産牛肉輸入・流通業社の㈱エイミートが映画俳優キム・ミンソン氏を相手に3億ウォンの損害賠償請求訴訟を提起した。昨年‘狂牛病事態’が進行される過程で、キム・ミンソン氏が自身のミニホームページに「狂牛病がうようよする牛を骨ごと輸入するとは、いっそ青酸カリを口に振り入れた方がむしろマシ」という文を載せ、自分たちに営業損失を及ぼしたという主張だ。引き続き、チョン・ヨオク ハンナラ党議員とニューライト団体‘自由主義進歩連合’はこの業者を擁護しキム氏が法的責任を負わなければなければならないとトーンを高めている。

法律家としてこのことを聞いた時、最初はあきれてしまった。‘狂牛病事態’の根本原因は国の検疫主権と国民の健康権を危険に晒した政府の拙速交渉であったし、今この瞬間も米国はオーストラリアのような‘軽微な危険国家’ではなく‘統制された危険国家’であり、日本とヨーロッパ各国は米国産牛肉に対し非常に厳格な態度を取っているためだ。

特に今回の訴訟は憲法上の権利である表現の自由を封じ込めようとする意図を持っているという点であきれたことに加え、危機感すら感じる。イ・ミョンバク大統領は‘狂牛病事態’当時、米国産牛肉は「質が良くて値段が安い肉」と話し米国産牛肉を宣伝した。筆者はこれに同意しないが、イ大統領がそのように言う表現の自由はあると考える。同じ脈絡でキム・ミンソン氏には米国産牛肉を青酸カリに比喩して猛非難する表現の自由がある。‘青酸カリ’という表現を問題にする人もいるが、これは彼女が自身の私的空間にぽつんと投げて置いた独白の一部に過ぎない。芸能人だからと自身のミニホームページに文を載せる時、精製され品格のある用語だけを使わなければならないということだろうか?

そして、キム・ミンソン氏のミニホームページの文と㈱エイミートの営業損失の間の因果関係がきわめて希薄だ。例えば、筆者を含めた相当数の市民が米国産牛肉を買って食べずにいるが、その原因がキム氏の文のためではない。‘狂牛病事態’前後に多くの学者と言論が狂牛病の危険を知らせる文を発表した。野党時期のハンナラ党や‘狂牛病事態’以前の保守言論も米国産牛肉の危険性を力説した。以上の人と団体が㈱エイミートの営業損失に責任を負わないように、キム氏も法的責任を負ってはいけない。

キム・ミンソン氏に対する訴訟と似かよったことが10余年前の米国で起きた。1996年4月16日、オフラ・ウィンフリー ショーに前職放牧労働者であり飼育場管理者であり‘良心を持って食べましょう’キャンペーン代表のハワード,ライモンが出演し、狂牛病の危険を告発した。これに対しウィンフリーは「ハンバーガーを食べたい気持ちがなくなった」と話した。するとテキサス肉牛協会は彼女と彼女のプログラム製作会社,ライモンを相手に1100万ドルの損害賠償訴訟を請求した。結果は肉牛協会の敗訴だったが、訴訟過程でウィンフリーは苦痛と費用を甘受しなければならなかった。

キム・ミンソン氏に訴訟を提起した会社やその法的代理人もオフラ・ウィンフリー事件をよく知っているものと思う。それでも訴訟を提起した理由は、先にキム氏に精神的苦痛と経済的負担を負わせ、それを見せつけ次に予想される多くの批判者たちに軽々しく動くなという警告を与えようとするものだ。政府が‘ろうそくデモ’参加者を刑罰権を使い処罰することに加え、今や企業までが立ち上がり民事訴訟で金銭的威嚇を与えようとしている。こういう訴訟は訴訟誤・乱用の典型的な事例だ。結論的に筆者は今回の訴訟提起に対し、裁判所は実体を検討するまでもなく棄却することが正解と考える。こういう訴訟は憲法上の基本権に対する侮辱であり社会的資源の浪費だ。

チョグク ソウル大法学専門大学院教授

原文入力: https://www.hani.co.kr/arti/SERIES/156/370946.html 訳J.S