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韓国政府の遠隔医療示範事業、選択権ない兵士・収監者を対象に拡大

登録:2015-01-26 19:58 修正:2015-01-27 07:00
朴槿恵大統領が22日、大統領府で「国民の幸福」をテーマに開かれた教育部・文化体育観光部・保健福祉部・雇用労働部・環境部・女性家族部の6省庁の業務報告で話している。退陣説が出ているキム・ギチュン秘書室長は前日に続きこの日も出席しなかった。大統領府写真記者団 //ハンギョレ新聞社

 政府が軍部隊の将兵や刑務所収監者などを対象に、遠隔医療の示範事業を拡大実施する。「自己決定権」を完全に行使できない(義務公務中の)軍人(訳注:韓国では徴兵制がしかれている)や収監者に対して安全性が確認されていない遠隔診療行為を事実上強制する措置なので、人権侵害及び医療倫理違反論議が予想される。 昨年9月に始まった政府の遠隔医療示範事業は、民間医療機関の参加が少なく、医療界内外で「半分の示範事業」と呼ばれている。

 保健福祉部は22日、大統領府で行なわれた朴槿恵大統領主宰の業務報告で、遠隔医療・遠隔協力診療の活性化などを主要内容とする2015年業務計画を発表した。 福祉部は特に遠隔医療示範事業を△軍部隊は現在の2カ所から8カ所に△矯正施設は現在の27カ所から下半期中に29カ所に拡大し、遠洋漁船5隻を新規事業対象に組み入れるなど、段階的に拡大すると明らかにした。

 ムン・ヒョンピョ福祉部長官は「遠隔医療は高血圧・糖尿などの慢性疾患の管理や心理治療などで有効性が認められている」として「その適用範囲も無限であり、療養機関や敬老堂、軍部隊、遠洋漁船などに示範事業を拡大していくということだ」と話した。

福祉部業務計画発表
「対象となる軍部隊・矯正施設を増やし
遠洋漁船にも段階的拡大」
民間部門での事業不振に対する苦肉の策
大韓医師協会など「人権侵害」として反発

 政府のこのような拡大方針の背景には、民間部門で行われる遠隔医療示範事業の不振がある。 1月現在、20カ所の民間医療機関で示範事業が進行中だが、その数があまりにも少なく、事業の“代表性”に問題があるという指摘が絶えない。 政府は当初、昨年9月に医療界の反発を無視して11の医療機関(保健所5カ所、地域医院6カ所)を中心に示範事業を強行した。 参加が低調なのを見て、昨年末に政府は遠隔医療行為による診療費基準の策定という“インセンティブ”を提供し、地域医院11カ所が追加で参加した(うち2カ所は中途放棄)。

2014年3月、大韓医師協会が遠隔医療の導入と医療営利化政策に反発し、集団休診に入った。 資料写真 //ハンギョレ新聞社

 政府が遠隔医療活性化案を出すと、大韓医師協会や保健医療団体連合などは一斉に人権侵害だとして反発した。 実際、薬事法の「臨床試験管理基準」によれば、軍人・収監者らは「脆弱な環境にある被験者」に分類されており、新しい医療技術や機器、医薬品の安全性・有効性検証のための研究においても特別に保護するよう規定されている。

 シン・ヒョンヨン医師協会広報理事は「韓国社会で最も脆弱な立場にある軍の将兵や収監者を対象に安全性と有効性が検証されていない遠隔医療を一方的に強行するというのは明白な人権侵害だ」と指摘した。 保健医療団体連合のウ・ソッキュン政策室長は「遠隔医療示範事業は、まだ安全性が確認されていないという点で、事実上臨床試験と変わりない」として「軍将兵を中心に遠隔医療を拡大適用するというのは、脆弱な環境にある被験者に対する臨床試験を厳格に制限している国際基準にも合わない」と批判した。

 福祉部関係者は「軍将兵などに実施する遠隔医療示範事業は、一般的な臨床試験とは違う」として「その結果も(民間部門の)示範事業の結果に含めない」と話した。

チェ・ソンジン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015/01/22 21:39

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/674858.html
訳A.K(1781字)

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