朴槿恵(パク・クネ)大統領が米国ニューヨーク訪問の最終日である24日(現地時間)午後6時、現地の主な外交安保研究機関代表との面談であらかじめ配布してあった冒頭発言を突然取り消した。 記者団に事前配布された資料には、中国と日本を刺激しかねない敏感な発言が含まれていて、これを意識したのではないかという指摘が出ている。 経緯がどうであろうと、数時間の差で予定された発言を取り消したこと自体が外交戦略の不在にともなう不手際だという批判が出ている。
大統領府はこの日、朴大統領とコリアソサエティー、アジアソサエティー、米国外交協会、米国外交政策協議会、米国外交政策協会など米国内で朝鮮半島政策に影響力が強いニューヨークの5研究機関代表らとの懇談会を約3時間後に控えて発言資料を提供した。 この間、大統領府は韓国とニューヨークの時差にともなう記者の締め切りへの便宜のため、懇談会資料だけでなく国連総会基調演説など主要行事4回の発言も事前に提供していた。
しかし、大統領府担当記者が事前配布資料に基づいて記事を送稿した後、ニューヨークのジョン・ケネディ国際空港に到着して出国手続きを踏んでいる時、大統領府側関係者はあらかじめ配布した懇談会資料の発言が全くなされなかったと知らせてきた。
結局、報道資料により“朴大統領発言”を1面主要記事として扱った夕刊新聞は“大誤報”を出すことになり、『連合ニュース』はあわてて記事全文を取り消す騒動が起きた。 連合ニュースは「行事の前に知らされた朴大統領の発言内容趣旨と実際に現場でなされた発言の内容が変わったという大統領府側の要請により全文取り消しする」と明らかにした。
資料配布時点から懇談会が開かれるまで僅か3時間の間に、大統領府でどのような判断の変化があったのかは正確に分かっていない。 ノ・グァンイル外交部スポークスマンは25日の定例ブリーフィングで「お門違いの質問」だとし、「それは大統領府側に質問すべきで、外交部スポークスマン次元でお答えする内容ではない」と話した。
しかし、大統領府の右往左往はすでに予告されたことだったという指摘が出ている。 大統領府が事前配布した懇談会資料を見れば、国連総会基調演説に続き“次の打席で”中国と日本の神経をさかなでかねない内容が入っていたためだ。
まず中国と関連しては、懇談会資料には「一角で韓国が中国に傾倒しているという見解があると承知しているが、これは韓米同盟の性格をよく理解できないための誤解だと考える」と明らかにされていた。 実際、米国の一部研究者の間には、韓日関係の悪化に関連して朴大統領が中国と密着するための戦略的布石と見る視角が存在する。 また、日本政府が“韓中密着説”を米国に流していることを牽制する目的の性格もあった。
しかし、逆説的に朴大統領のこのような説明は、韓中関係が歴代最高だという雰囲気を盛り上げてきた中国の立場からは不快に思われかねない発言だ。 何よりも「我々は中国の浮上が国際規範に則り地域の平和と安定に寄与する方向で行われなければならないという立場に立って対中外交を繰り広げている」という発言に対して、韓国に配慮してきたと考えている中国は“背信”を感じることもありうる。 米国はこれまで中国が自分たちの作った国際規範に則り行動すべきだとして中国を圧迫してきたが、朴大統領が同じ論理を持ち出したためだ。
また、朴大統領はわずか約5時間前の国連基調演説でも脱北者の人権問題を取り上げ、中国を狙った発言をした。 脱北者が自由意志により目的地を選択できるように「関連国が必要な支援をしなければならない」という内容だった。 朴槿恵政権になって脱北者問題の処理に対して韓国の立場を強く配慮してきた中国の機嫌を損ねかねない内容だ。
朴大統領が予定された中国関連の発言を取り消したのは、こうした相次ぐ中国を刺激する発言が、今後の韓中関係の障害として作用しかねないという憂慮があったものと見られる。
事前懇談会資料には中国だけでなく日本軍慰安婦問題も国連総会基調演説に続き直接的に含まれていた。朴大統領は「過去問題の核心には日本軍慰安婦被害者問題があり、日本の政治指導者は慰安婦被害者が生きているあいだに、その方の名誉回復のための前向きな措置を取らなければならない」と繰り返し明らかにした。 国連総会の基調演説で“戦時女性に対する性暴力”に言及し、慰安婦問題を争点化したのと同じ脈絡だ。
国連基調演説は“戦時女性の人権”という表現の代わりに“性暴力”という具体的な行為に言及した点で、予想外に強度が高かったという評があった。 基調演説に続き懇談会でまで慰安婦問題を直接的に挙論すれば、韓日首脳会談開催など韓日関係の回復気流に否定的な影響を及ぼすことを憂慮して、懇談会では実際には発言しなかったものと見られる。
これに伴い、実際に大統領府が修正配布した報道資料には、朴大統領が「北東アジア情勢の流動性が次第に高まっている」とし「北核問題などの挑戦的な課題に対して創意のある対応と多元的な解決方案を見つけなければならない」と発言したことになっている。大統領府の説明が事実ならば、あっちこっちの表情を伺い“より負担のない”北核だけを挙論することにしてしまったことになる。
戦略不在にともなう不手際は、すでに今年7月初めの習近平中国主席の訪韓時にも如実に現われていた。当時、大統領府は中国との共同声明などで日本批判の強度を下げ、その翌日の朴大統領と習主席の昼食で交わした高強度対日批判内容をマスコミに公開することもあった。
韓国語原文入力:2014/09/25 17:51
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/656836.html 訳J.S(2900字)