ところが、アン・テヒ最高裁判事の後任で“検察の持分”となる最高裁判事候補だったキム・ビョンファ前地検長は、人事聴聞会の過程で貯蓄銀行不正ブローカーと交流するなど不適切な行動をした事実が明らかになり落馬した。 ヤン最高裁長官は“画一化”の指摘を勘案したためか、キム・ソヨン大田(テジョン)高裁部長判事(49・19期)を後任候補として任命推薦した。 当時議論された先輩女性候補者を抜いて、研修院の期数がずっと低いキム部長判事が抜擢されるや裁判所内部では破格という評価が多かった。
だが、キム・ソヨン最高裁判事の歩みも同じく“期待”に達し得なかった。 参加した判決31件のうち、反対・別個・補充意見を出したケースは6回(17.9%)で平均値に達しない。 ヤン最高裁長官としては“若い女性裁判官”というカードを通じて改革的人事というイメージを植えつけ、実際には“多数派”最高裁判事を1人追加した形になった。
彼女とともに任命された人々もまた類似している。 コ・ヨンハン最高裁判事は参加判決38件のうち、反対・別個・補充意見を5回(13.2%)、キム・チャンソク最高裁判事は参加判決38件のうち反対・別個・補充意見を8回(21.1%)出した。 その上、キム・シン最高裁判事が参加判決38件で10回(26.3%)の反対・別個・補充意見を出して唯一人、平均以上を記録した。
これらの歩みは前任者らと比較してみればその差が歴然としている。 パク・イルファン前最高裁判事は在任期間中に参加した判決69件のうち、反対・別個・補充意見を出したケースは13回(18.8%)に終わったが、キム・ヌンファン前最高裁判事は106件のうち35件(33.3%)、チョン・スアン前最高裁判事は107件中36件(33.6%)、アン・テヒ前最高裁判事は106件中39件(36.8%)で多数意見とは異なる意見を出した。
結局、ヤン最高裁長官の就任後、二度の最高裁判事交替を通じて少数意見を代弁し多様な意見を出した最高裁判事の席は“大勢追従型”の人々に代替された。“ソウル大出身、50代、男性、高位裁判官”という最高裁判事の一般的“スペック”も一層強化された。 社会が発展して多くの分野で融合・多様化が深まっているが、唯一司法府では反対の傾向が強まり、退行が進んでいるわけだ。
なぜこういう結果が出たのだろうか?
ある前職最高裁判事は「女性や非ソウル大など、外形的には一部多様化を追求しているように見られるが、実際には最高裁長官が自身の指向に合う女性、非ソウル大、非法官出身を選択したと見れば良い」と話した。 任命権者である大統領の“影響力”も無視し難い。 イ・ヨンフン前最高裁長官時期にも盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府時に任命されたグループ(キム・ファンシク、パク・シファン、キム・ジヒョン、パク・イルファン、キム・ヌンファン、チョン・スアン、アン・テヒ)が、李明博(イ・ミョンバク)政府時に任命された人々(チャ・ハンソン、ヤン・チャンス、シン・ヨンチョル、ミン・イルヨン、イ・インボク、イ・サンフン、パク・ビョンデ)が改革的・進歩的で反対・別個・補充意見を出す比率も高かった。 今の状況は保守政権とヤン最高裁長官の“協業”の下に単調な保守一色化の道を歩んでいるわけだ。
今年6月、法曹界では『改過遷善』という法廷ドラマが大きな話題になった。 ドラマでの主人公の若い弁護士と人権弁護士である父の対話の一コマ。
「今の最高裁判事13人は誰もみな同じです。社会的波紋が大きな事件では目立たずに保守的な判決を下す裁判官、それが今の最高裁判事の構成です」
「参与政府(盧武鉉政権)の時でも自分の意見を出す人は何人かいた。 10年前の裁判所はこうではなかった」
ドラマはフィクションだが対話の内容はノンフィクションだった。