会社員チョン某(35)氏は友達を待ちながらタバコを吸っていた。昨年10月、ソウル銅雀区(トンジャクク)舎堂(サダン)駅の近くだった。青い制服に黄色いチョッキを着た警官が近づいてきて身分証の提示を要求した。禁煙区域の取り締まりのためだと思ったチョン氏は身分証明書を渡した。「手配中ならば一緒に行っていただかなくてはなりません。」警官は“携帯用身元照会器”でチョンさんの住民登録番号を照会した。それからすぐに敬礼して立ち去った。 チョン氏は警官が立ち去ってから初めて“便法的不審尋問”をやられたことに気付いた。 彼は「ボイス フィッシングにでも引っかかったような気分だった」と語った。
朴槿恵(パク・クネ)政権になって警察の不審尋問が以前の政権に比べて2倍以上に増えたことが分かった。7日<ハンギョレ>がソウル地方警察庁に情報公開請求をして受取った資料を見ると、昨年、ソウル地域の警察が“携帯用身元照会器”を利用して身元・車両照会した件数は444万件余りだった。これは2012年の202万件余、2011年の259万件余に比べて約2倍だ。このうち市民を対象に直接照会した身元照会は、2011年の88万件余、2012年の65万件余から昨年は145万件余に増えた。 車両照会も2011年の170万件余、2012年の137万件余から昨年は299万件に急増した。
軽犯罪処罰件数も急増する趨勢にある。朴槿恵政府発足後に施行した改正軽犯罪処罰法により、昨年の軽犯罪取締り件数は9万件を超えた。2012年の5万8000件に比べて3万件以上増えている。昨年取り立てた罰金も23億2000万ウォンで、2012年の10億1000万ウォンに比べて倍以上に跳ね上がった。
警察は、いわゆる“4大悪の根絶”のために取り締まりを行ない、不審尋問が増えたと説明した。ソウル警察庁関係者は「昨年から性的暴力、学校暴力など4大悪の根絶が強調され、それに伴い、携帯用身元照会器の支給が増え、関連部署で身元照会器の使用が増加した」と述べた。
専門家たちは4大悪の根絶を掲げた政権に歩調を合わせて実績を上げるために、日常的に無理な査察をしていると指摘した。<民主社会のための弁護士会>のパク・チュミン弁護士は「歴代政権でも初期に実績を示すために、指名手配者等を捕まえようと随分試みてきた。朴槿恵大統領が4大悪の清算を掲げながら安全を強調するので、警察が検挙率を高めようとしたこととも関係がある」と述べた。
李明博(イ・ミョンバク)政府の時から富裕層減税で税収が足りなくなるや、これを埋めるためにやっているのではないかという指摘も出ている。<人権連帯>のオ・チャンイク事務局長は「犯罪が大幅に増加したわけでもなく、治安状況はむしろ安定的に維持されている。 庶民の懐をはたいて不足した税収を補おうとしているんじゃないかという気もする」と述べた。
警察庁が発表した「2012年犯罪統計」を見ると、2012年の殺人・強盗・性犯罪・窃盗・暴力など5大犯罪を含めた全体の犯罪発生件数は179万件余りとなっている。2010年と2011年の犯罪発生総件数は、それぞれ178万件余と175万件余だった。
ソ・ヨンジ記者 yj@hani.co.kr