スイスで全ての成人に基本所得を保障する方案を盛り込んだ国民発議法案が議会に提出され、国民投票に回されることになった。 基本所得は就職有無や所得水準などに関係なく全ての国民に最低限の生活が可能な水準の所得を国家が支給する制度だ。
<ロイター>通信は4日 「昨年4月から署名作業を進めてきたスイス市民社会が、12万人以上の署名を集めた基本所得導入のための国民発議案をスイス連邦議会に提出した」として「政府が成人であるスイス国民全員に一ヶ月2500スイスフラン(約2800ドル・約297万ウォン)の基本所得を支給することが法案の骨組み」と報道した。 AP通信などは「2011年を基準として米国労働者の月平均賃金は税引き前で3769ドル、食品・サービス業労働者の月平均賃金は税引き前1785ドルにとどまっている」と伝えた。
直接民主主義を採択しているスイスでは、最初の発議から18ヶ月以内に10万人以上の署名を集め国民が直接法案を発議できる。 発議された法案に対して議会は代替立法案を用意することもできるが、ひとまず合法的に発議された法案に対しては遅くとも2年以内に国民投票を行わなければならない。 この日、基本所得法発議を推進してきた市民団体会員らはベルンの連邦議会議事堂の前庭に約800万人のスイスの人口を象徴する5ラペン コイン800万ヶを積み上げ発議案の通過を祝った。
2008年金融危機以後、全世界的に所得不平等が深化し、ヨーロッパ各国を中心に基本所得導入に関する議論が活発だったが、実際に立法段階にまで進んだのはスイスが史上初だ。 しかも今回発議された法案は、生計可能な水準の金額を基本所得として支給するよう定め、最低賃金の5%余りの水準の基本所得制度を制限的に導入しているブラジル・キューバなど一部国家の‘実験’とは次元が違う。
これに先立ってスイスは去る3月に国民投票を通じて、企業経営者の賞与金を株主の直接投票を通じて決めるようにする内容を骨格とする経営者賃金制限法を導入した。 来る11月24日には企業最高経営者の月給が該当企業内の最低賃金労働者の年俸水準を越えられないようにするいわゆる‘1対12法案’に対する国民投票が予定されている。 基本所得導入運動は所得不平等を減らすためのスイス式努力の決定版であるわけだ。
このようなスイスの動きはヨーロッパ全域で波紋を起こすものと見られる。 すでにヨーロッパ次元で基本所得制度を導入することをヨーロッパ連合(EU)執行委員会に促すのに必要な100万人署名運動が19ヶ国で起きているためだ。 インターネット代案言論<コモンドリームス>は5日‘基本所得一般化運動’創立者である市民運動家エナ シュミットの話を引用して「深刻化しつつある所得不平等に対する大衆的憤怒を直視する時点になった」として「いくら嫌でも今は政界で基本所得導入に対して真剣な討論がなされなければならない」と伝えた。
チョン・インファン記者 inhwan@hani.co.kr