25日午前2時. 永く静寂に陥っていた日本、福島県北部海岸の松川浦港に活気が戻って来た。 漁民たちはこの日未明から船に火を灯し、操業に必要な漁具を整える等、出漁準備に忙しかった。 福島第1原発で発生した汚染水問題でしばらく中断されていた試験操業が再開される日だ。
こちらの漁民ミハル トシヒロ(54)も自身の19t級底引き網漁船で海に出て行った。 久しぶりの操業に浮き立つように 「漁夫はやはり魚を釣らなければだめだ」 と話した。 この日、ミハルが属した相馬二葉漁業組合で示範操業に参加した船は計21隻だったと<朝日新聞>が伝えた。
漁民を乗せた船は午前5時頃、海岸から50km程離れた操業区域に到着した。 急いでイカリをおろして二時間ぶりに引き上げた網には福島近海の豊かさを示すように各種の魚がいっぱいに入っていた。 しかし、この日獲った魚をすべて売ることができるわけではない。 日本政府が今までに放射能が検出されたことのないタコ・イカ・毛ガニなど16種の魚だけを試験操業対象にしているせいだ。 16種の魚に属していない他の魚は再び海に戻さなければならない。
ミハルの弟ユキヒデ(50)と長男ユウタ(27)が網の脇について選別作業を始めた。 ミハルは「地震前はカレイが高く売れたが、今は獲ることはできない。 獲った魚を再び海に投げ入れる漁夫の気持ちが分かるか」と尋ねた。 ミハルはこの日、2.5tの魚を獲ったが実際に出荷可能になるのは10分の1の250㎏だけだった。
漁民がタコは獲ってもよいが、カレイは獲れないのは現在、福島近海が処した特殊な状況のためだ。 <東京新聞>はこの日、専門家たちの話を引用し「海水は原発事故前の状態に少しずつ戻ってきているが、放射能物質が沈んだ海底の状況は別だ」と指摘した。 そのため主に海底に棲息するカレイ類、岩礁地域に住むメバル、小さな魚を食べ体内に放射能物質が蓄積される可能性が高いスズキなどの出荷は厳格に禁止されている。
韓国でも日本産水産物に対する憂慮のために鷺梁津(ノリャンジン)水産市場の販売高が急減するなど、多くの人々が困難を経験しているが、その衝撃を直接受けなければならない日本漁民の苦痛はさらに深刻だ。
福島県で3代にわたって漁夫として生きてきたミハルは、息子にも家業を継がせようと何年か前に1億5000円(16億2000万ウォン)をかけて新しく船を作った。 しかししばらくして原子力発電所事故が起こってまともに操業できない時間が2年半も続いている。 汚染強度が激しくて試験操業の意欲も出せない地域もある。 日本政府の資料を見れば、福島産の魚の中で放射性物質の食品基準値(1㎏当たり100ベクレル)を越えるのは約3%程度(日本平均0.4%)と把握されている。
ミハルは「消費者の不安はよく分かる。 放射能が少しでも検出されれば私も孫に魚を食べさせないだろう」 と話した。 <東京新聞>は現在の放射能検査対象がセシウムに限定されており、ストロンチウムなどに対する検査がなされないでいる事実を取り上て、消費者の信頼を回復するには他の物質に調査範囲を拡大しなければならないと指摘した。
東京/キル・ユンヒョン記者 charisma@hani.co.kr