原文入力:2009-04-13午前08:38:19
‘大転換の時代’ 2部 大転換を読むキーワード
第1回 基本所得制度
チェ・ウソン記者
‘危機’ の時代は新しいパラダイムの芽が育つ舞台だ。経済危機の暗い影が全世界をさらっている中で各国ではこれまでの資本主義発展過程の限界と問題点を根本的に顧み、新しい解決方法を探そうとする動きもまた強い。資本主義体制を特徴づける分配原理に対する悩みから市場と国家の新しい位置づけに至るまで、変化の動きは随所に現れている。<ハンギョレ>は ‘大転換の時代’ 第1部企画で去る1月初めから約一月間 ‘資本主義はどこへ行くのか’ という問いの下、世界著名学者との対談を連載したのに続き、今や世界各国で広がっている新しい実験現場を訪ねて行く第2部連載を始める。現在まで資本主義的発展モデルの基本骨組みを成し遂げた7ヶのキーワードを通じて大転換の芽はどこから探せるかを読者と共に考えてみる予定だ。その最初の試みとして、雇用と所得の関係を根本的に問い直し、社会構成員であれば誰にでも一定水準以上の所得を享受する権利を与えようという基本所得制度の可能性を探ってみる。
←去る9日(現地時間)米国,ニューヨーク市内の路上で仕事を求める人々が長い行列を作りしゃがみこんでいる。この日マイケル・ブルームバーグ ニューヨーク市長は、経済状況がより一層悪化し財政収入が不足し今後7千人が追加で働き口を失う恐れがあると話した。 ニューヨーク/聯合ニュース“最近では公営放送の討論プログラムの主題として話題になるほどだ。”
ドイツ,ケルンの地域団体で働いているというヨハンネス ポナド(38)には基本所得というのはもはや耳新しい単語ではない。彼は「働き口を守るか分けるかを巡る攻防とは関係なく、何か全く新しいパラダイムの芽が明らかに育っている」として、ドイツ社会を徐々に熱くしている激烈な論争の雰囲気を伝えた。去る2月17日幕を下ろした ‘基本所得導入のためのオンライン請願運動’ は最低基準値(5万人)を軽く越える成果を上げた。ドイツ議会ではまもなく基本所得制度導入に関する公式聴聞会が開かれる予定だ。
お隣フランスの事情も大きくは変わらない。今年初め、ニコラ・サルコジ大統領は来る6月から既存の ‘極貧層生活支援金’ (RMI)を ‘積極的連帯手当て’ (RSA)に切り替えるという方針を明らかにした。保守指向のフランス政府が経済危機に対抗するためにそれなりの解決法として出した多少破格的なカードだ。これまでの生活支援金は低所得者の生計を支援するという名分の下に ‘勤労意欲’ を育てることに重きが置かれていた。だが今や ‘支援’ から ‘連帯’ 側に一歩さらに移ることになる。
当初、基本所得は1980年代以後の西欧社会で過度な費用負担に苦しんだ福祉制度を手術する解決法の一つとして用心深く議論され始めた。ヨルラン ブレッソン フランス生存所得振興協会(AIRE)代表は「失業人口が大きく増え高齢化が進み、既存の福祉制度が途方もない財政負担となり、急いで解決方法を求める必要性が出てきた」という話でその背景を説明した。既存の複雑な福祉体系を大幅に単純化し、不必要な管理費用をなくす代わりにその恩恵を基本所得形態に戻そうという判断からだ。全員に公平に一定額のお金を与えるが、それですべての責任を政府の手から個人に押し付けようとする保守・右派の社会改革プロジェクトだと一括して受け入れられたのはこういう背景からだ。
生産-雇用-所得 まちまち
資本主義の根元まで揺るがす
分配構造 新しい枠組み 構築切実
だが最近ヨーロッパで基本所得制度が新しく論争の中心に登場したのは、資本主義危機の突破口を新しいパラダイムで求めてみようという声が大きくなってからだ。ベルギーに本部を置く各国基本所得関連団体の連帯機構 ‘基本所得地球ネットワーク’(BIEN)のフェリペ パン パレイス共同代表は「人生の物質的条件を充足するために供給(生産)を増やすのが今まで資本主義の絶対課題だったとすれば、今からは安定した需要を作り出すことがカギ」として「消費の善循環構造をシステム的に保障するためには、基本所得制度がはるかに効果が大きい」と話した。
基本所得首唱者たちは何より、生産-雇用-所得(分配)を連結する資本主義の根本秩序が崩れていることに注目する。パリ1大学産業社会研究所のカルロ ペルチェルロネ博士は「生産技術の発展により就職誘発計数がますます低くなり、今後は景気と関係なく失業者が継続して増えるほかはない状況」としつつ「知識基盤資本主義段階では富が企業という空間内外で、すなわち狭い意味では生産過程の内外だけで創出されていて、法的な雇用関係とは分離した新しい生産-雇用-分配体制の芽を探さなければならないだろう」と話した。彼は引き続き「基本所得こそ一定水準の所得を構成員各自が享受する一つの権利と認定するという点で、女性運動や失業者運動,青年失業者運動など多様な形態の社会運動と連帯の可能性を高めることができる出発点」と付け加えた。
これと関連して、関心は自然にブラジルに集まっている。ブラジルは月間所得137レアル(約8万ウォン)以下の極貧層に教育費と食料品費などを支援する生計支援プログラムである ‘ボウサ・ファミリア’ を来年から全国民を対象にした ‘市民基本所得’ 制度に段階的に拡大することを立法予告した状態だ。すでに安定した福祉制度網が揃っている西欧以外の地域で基本所得制度が本格的な施行を前にしているのだ。
“誰でも人生の権利を享受できるように公平に手当てを分けよう”
西欧 基本所得制 論議活発
もちろん西欧社会でも反対の声が相変らず存在する。特に既存労働運動陣営が疑いのまなざしを収めない。ドイツ公共サービス労組の政策担当ノベルトゥ ロイター博士は「基本所得制度は既存の福祉制度がおさめた成果自体を解体しようとする右派のトリック」に過ぎないとし「必要な人に恩恵が集中する社会保障制度を拡充することがより一層重要だ」と明らかに一線を画した。基本所得制度に賛成する代表的な企業家であるクェツ ペルノ テエム会長も「たとえすべての人々に一定の手当てを与えるといっても、企業としては各種社会費用に対する負担がなくなりむしろ得になる」として、税金負担に対する悩みが出発点であったことを隠さなかった。
それでも既存の左・右構図に揺らされず基本所得が持つ肯定的側面を生かさなければならないという声が力を増している。ドイツ左派党の政策補佐官 ロナルド プルラシュィケは「基本所得こそ労働力の部分的な脱商品化をもたらし、労働者陣営の交渉力を高めることができる現実的武器」として「社会構成員のすべてに最低限の生活安全弁を作るという点に照らしてみれば、現在の危機局面で広がっているワークシェアリング実験を真の成功に導く強力な牽引車の役割をするだろう」と強調した。
カールスルーエ・ベルリン(ドイツ)・ルベンヌブ(ベルギー)・パリ(フランス)/チェ・ウソン記者morgen@hani.co.kr
原文: https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/349463.html 訳J.S