原文入力:2012/09/04 14:19(2953字)
←アップルの外部諮問弁護士であるジェイスン パトレット(中)が24日(現地時間)三星(サムスン)電子とアップル間の特許訴訟の陪審員団評決が下された後、米国、カリフォルニア、サンノゼ地方法院の建物を出ている。 APニューシス
アップルが侵害したと攻撃した‘標準特許’はFRAND宣言を通じて誰もが使用
韓国法廷が三星(サムスン)の手を上げて‘FRAND不良国家’汚名
三星とアップルの特許紛争が論議の的だ。 米国裁判所が三星に1兆ウォンを超える巨額の賠償を払わせる陪審員評決が出てきて、陪審員制度自体に対する批判も出ている。 専門性のない陪審員審理で特許侵害有無と損害賠償額を定めるのが法理的かということだ。 特許制度が革新に寄与するよりは独占を助長するために悪用されているという更に根本的な問題提起もある。 ところで特許が革新に寄与する制度であるかは疑問だ。 歴史的にも特許を通じて技術革新が成り立った事例は珍しい。 技術水準が低く、従って革新の必要性が大きい国家が特許制度を強化した例は更に探しがたい。 すでに革新を達成した者が特許を強調しているだけだ。
特許を通じて技術革新が進んだ事例は珍しい
我が国で特許制度が初めて施行されたのも1908年に米国と日本が結んだ条約のためだ。 この条約は当時朝鮮の技術革新のために締結されたものでなく、すでに特許権を有していた日本人と米国人の既得権が朝鮮でも保障されるようにしようとするものだった。 19世紀末と20世紀始め、ヨーロッパと米国で特許が法的制度として定着することになったのも産業革命を経て規模が大きくなった製造業が特許を戦略的に活用してからだ。 代表的な事例が発明王と呼ばれるトーマス・エジソンだ。 エジソンは映画製作技術に関して特許権を有していたが、映画特許会社を設立して特許技術を利用しようとする人々に巨額のロイヤリティーを要求した。 これに耐えられなかった映画創作者と監督はエジソンの影響圏が及び難いほど遠く離れたカリフォルニアに移住した。 そこで彼らはエジソンの特許技術を自由に使う‘海賊行為’をしたし、それを通じて今日のハリウッド映画界が誕生できた。
このように技術独占を保障する特許権は競争者を追放できる強力な武器になるので、競争会社間の特許紛争は制度自体に既に予定されていたことだ。 しかも特許侵害は模倣をした場合にだけ起きるのではなく、結果が同じでありさえすれば発生する。 ところで紛争の様相は分野ごとに違う。 通常、情報技術(IT)分野では特許訴訟が当事者間の合意で終結するケースが多い。 勝敗が分かれる時まで争う化学や医薬品分野とは違う。 主な理由はIT分野ではある製品を特許権のいくつかでは独占できないためだ。 医薬品は1,2ヶの特許で関連市場を独占できるが、IT分野ではそれが不可能だ。
スマートフォンを見ても、数百ヶの部品とあらゆる通信技術が使われるが、誰がどんな特許を有しているのか分からないほどだ。 無数の特許権が薮のように絡まっていて、それを一人では全て取り除いて出ることはできない。 そのためいっそ特許を無視する方がより経済的という論文があるほどだ。 自分が競争会社を特許侵害だと主張すれば、競争会社も特許という武器で自分を攻撃する。 誰もが完勝をおさめることは難しいので、中間で合意により終結するわけだ。 このような点でアップル-三星紛争は特異だ。
標準特許は‘誰もが使えるよう’強制
最後まで見届けるというアップルの戦略のためと見えるが、そのためにアップルは三星が自身のデザインを模倣したという主張をする反面、三星はアップルが自身の通信技術特許を侵害したという攻勢をかけている。 ここで問題は三星が主張する通信技術特許が標準特許だという点だ。 今回問題になった三星特許を標準化したヨーロッパ情報通信標準機構(ETSI)の知的財産権特別委員会委員長マインホールドの言葉を借りれば、特許と標準は指向するところがそれぞれ違う。 特許は私的な独占使用を意図する反面、標準は公衆の集団的使用を目標にする。 それで特許技術が標準として採択される場合、特別な規則を設けて両者の調和を試みる。
ある特許が標準技術として採択されれば、特許権者をして当該特許を誰もが使えるよう強制する規則がそれだ。 標準技術とは関連製品を作る者を従属(lock-in)させて他の技術に転換できないよう防ぐので、技術を最初から使用さえ出来ないようにすれば標準としての意味もなく、独占の弊害があまりに大きいためだ。 それで標準を定める機構はある技術を標準として採択する前に特許権者に関連特許を公開させ第三者に公正で合理的で非差別的に特許技術を使えるようにするという宣言(FRAND(Fair, Reasonable and Non-Discrimination)宣言)をさせる。 その代わりに特許権者は使用者からロイヤリティーを受け取ることができる。 標準になって誰もが使うのでロイヤリティー収入が侮れない。
特許権者はひとまずFRAND宣言をし終えれば、特許侵害訴訟で制約を受ける。 ロイヤリティーを払わなかった侵害者を相手に賠償請求することは可能だが、技術の使用自体を禁止することはできない。 アップルと三星の特許訴訟でもこれが問題であった。 三星がアップルを攻撃した特許は全て標準特許であり、これに対して三星はFRAND宣言をした。 それでも三星はアップルの製品に対して販売禁止を請求したのだ。 標準特許なのでアップルが特許侵害を避ける方法がないという判断のためと見えるが、標準と特許の調和を試みようとする原則に反する過度な主張だ。 そのためか米国裁判所はFRAND宣言をした三星は特許侵害を主張できないというアップルの抗弁を受け入れた。 ところで韓国裁判所はアップルの抗弁を棄却し、三星の標準特許2件をアップルが侵害したと判断した。 これに対して、IT分野の特許紛争を専門的に分析してきた特許専門ブロガー フロリアン ミュラーは韓国が‘FRAND不良国家’になったと批判し、両国の通商摩擦まで憂慮している。 誰もが使えるようにするというFRAND宣言をした三星がアップルを相手にどうして標準の使用自体を禁止できるというのか?
賠償で十分に解決できるにも関わらず
韓国裁判所は特許制度の本質が技術独占にあるという点に過度に忠実で、こういう判断を下した。 特許権者がFRAND宣言をしたとしても標準技術を使うには特許権者に許諾を求め、ロイヤリティー交渉を誠実にしなければならないということだ。 このようにしなければ悪意的使用者や潜在的使用者を特許権者より強く保護する結果になるという判断だが、賠償問題として十分解決できる標準特許問題に誤った定規を突きつけた。
ナム・ヒソプ弁理士
原文: https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/550076.html 訳J.S