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新古里(シンコリ)原発 増やさなければ全て解決

登録:2012-08-28 08:00

原文入力:2012/08/26 22:40(3858字)

←蔚山(ウルサン)蔚州郡(ウルチュグン)西生面(ソセンミョン)の新古里(シンゴリ)原子力発電所。昨年と今年新古里(シンゴリ)原発1,2号機が商業運転を開始して以来、6基の原発が追加建設・推進されている。 新古里(シンゴリ)原発の電力は密陽(ミリャン)送電塔を通じて他の地域に抜けていく。 蔚州(ウルチュ)/イ・ジョングン記者root2@hani.co.kr

【土曜版】カバーストーリー 送電塔との戦争、密陽(ミリャン)の人々

密陽(ミリャン)の戦争、原因と代案は

ソウルに電力をさらに早く送るため
地方に建てられる765kVの送電線
新古里原発5~8号機増設しなければ
密陽送電塔は必要なくなる
ソウル市、電力自給率3%台
節電と新再生エネルギー開発で
“原発1基減らす”実験に乗り出す

 電気にも道がある。 地方道、国道、高速道路がある。 154キロボルト(kV)送電線路が地方道ならば、345kVは国道、765kVは高速道路だ。 電気は送電線路に乗って移動する。 大概は地方から出発して首都圏など大都市に到着する。

 問題はここから発生する。 電力を生産する所は地方だが使う所はソウルだ。 電力を生産して輸送する過程で生じる環境被害と潜在的危険は地方が抱え込む。

 環境団体である≪エネルギー正義行動≫が集計した2011年「地方自治体別電力自給率」を見れば、中央と地方の“電力不平等”がそっくりあらわれる。 例えばソウルは1年に4万6903ギガワット時(GWh)の電力を使うが、生産する量は1384GWhに留まる。 電力自給率は3%、すなわち97%を地方から持ってくる。 反面、霊光(ヨングァン)原発のある全南(チョンナム)は需要量2万7136GWhの2倍を越える6万9480GWhを生産する。 電力自給率は256%で自ら使う量より多くの量を他の市・道に送りだす。 蔚珍(ウルチン)原発のある慶北(キョンブク)は需要量4万4167GWhの1.6倍を生産する。

154kV・345kV・765kVの違いをご存知ですか

 送電塔は農耕地と林野にそびえ立って中央と地方を連結する役割をする。 「新古里~北慶南765kV新送電線路建設事業」により慶南(キョンナム)密陽市を横切ってニョキニョキ立つことになる送電塔も電気の高速道路、すなわち送電線路をつなぐ大規模鉄塔だ。 アパート30~40階建てマンション(鉄塔の高さ80~145m)の威圧的な施設が180kmにわたって立ち並ぶのだ。 送電塔設置反対闘争を行なっている密陽(ミリャン)のおじいさんおばあさん達が送電塔の下に立てば小人のように見える。

 この送電線路は蔚山市蔚州郡の新古里(シンゴリ)原発団地で生産した電力を他の地域に送るための施設だ。 原発からの電力量が多いので一度に乗せて運ぶ高圧送電線が必要だ。 765kV送電線路は345kVより電力を四倍さらに多く送ることができる。

 現在新古里(シンゴリ)の1,2号機で生産された電力は隣接した釜山市(プサンシ)機張郡(キジャングン)のコリ原発1~4号機に送られた後、新蔚山、新梁山、蔚州(ウルチュ)の345kV送電線路を通じて外に運ばれる。 新古里3号機は来年、新古里(シンゴリ)4号機が2014年に竣工する。それに加えて今政府になって“原発ルネサンス”政策が推進される中で、新古里(シンゴリ)5~8号機と原発4基の建設が本格的に推進されている。 コリ原発4基とひとまとめにすれば、原発12基が集まっている世界最大の原発密集地域になる。 765kVの新古里~北慶南送電線路が必要とならざるをえない。 既存の345kV送電線路の負担を減らしながらもはるかに大量の電力を嶺南(ヨンナム)および首都圏に送ることができる。 国会知識経済委所属キム・ジェナム議員(統合進歩党)は次のように言う。

 「実際、新古里原発の5~8号機が増設されなければ密陽送電塔は必要ありません。 既存の345kV送電線でも対応可能です。 密陽送電塔は原発拡大政策と緊密に関連した問題です。 今回の大統領選挙に「原発の段階的廃止」が公約に出てきていますから、送電塔問題も一緒に議論すべきです」

←地域別電力発電量および需要量 
*イメージをクリックすれば大きく見ることができます

 地方に残った人々は老人たちだ。 送電線が通過する土地の農民も60代以上の老人たちだ。 彼らが受ける補償金はほんのわずかだ。 その上に他の開発事業の場合は土地補償金でもあるが、送電線路事業の場合、鉄塔敷地を除いては収用される土地が殆どない。 送電塔と送電塔をつなぐ送電線路周辺の土地は送電線の種類と関係なく線路の左右3mまでしか補償がない。

 今年の初め自ら焼身して亡くなったイ・チウ氏の場合、農耕地1200㎡(約370坪)が送電塔から約80m離れていたので一銭の補償金も受け取れなかった。 住民は自分たちの土地周辺を送電線路が通れば地価が暴落すると訴える。 地価が落ちるのは3mの内も外も同じだ。 韓国電力は内部規定により数千万ウォン~数億ウォン台の地域支援事業をするが、住民たちは不当だと訴える。

 専門家たちは「送電線路左右3m補償」という基準が外国に照らしてとても狭いと指摘する。 キム・ジェナム議員が公開した「送変電設備建設時の被害範囲と適正編入範囲の算出および補償方法の研究」(2011年韓国土地公法学会)を見れば、フランスの場合、送電線(350kV以上)の下両側15mまで補償をするようになっている。 この報告書は国内でも765kVは9m、345kV以上は5m等に補償範囲を拡大するのが良いと提案している。

三陟(サムチョク)原発建設されればまたも“送電線路520km”

 一旦送電線の路線が決定されれば住民が反対する方法がないということも問題点に指摘される。 電源開発促進法は知識経済部長官が「電源開発事業実施計画」を承認する前に特別市や広域市、道知事など広域自治体長の意見を聞きさえすれば事業を推進できるようにした。 環境紛争研究所のシン・チャンヒョン所長は市長、郡守など基礎自治体長との「協議義務」条項に変えなければなければならないと指摘した。

 「知識経済部と韓国電力が住民を直接相手にすれば問題は解けません。 先に住民との接触面が広い市長、郡守に権限(協議義務条項)を与え、彼らが責任をもって送電塔問題を住民との間で解いていくようにしなければなりません。 でなければ市長や郡守は見物人のように、どっちつかずの立場に立つほかはありません。」

 それと共に、「発電所の周辺地域支援に関する法律」の支援対象に送電線の周辺住民も含めるべきだという指摘も出ている。 現在の送電線周辺土地は「強制収用」条項は適用されるが支援は受けられずにいる。 原発と送電塔建設体制は都会人の便利さのために地方の老人たちが犠牲になる構造だ。

 原発を作れば作るほど、密陽のような問題はずっと引き起こされざるを得ない。 新古里~北慶南送電線路が完工すれば、次いで北慶南から首都圏近隣である新安城(シンアンソン)まで765kV送電線路をさらに建設するというのが政府の計画だ。 これが完成すれば新古里原発の電力は“765kV高速道路”に乗って直ちに首都圏に送られる。 新蔚珍(シンウルチン)~江原(カンウォン)(260km)、江原~北京畿(260km)の送電線路も2019年完工を目標に推進中だ。 この送電線路は昨年新規原発敷地に選ばれて今後設備容量最大140万kWの原発4基が建てられる三陟(サムチョク)原発の高速道路になるものと見られる。 イ・ホンソク≪エネルギー正義行動≫代表は“倫理的電力消費”が必要だと指摘する。

 「ソウルと首都圏、大都市の電力消費が増大しないようにすることが根本的な解決策の一つです。 電力需要量が減らないならば密陽の悲劇は再発せざるを得ません。」

 これと関連して最近ソウル市の歩みが注目される。 パク・ウォンスン ソウル市長は「原発1基を減らそう」政策を繰り広げている。 節電を通じて電力需要を減らし新再生エネルギーを普及させて3%台である電力自給率を引き上げるということだ。 2014年までに水素燃料電池・小水力・太陽光発電所等を建設して239万2000MW hの電力を生産し、675万MW hの電気を節約して914万2000MW hの電力を創り出すことがソウル市の目標だ。 これは全南(チョンナム)霊光(ヨングァン)原発5号機の一年間の発電量より若干多い水準だ。

 ソウル市の実験が成功するか否かは未知数だ。 原発増設を拒否して送電塔を作らないことは、都会人に不便さの受け入れを要求するまた別の“闘争”であるからだ。 イ・スンジェ ソウル市「原発一基減らそう」総括チーム長は「今年5月までの電力使用量を見れば15GWh程度減った」として「全国的には増えたが、少量にせよひとまず減ったということは善戦したということだ」と話した。

ナム・ジョンヨン記者 fandg@hani.co.kr

原文: https://www.hani.co.kr/arti/society/environment/548603.html 訳A.K