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[シンクタンク広場] "社会的企業、消費者の善意にもたれるな"

登録:2012-08-08 13:30

原文入力:2012/08/07 19:52(5549字)

←‘社会的企業はどのような成果を出し、どのように知らせなければならないか?’という主題で、ハンギョレ経済研究所が先月25日ソウル、麻浦区(マポグ)、孔徳洞(コンドクトン)のハンギョレ新聞社会議室で開いた社会的企業専門家たちとの座談会で参席者が意見を交わしている。 左からシン・スンミ トラベラーズマップ経営室長、キム・チョンガク社会的企業振興院本部長、イ・ウォンジェ ハンギョレ経済研究所長、ソ・ジェギョ ハンギョレ経済研究所専任研究員、ラ・ジュンヨン カトリック大教授、チョ・ヨンボク釜山大教授。 イ・ジョングン記者 root2@hani.co.kr

‘社会的企業、成果をどのように高めるか’専門家座談会

 政府の社会的企業育成政策が始まって5年が過ぎた。 雇用労働部認証の社会的企業だけで650ヶを超え、認証前段階である予備社会的企業まで合わせれば2000ヶ余りになり底辺も広がった。 例えてみれば社会的企業は新芽から苗木にまで育ったわけだ。

 ところで社会的企業が本来の目的である社会問題の解決をうまくこなしているか否かについては疑問もある。 最近、経済的自立を過度に強調した結果、営利企業が大挙進入するなど本来の目的をおろそかにするようになったという批判もある。 ハンギョレ経済研究所は社会的企業の専門家たちと座談会を開き、どのように社会的企業を持続可能にし、本来の目的である社会的成果を高められるかについて意見を聞いた。

参席者:キム・チョンガク韓国社会的企業振興院事業運用本部長、ラ・ジュンヨン カトリック大教授、シン・スンミ トラベラーズマップ経営支援室長、チョ・ヨンボク釜山大教授
司会:イ・ウォンジェ ハンギョレ経済研究所長

司会:最近の経済状況で社会的企業はなぜ注目されているか?

ラ・ジュンヨン:福祉国家に進むための色々な方法論の中の一つとして社会的企業が脚光を浴びている。 営利企業は市場の失敗を、国家は政府の失敗をすでに経験した。 非営利領域も革新性が疑われている。 それで代案として社会的企業が注目されている。

キム・チョンガク:社会的企業は貧困問題を解決する革新的方法を提示できる代案として浮上している。 政府の役割えお代替するというよりは、社会革新を導く主体になれると見る。

シン・スンミ:タルムード(Talmud)には魚を釣るのではなく魚を釣る方法を知らせなければならないという話がある。 だが、社会的企業はこれより一段階進んで魚を釣る産業自体を変えようとする。トラベラーズマップの場合、旅行産業自体を革新しようと努力している。 旅行売上の大部分が流通過程の利益として残る現在の構造を壊し、最大70%が現地住民に還元される公正旅行を追求する理由もこのような革新のためだ。

司会:このような社会的企業が持続可能性を高めるには何が必要だろうか?

キム:かつて社会的企業について論じる時は、経済的持続可能性を強調し財務的価値の重要性に強く言及した。 だが、本来の目的である社会的価値を失えば持続可能性は難しいと見る。 社会的企業が追求する財務的価値さえも自身が持っている商品のストーリーを売って維持するものだが、結局そのストーリーは社会的価値だ。

キム・チョンガク社会的企業振興院本部長
"消費者が理解できる価値を創り出すことが重要
有機農製品販売 ハンサルリムも最初は売れなかった"

チョ・ヨンボク:かつて社会問題の解決方式は政府や非営利機関の奉仕精神に任せられていた。 社会的企業は財政的安定と社会的成果を同時に追求する。 相当な期間、このような方式が全世界的に持続すると見る。

ラ:社会的企業は市場と企業の論理で社会問題を解決するということであり、財務的自立を強調したりする。 だが、市場が欠乏して製品が供給されない市場の失敗と根本的に市場での問題解決が困難な市場の失敗は別の概念だ。 例えば、補聴器の場合には十分に市場論理で解決できる問題だ。 これは市場に任せるものの、市場が良く回るように助けさえすればよい。 反面、障害者雇用は市場論理ではとうてい解けない問題だ。

司会:それでは障害者雇用のような分野には政府の支援が必要なのではないか?

ラ:政府の支援が必要だが、市場システムを賢明に活用する必要がある。 この時、社会的企業が創り出す社会的成果をきちんと評価することが重要になる。 すなわち大きな社会的成果を創り出す社会的企業に補助金を支援すれば企業組織の長所を生かしながらも市場の失敗を解決できる。 たとえば他所では解決できない障害者雇用問題をきちんと解決するならば、赤字が出てもより多くの補助金を支援し、これを奨励することが必要だ。 これが社会全体的には利益になる。

ラ・ジュンヨン カトリック大教授
"全北(チョンブク)全州市(チョンジュシ)の事例がある
清掃入札で資本金制限をなくし
評価配点に変化を加え、社会的企業が選ばれた例がある"

チョ:消費者が賢くなって社会的企業がさらにはずみをつけているようだ。 情報技術の発達で遠く離れた人々の苦痛に対する共感能力が高まった。 社会問題に対する自覚も過去より高くなった。 外部環境は良くなったわけだ。 ただし、このような消費者の期待に合わせて社会的企業の力量も高まらなければならないだろう。 ある製品を生産する時、その製品が果たして売れるのかを最も強く熟慮するように、社会的企業もやはり社会的企業が創り出す社会的価値が私たちの社会の‘社会問題解決市場’で需要があるかを積極的に考慮しなければならない。 地域社会が必ず解決しなければならない社会問題を社会的企業が看破し解決する時に持続可能性が高まる。

ラ:社会問題解決市場で‘社会問題を解きほぐす上で最も効果的な方法’を該当社会的企業が示すことができてこそ持続可能性が高まる。 また、製品市場でも最小限の力量は備えていなければならない。










↑左からキム・チョンガク、ラ・ジュンヨン、シン・スンミ、チョ・ヨンボク。

シン:我が国の旅行市場は超低価格市場になっている。ここで生じる赤字を現地に負担させ、現地ではオプションやショッピングなどを強要して赤字を補填するのが既存の旅行商品の構造だ。 価格競争から価値競争に構図を変えてこそ、このような構造を打破できる。 一社会的企業がするにはあまりに面倒なことで、社会全体の認識を変える努力を共にしなければならない。

キム:消費者の善意にもたれるのでなく消費者が理解できる価値を創り出すことが重要だ。 有機農製品を販売するハンサルリムも初めは売れなかった。 10年苦労した末に今は軌道に乗った。 価値で価格を克服できる市場が開かれているということだ。

シン:社会的企業の製品なので買えと言った瞬間に失敗する。 製品自体に競争力がなければならないということには同意する。 だが、評価基準が不十分な点は改善されなければならない。 例えば、公共市場に進出しようとしても評価基準が価格だけを追求する方式になっている。

シン・スンミ トラベラーズマップ室長
"成長期に入った社会的企業
資本が必要な時に調達のために
社会的成果を測定し公示する
システムが定着しなければならない"

司会:それなら社会的企業の社会的成果をきちんと測定することが必要なのではないか?

ラ:社会的成果を貨幣価値だけで表現することは難しいが、非常に強力で価値あることでもある。 英国も去る10年間に社会的価値の評価ツールを作るために努力中だ。 ツール自体が重要なのではなく、測定指標を共有して、累積させて発展させることが重要だ。 一日で可能なことではない。 持続的に実際に測定事例を作っていくことが重要だ。 英国の地方政府では完全ではないにしても依然として社会的投資収益率(SROI)という指標が既存投資収益率(ROI)の代わりに活用されている。

チョ:一つの基準で測定することはできないが、多様な方法で測定することが必ず必要だ。 社会的企業も5年ほどになったので、これからが開始だと考えて根気よくしなければならない。 測定と評価には成果改善という目的も含まれており、社会的企業の成果を高めるためにも持続的に測定することがより一層重要だ。

司会:測定した結果をきちんと公示して活用するシステムが作られることも重要なようだ。

シン:トラベラーズマップは2011年2月に社会的投資を募集し、2億ウォンを集めた。 当時、社会的投資収益率で社会的成果を示した。 外部投資家と利害関係者の要請があったので社会的成果を測定して公示する必要があって自ら実行した。 だが、この結果を検証する制度がなく限界があった。

チョ・ヨンボク釜山大教授
"情報技術の発達で遠く離れた人々の
苦痛に対する共感能力が高まった。
外部環境は良くなったと言える"

司会:社会的企業が社会的成果を公示した時、公共機関などが立ち上がり、その成果を基準として評価して購買の参考にすれば効果が大きくないだろうか?

キム:公共購買はそれこそ公共価値を優先するべきだが、価格を中心に評価すれば社会的企業が接近しにくいのが事実だ。

ラ:評価の配点を変える方法で可能だ。 昨年、全羅北道(チョルラブクト)、全州市(チョンジュシ)の事例がある。 清掃事業入札で資本金制限をなくし、社会的企業に加点を与えるなど評価配点に変化を与えて落札業者に社会的企業が選ばれたことがある。 ただしその場合、製品やサービスの質は社会的企業が保障しなければならない。 社会的企業間協力を活性化するなどの補完策が伴わなければならないのも同じ理由からだ。

シン:成長期に入った社会的企業が、資本が必要な時、それを調達するために社会的成果を測定し公示するシステムが定着するべきだと見る。

整理:ソ・ジェギョ ハンギョレ経済研究所専任研究員 jkseo@hani.co.kr
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注目される‘社会的企業経営公示’

‘脆弱階層に働き口をどれくらい提供したか’等
非財務的成果 公開が持続可能性を高める方法

 最近社会的企業の持続可能性を高めるための方法の一つとして、社会的企業の経営公示が注目されている。 社会的企業の経営成果を透明に公開することによって多様な利害関係者から信頼を確保することが目的だ。 消費者・投資家・寄付者など社会的企業の利害関係者の立場から見れば、より良い社会的企業を選び出すことができる良いデータを確保できるということだ。 株式投資家の意志決定に上場企業の経営公示が重要な参考資料になるのと同じ論理だ。

 特に社会的企業の経営公示は財務成果だけでなく、社会および環境成果のような非財務的成果が経営公示項目に含まれる。 ‘脆弱階層に働き口をどれくらい提供したか’、‘地域社会に無料社会サービスをどれくらい提供したか’、‘親環境製品やリサイクル品をどれくらい使ったか’等の非財務的成果が社会的企業では重要な成果と見なされる。

 社会的企業が非財務的成果を重視するのは、その経営特性のためだ。 まず社会的企業は成果ではなくプロセス、すなわち過程中心経営を指向する。 投資と生産を通じて稼いだ収益、すなわち財務成果だけでなく、生産と運送、販売にいたる価値連鎖上の経済、社会、環境的便益の総合が社会的企業の最終成果だ。 したがって経営過程で惹起しうる社会および環境成果が重要な評価の定規だ。

 多様な利害関係を考慮した‘利害関係者経営’が必要なことも社会的企業が非財務的成果を疎かにできない理由だ。 一般的に株式会社に代表される営利企業の意志決定はほとんどが株主、すなわち投資家を中心になされる。 だが、社会的企業は多様な利害関係者との疎通を通じて意志決定が成り立つ。 投資家は勿論、政府をはじめとする関連機関、大企業など協力会社ネットワーク、消費者、市民団体など多様な利害関係者から存立の基盤を与えられる。

このような特性のために社会的企業は財務成果だけでなく非財務成果も重要だ。 だが、非財務成果を測定して管理する方法論開発は不十分なのが事実だ。 ‘社会的投資収益率’(SROI:Social Return on Investment),‘均衡成果表’(BSC:Balanced Scorecard)等を活用した一部事例研究が成されたものの、理論的困難と適用の限界で社会的企業全般の参加と同意を得られていない。

 このような点を補完するために今年6月から韓国社会的企業振興院とハンギョレ経済研究所は‘2012社会的企業経営公示作成および支援事業’を進めている。 評価指標の体系化と測定方式の改善を通じて社会的企業の参加を誘導するという計画で進行中だ。 評価指標は共通指標と自律指標に区分され、社会的企業のミッションとビジョンを盛り込める補助指標も追加し体系性を強化した。 測定方式は既に量的成果だけでなく質的成果も表現できるよう表現方式を多様化した。

ソ・ジェギョ ハンギョレ経済研究所専任研究員

原文: https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/546118.html 訳J.S