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数兆ウォン儲けても税金は0 投機資本ための地上の天国

登録:2012-06-16 08:18

原文入力:2012/06/15 20:54(2984字)





<宝島>ニコラス サクソン著、イ・ユヨン翻訳/bookie・2万ウォン

人口 2万 英国、バージンアイランド
企業80万社が登録された理由?
投機で稼ぐ‘食い逃げ’資本
租税回避のために‘域外金融’利用

 外換銀行の引受売却で何兆ウォンもの莫大な差額(投資収益率239%)を手にした米国系私募ファンド ローンスターが投資家-国家訴訟制(ISD)を掲げ、再び数千億ウォンの税金を返させると言っているようだ。 外換銀行の売却主体がローンスターのベルギー法人である‘LSF-KEBホールディングス’であり、ベルギーと韓国は二重課税防止協定を結んでいるため、ベルギー法人が韓国に投資して収益を得れば、ベルギーが課税権を持つというのがその理由だ。 ベルギーは海外株式投資所得には税金を払わせない国だ。 したがってローンスターは数兆ウォンの収益を上げておきながら税金を一銭も払わない可能性がある。 韓-米自由貿易協定(FTA)国会批准過程で‘毒素条項’批判を受けた投資家-国家訴訟制の初事件になるわけだが、国税庁が敗訴する恐れがある。 オンライン書店アマゾンの英国法人は去る3年間に8兆5600億ウォンの売り上げを上げても税金は一銭も出さなかった。

 英国ジャーナリスト ニコラス サクソンの<宝島>を読んでみればその理由が分かる。 この本によればベルギーは代表的な租税回避処の1ヶ所だ。 本で‘域外世界’ ‘域外体制’とも呼ぶ租税回避先は 「海外から資本を引き込むために金融秘密主義と租税恩恵および種々の法網回避手段を考案して提供する所」だ。 一言で言えば治外法権地帯に近い。 西側の巨大資本が略奪的方法でかき集めた巨額資金を税金を一銭も出さずにロンダリングして取引し隠匿することに利用されている。 したがってローンスターの主張は不道徳で醜悪であっても合法でありうる。 略奪し隠匿した血のついた宝物探しを巡って展開される道徳的判断基準が若干曖昧な活劇を描いたスティーブンソンの小説<宝島>(1883)から題名を取って付けたことはうなづける。

 <宝島>は最近数十年間に発生した有意な大型経済的・政治的事件の背後にはこの域外金融体制が温床になっている可能性が高いと指摘する。 米国、ワシントン国際政策センターのグローバル金融健全性プログラムによれば、2006年一年間に開発途上国が不法金融取引で負った損失額が約8500億~1兆ドルに達する。 この損失規模は毎年18%ずつ高まっているという。 このプログラムを主導したレイモンド ベーカーはこういう話をした。「私たち西欧人はテーブルの上で1ドルを寛大に投げかけながら、テーブルの下では不法な金約10ドルを奪っている。」

 アフリカだけに限定すれば、1970~2008年の約40年間に流出した不法金融資本総額が保守的に推算しても8540億ドル、多ければ1兆8000億ドルに達すると国際政策センターは明らかにした。 1967年に32歳でアフリカ資源富国ガボンの大統領になったオマル ボンゴは2009年に死亡するまで統治した世界最長独裁者であり、息子のアリ ボンゴがまた大統領になった。 旧宗主国フランスは少数民族出身で支持基盤が弱かったボンゴが権力をにぎるや彼の宮殿、そちらと地下道で連結された部隊に数百人の空挺部隊員を配置した。 フランス企業らは地下資源開発独占権を得たし、そこで造成された巨額の秘密資金はジャック シラクのフランス右翼政党共和国連合の政治資金として流れて行った。 社会党も一定部分は共謀した。 この新植民主義的状況をガボンのあるジャーナリストは「フランスの人々が表門から出て、再び裏口から入ってきた」と要約した。 2007年にフランス大統領に当選したニコラ サルコジが一番最初に電話した外国のリーダーもボンゴであった。

 独占的特典の代わりにボンゴの長期政権を保障した旧西側主君だけでなく、ボンゴの家臣・側近もやはり巨額を引き出した。 1%である彼らは実は一派だ。 2008年だけで約18兆ドルにもなる金がオランダの‘域外法人’を経由したが、これはオランダ国内総生産(GDP)の20倍にもなる。この域外法人がまさに租税避難先だ。

 しかし今日、最大の租税避難先はオランダではなく英国であり米国だ。 英国租税回避地域の核心は首都ロンドンの中心部であるシティ オブ ロンドンとその周辺部の金融サービス業界で構成されている。 こちらで全世界の株式取引の半分、場外派生商品取引の45%、グローバル外国為替取引の35%、国際株式公募の55%がなされている。 米国、ニューヨーク、マンハッタンは証券化と保険、企業買収合併、資産管理などの分野でロンドンより規模が大きいが、取引の多くが国内市場関連なのでロンドンが世界最大の国際金融ハブであり域外金融のハブ、すなわち最大の租税回避先だ。 ロンドン シティのすぐ外側をジャージー・ガーンジー・マンのような英国王室領の島々とケイマン諸島のような14ヶ所の海外領土が取り囲んでいて、またその外側には香港とシンガポールなどの旧植民地金融ハブが布陣している。 この英国租税避難所全体集団が国際銀行券総資産の約半分を占めている。 先日、エリザベス女王の華麗な在位60年記念行事の裏に立ちこめている大英帝国の暗い影だ。 英国租税回避集団の最大利用者は米国資本だ。 “表門から出るや再び裏口から入ってきた”旧帝国主義宗主国の代表はフランスではなく英国であり米国であるわけだ。

 人口2万5000人にもならない英国領バージンアイランドには何と80万社を超える企業が登録されている。 利用者は西側金融投機資本だ。 破産した米国巨大エネルギー取引会社エンロンは、881社に及ぶ域外会社を持っていた。 その内692社はケイマンに、119社はタークス・カイコスに、43社はモーリシャスに、残りの8社はバミューダにあった。 全てがクモの巣のように編集された英国租税避難所だ。 シティグループは427社、フォックス ニュース所有主のルパート・マードックのニュースコーポレーションは152社の子会社を租税回避処に置いている。 ローンスターも大きくは違わないだろう。 著者は1%のためのこのような略奪的金融技法が世界経済を亡ぼし、結局その1%さえも亡ぼすだろうと警告している。

 租税避難所の歴史を貫いている<宝島>の話を辿っていけば現代金融資本100年の裏面史が読まれる。 この分野の専門家である翻訳者イ・ユヨン氏によれば、関税庁は昨年租税避難所として自ら分類した国家や地域から輸入通関の時に申告された金額は計429億ドルだったが、実際の代金支給総額は1317億ドルだったと明らかにした。 それならその差額889億ドル、103兆ウォン、我が国政府年間予算の3分の1に該当する大金はどこに抜け出たということか。

ハン・スンドン記者 sdhan@hani.co.kr

原文: https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/538021.html 訳J.S