原文入力:2012/03/23 23:03(3019字)
←脱北者定着支援施設である‘ハナ院’内部。 北韓の人権に劣らず国内に入ってきた脱北者の人権も重要だという指摘が提起されている。 <ハンギョレ>資料写真
‘北韓人権運動’に‘国内脱北者の人権’はない
丹東(タンドン)とソウルで確認した‘北送還反対イシュー化’の逆説
国家情報院主導の合同尋問
悪口と暴行に事実上の監禁
返答態度が気にくわないとし、ボールペンで頭を突く…
社会的合意なしで合同尋問 最長6ヶ月に延長
脱北者は "定着金を貰う境遇だから"
韓国政府と自由先進党、セヌリ党など保守政党所属政治家が主導している脱北者(北韓離脱住民)の強制北送還反対の声が北韓人権に対する国内外の関心拡大につながっているが、実際に北韓を脱出して韓国に入国する北脱出者の人権は疎外されているという指摘が提起されている。 特に最近北韓を脱出して国内に入ってきた一部脱北者は国家情報院主導でなされる合同尋問過程で悪口や暴行、事実上の監禁など反人権的待遇を受けたという主張も出している。
大田(テジョン)に住む脱北者カン・某氏は2009年○月中国を経て韓国に入ってきた。 韓国に初めて足を踏み入れる時、カン氏は‘自由の国大韓民国’に対する大きな期待を抱いていた。 カン氏の期待は韓国入国と同時に砕け散った。 彼が初めて連れて行かれたところは京畿道(キョンギド)某所にある‘総合合同尋問所’であった。 脱北者は国内に入国すればまず国家情報院と統一部、警察関係者が共に参加する合同尋問を受ける。 ここで‘保護対象’と判定されればその後はハナ院で12週間の定着教育を受ける。
カン氏に対する合同尋問も国家情報院と警察、国防部関係者などが参加した中でなされた。 2~3坪余りの空間に事実上閉じ込められた彼は脱北の背景と経路はもちろん北韓内の親戚関係、学歴と履歴など自身のほとんどすべての‘過去’を告白しなければならなかった。 ここまでは大丈夫だった。 最も耐え難かったのは暴行と暴言だった。
カン氏は昨年11月19日公益弁護士会 '共感'に手紙を送り 「2009年○月△日国家情報院の審査を受ける途中、呼吸困難を起こし病院に送ってほしいと訴えたが、反対に3人の指導官に地下駐車場に引きずられて行き殴打されて野卑な暴言を浴びせられた」として「国家情報院が暴行事実に対する誤りを認めてきちんと謝罪しないなら大韓民国国籍を放棄して北韓にこの事実を知らせる」と明らかにした。 彼は当時の暴行の後遺症で今も難聴に苦しめられている。
国内に入国した脱北者に対する苛酷行為が問題になったのはカン氏の事例が初めてではない。 忠南(チュンナム)、牙山(アサン)に住む脱北者パク・某氏は2007年○月韓国に入ってきた後、国家情報院などの調査過程で暴言・暴行に苦しめられた。 調査担当者は彼に一緒に入国した在中同胞(朝鮮族)との関係を問い質した。 一部の在中同胞は脱北者に支給される定着支援金と韓国国籍取得を目的に脱北者を装って国内に入ってきたりもする。 パク氏は北韓を脱出した後、ある在中同胞から助けを受けただけで知らない間柄だと明らかにしたが、担当者は彼の話を信じなかった。 パク氏は去る22日 「返答態度が気に入らないとし机に腰掛けた国家情報院関係者が調査過程で飲料缶で殴りボールペンで頭を突いた」として「尋問にともなう激しいストレスで腹痛を訴えたが消化剤を持ってきただけで事実上投げつけた」と主張した。 4日後、パク氏の腹痛は虫垂炎であることが明らかになった。
暴行以外にも総合合同尋問所で事実上の監禁などの反人権的な処遇にあったという脱北者の証言は他にも多い。 2010年中盤、中国を経て入国した50代半ばの脱北者キム・某(女)氏は去る17日「(合同尋問所の)強圧的な雰囲気の中で話もまともにできず、自由に笑うこともできなくてストレスが激しかった」として「一週間内外の調査を終えた後、約2ヶ月間控室に事実上閉じ込められていた」と話した。 同じ年に入国したまた別の脱北者ファン・某(20代序盤)氏は「熱い夏であったのにエアコンもつけてもらえず窓も開かないようにして体重が7㎏減った」として「本も読めないようにするなど、ただ呆然と座っていなければならなくてとても苦しかった」と話した。
政府が特別な社会的合意もなしに合同尋問期間を二倍に増やしたことも脱北者らの不満だ。政府は2010年9月27日、脱北者合同尋問の根拠条項である‘北韓離脱住民の保護および定着支援に関する法律’施行令を直し、それまで90日だった調査期間を最長180日に増やした。 政府の意図は脱北者を装ったスパイの浸透を遮断し、定着支援金を狙う在中同胞の偽装入国をより徹底的に遮断するということだった。 これに対して昨年入国して2ヶ月間の合同尋問を受けたという脱北者パク・某(20代半ば・女)氏は「私の場合、2ヶ月間閉じ込められて過ごしたのも十分に大変だったのに、その期間を6ヶ月に増やすなら脱北者には耐え難いだろう」と話した。
法曹界の一部からも政府が脱北者の人権侵害の素地がある内容の法令改正を推進しながら脱北者などの意見集約手続きをまともに経ないのは問題という指摘が出ている。 公益弁護士会'共感'のユン・ジヨン弁護士は、去る15日<ハンギョレ>と行ったインタビューで「脱北者が韓国に定着するには国家情報院長から‘臨時保護やそれ以外の必要な措置’を受けなければならないが、相当数の脱北者は‘臨時保護’を事実上の監禁と受け入れている」として「施行令の改正により被害を受けかねない脱北者の意見集約など社会的合意手続きをまともに経ていないことは問題」と指摘した。
合同尋問などの過程で苛酷行為があったとしても、大多数の脱北者がこれを明らかにしたがらないということも脱北者の人権侵害実態把握に困難として作用している。 脱北者は政府から初期生計費用といえる定着支援金を受けなければならない立場であるためだ。 政府は脱北者が国内に入国すれば定着基本金と住居支援金、雇用支援金などを支給している。 共通して支給される定着基本金は1人世帯基準で600万ウォンだ。 だが、脱北者によっては減額される場合がある。 先日、合同尋問過程で暴行にあったと明らかにした脱北者パク氏は「返答態度が疑わしいとし定着基本金の半分(300万ウォン)しか受け取れなかった」と明らかにした。 また別の脱北者ファン・某(20代後半)氏も「定着支援金で人を威嚇するので、政府の人々の顔色を見るほかはなかった」と話した。
これに対して国家情報院は23日「‘脱北者暴行’は合同尋問過程で虚偽陳述事実が発覚して定着金削減などの不利益にあった脱北者の一方的主張」としながら「国家情報院は脱北者を‘暖かく配慮しなければならない同胞’として認識し人格的に待遇しており、調査過程で起きうるささいな人権侵害論難も遮断するために人権保護指針を制定・施行している」と明らかにした。
チェ・ソンジン記者
原文:
https://www.hani.co.kr/arti/society/rights/524997.html 訳J.S