原文入力:2012/03/13 18:14(2270字)
←キム・ヨンホ文化放送ディレクターが13日、上層部ラインの指示で‘韓米FTA’編を放送できない心境を吐露した。写真 イ・ジョンウ記者
1月からのカナダ・メキシコ取材後‘追加撮影・編集などを中断’命令受ける
キム・サンス局長 "総選挙局面なので" …キムPD "詳しい内容も知らずに決定"
"韓米自由貿易協定(FTA)が発効される前に放送して協定が韓国社会に及ぼす影響を知らせ討論の場を開きたかったが本当に残念です。"
キム・ヨンホ文化放送ディレクターが13日、上層部ラインの指示で‘韓米FTA’編を放送できない心境を吐露した。キム ディレクターは去る1月から韓米自由貿易協定が韓国社会に及ぼす影響を具体的に見せるプログラムを企画し取材して、2月28日に放送する予定だった。 しかし先月20日、キム・サンス時事教養局長が「政治的に敏感な事案なので総選挙の後に放送する」という‘放送保留’決定を下した。
キム ディレクターは「今年の新年企画として自営業者の没落を取材しながら、韓米自由貿易協定が発効されれば自営業者の危機が加速化するなど、韓国社会全般が大きな変化を経ることになるだろうことが分かった」として「わが国より先に自由貿易協定を締結したメキシコとカナダの事例を具体的に取材し、その影響をきちんと見せる計画だった」と話した。
キム ディレクターは1986年文化放送に入社した部長級ディレクターだ。労働組合員ではなくストライキには参加していない。キム ディレクターは 「キム・チョルジン責任ディレクター(時事教養2部長)とキム・サンス時事教養局長の決裁を経て正常手続きによりプログラムを準備し、メキシコとカナダ出張に行ってきた」として「ストライキに参加していないので取材をして放送するのは一種の義務」と話した。 しかしキム ディレクターは18泊19日間のメキシコ・カナダ出張を終えて帰ってきた直後の先月20日「‘追加撮影・編集などを中断しなさい’という指示を受けた」と伝えた。 キム ディレクターは 「取材を終えて製作中断命令を受けたことは盧泰愚政権の時にも無かったこと」とし「20余年前に戻ったようだ」と話した。
製作中断圧力は取材段階からあった。 キム ディレクターは「メキシコで取材していた先月10日からキム・チョルジン部長が電話をかけてきて‘とても敏感な政治的イシューになった。取材を中断しては駄目か’として1時間ほど説得しようとした」と語った。 キム部長が電話をかけてきたのは去る8日野党が米国大使館を訪問してオバマ米大統領とジョー バイデン上院議長、ジョン ペイノ下院議長に韓米自由貿易協定発効停止と全面再検討を要請する書簡を送った直後だ。
キム・サンス時事教養局長は13日、文化放送イントラネットに「放送を総選挙以後に先送りしようという決定は私が下した」として、放送保留決定を下した理由を明らかにした。 キム局長は「キム ディレクターがカナダとメキシコ出張に行った間に国内で韓米FTAが総選挙を控えて最大イシューになった」として「時事・報道プログラムが総選挙局面で与野党の一方に一方的に有利な放送をしてはならないと考える」と主張した。 キム局長はまた「今年1ヶ月を超えて放送しなかったのに、一週だけ放送し、その次はまたずっと放送しないというのは常識的に道理に合わない」と付け加えた。
これに対してキム ディレクターは「単純に賛成、反対という政争の内容を盛り込んだことでなく、韓米自由貿易協定という大きな変化の契機を私たちはきちんと準備して迎えているかを点検する意味を込めた」として「部長、局長らは、どんな内容を取材したのか詳しい内容も知らずに単に‘韓米FTAが政治的に敏感な事案になった’という理由だけで放送を総選挙以後に先送りする政治的決定を行った」と話した。
カン・ヒョンチョル淑明(スンミョン)女子大教授(言論情報学)は「‘選挙放送審議に関する基準’は報道をしないということではなく、公正でバランスが取れているように報道しろということ」とし「すべての政治的争点を選挙関連事項なので報道しないとするならば、いったい放送は何を報道するのだろうか」と批判した。 カン教授は「当代の争点と国民が知ろうと思うことを最大限公正で真剣に知らせることが放送の役割なのに、文化放送は今その役割を放棄している」と話した。
放送を保留したり検閲したことは今回が初めてではない。キム・ジェチョル社長が就任した去る2010年8月には‘4大河川 水深6mの秘密’編が放送保留された。 昨年1月には‘公正社会と落下傘’編を巡り事前審議論難が盛んに行われ、昨年3月には‘李明博大統領の国家朝餐祈祷会の跪き祈祷事件’を扱おうとしていた製作スタッフがユン・キリョン当時時事教養局長から取材制裁を受けた。 昨年8月にはソウル市無償給食住民投票を控えて‘誰のための漢江(ハンガン)辺開発なのか’編でオ・セフン市長に対する言及部分が全て削除されるなど放送直前に緊急修正される事態も起きた。
パク・スジン記者 jin21@hani.co.kr
原文: https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/523292.html 訳J.S