原文入力:2011-04-04午後11:03:13(2687字)
小説‘遠美洞(ウォンミドン)の人々’の舞台、富川復興市場の住民たち
政治のバラ色公約にニュータウンに同意したが‘ため息’
補償費で新しいアパートはおろか、住んでいた家から追い出される危機
事業認可控えて各地で衝突
ホン・ヨンドク記者
←開発利益に対する期待感で各地で始まったニュータウン事業が、深いどん底に陥った。4日午後、京畿道、富川市、遠美洞ニュータウン事業地区内の路地の壁に、ニュータウン事業に反対する住民の集い‘遠美洞を愛する人々’が貼った‘開発反対要請文’前をひとりの住民が無関心そうに通り過ぎている。 富川/キム・テヒョン記者 xogud555@hani.co.kr
京畿道、富川市、遠美区、遠美洞の復興市場で30年余り暮らしてきたカン・ヒョンジョン(65)氏がこちらの34坪3階レンガ造りの家を建てたのは1988年だ。1~2階の4世帯から受け取る家賃100万ウォンで豊かではないが夫と余裕のある毎日をすごしていた。そんなカン氏がこの頃は「毎日ニュータウン反対デモをしているが腕も痛く胸も痛い」と話した。彼は 「保証額で新しいアパートを得るどころか、行く所もなく家賃収入も途切れるということが今になってようやく分かった」として胸を打った。
開発業者らが投じた数億ウォンの‘紙切れ’誘惑と政治家たちが喚いた‘バラ色公約’から始まったニュータウン事業が、わずか2年もならない内に沈没の危機に置かれた。前に出ることも、後に戻ることもできない茫漠たる状況で住民の間には葛藤と怒り、不信ばかりが大きくなっている。
李明博大統領がソウル市長だった2002年、恩平・吉音・往十里など3ヶ所をモデル地区として指定しながら始まった‘ニュータウン事業’(都市再整備促進事業)の事業地区は現在、全国82ヶ所,面積8000万㎡を越える。ソウル、汝矣島面積の90倍に達する。イ大統領がソウル市長である時、ソウル35地区中33ヶを指定し、京畿道ではキム・ムンス知事が2006年就任と共に同時多発で推進し23地区が指定され、ソウル・京畿だけに58ヶ所が集まっている。
‘黄金の卵を産むガチョウ’と呼ばれたこの事業は、しかし2008年の世界金融危機にともなう不動産景気沈滞で直撃弾を受けた。ここに政府が2009年から首都圏開発制限区域(グリーンベルト)を解除し推進したくつろぎの里住宅事業が衝撃を加えた。今、ニュータウン事業はあちこちで‘苦労の種’に転落した。
富川復興市場は小説家 タン・クィジャ氏が庶民の暮らしの哀歓を描き出した<遠美洞の人々>の舞台だ。こちらに‘ニュータウン狂風’が襲い、立ち往生することとなった住民たちの目じりは血走っていた。果物店・宝石店など商店70ヶ余りがびっしり入っていた市場で、夫と家内衣類業を営むシム・某(53)氏は3日 「ニュータウン旋風が吹き住民たちどうしが争って、反対する老人たちは夜も眠れない」と話した。ソウルで貸間など30ヶ所余りを転々として1980年に建物を買い定着したチョ・セウク(57)氏は「わが家の保証額を確かめてみて引越しする所を探してみたが、実際行ける所がなかったよ」として、がっくりと肩を落とした。
富川市は素砂区で国会議員を務めた後‘ニュータウン公約’を掲げ、続いて京畿知事に選ばれたキム・ムンス知事の政治的故郷だ。そのためか京畿道内23ヶニュータウン地区の中で進度が最も速かった。遠美・素砂・古康 3地区49ヶ区域 615万㎡に7万5803世帯19万人余りが移住対象だ。進度がはやいだけに絶望も大きい。
京畿道ニュータウン事業1号である‘素砂本洞9-2D区域’は地主が1人なので、それだけ事業もはやかった。昨年2月着工後、アパート分譲に入った。だが、1年間ずっと‘分譲中’だ。モデルハウス関係者は 「通常一ヶ月半もあれば分譲契約が終わるが、契約金を5%低くしたのに未分譲が残っている」と話した。また別の素砂洞ニュータウン組合は施工者選定が失敗に終わった。事業性危険のために施工者が関心を見せなかったせいだ。「私がニュータウンを初めにやろうと言った」というキム・ムンス知事は、先月11日 国会議員と京畿道地方の自治体長らに「先を見通すことができなかった点を非常に申し訳ないと考える」として頭を下げた。
それでもニュータウン事業はずっと進めるほかはない。富川は49ヶ区域の中で31ヶ所が組合を設け施行段階にすでに入ったためだ。住民たちが今になって反対しても事業施行認可を控えた状態なので "退路がない" というのがキム・マンス富川市長の話だ。
ニュータウン事業は組合設立後、事業施行認可まで終えた後に事業以前の住居価格評価額と以後の分譲価格を確定するようになっている。この段階に至れば移住・撤去まで一瀉千里に推進される。カン氏のように後から現実を悟ることになった住民の反発が激しくなっても対策はない。‘富川ニュータウン再開発非常対策委員会連合’代表のパク・ドッキ(52)牧師は「事前に自分の住居の価格も、ニュータウン アパートの分譲価格も分からないまま‘金になる’という幻想に乗り同意して、今になって‘無一文の乞食’になることを知ることになった住民たちの怒りは爆発寸前」と話した。
区域別に反対対策委員会が次から次へとでき、住民たちは反対運動を行い突然に前科者になったりもしている。先月、富川市長室占拠座り込みで拘束されたパク牧師は、10年余りホームレス100人余りに無料給食を行ってきた‘飯盛り牧師’としてこの地域に知られている。警察に不拘束立件された住民は富川・議政府だけで50人を越えた。
遠美洞の人々が暮らす遠美7B区域も組合設立が終わった。反対住民たちは同意書75枚が偽造されたとし提起した組合設立取り消し訴訟にかすかな希望をかけている。ニュータウン事業に反対する住民たちが設けた‘遠美洞を愛する人々’のイ・サンヨン(70)氏は「死ぬまでここで暮らそうと直接家を建てたが、その夢がこわれようとしている。国がそんな事はしないで欲しかった」と話したが、その夢が全て守られる可能性はあまり高くない。 富川/ホン・ヨンドク記者 ydhong@hani.co.kr
原文: https://www.hani.co.kr/arti/society/area/471349.html 訳J.S