本文に移動

選挙に焦るトランプ氏、ウクライナをスケープゴートに?…「拙速終戦」の懸念

登録:2026-10-20 09:02 修正:2026-10-20 09:18
ウクライナのゼレンスキー大統領が16日(現地時間)、ベルギーのブリュッセルで行われた欧州連合(EU)首脳会議で、記者会見をおこなっている=ブリュッセル/AP・聯合ニュース

 来月3日の中間選挙を控え、ガソリン価格の高騰に焦った米国のトランプ大統領がウクライナ戦争の早期終結を急いでいるため、終戦交渉の重心がロシアの方に傾いていると分析されている。トランプ大統領は原油価格の安定を図るため、ロシアに対する経済的圧力を緩和する一方、ウクライナに対しては、ロシアに打撃を与える中心的手段となっている石油精製施設への攻撃を中止するよう求めている。この隙を突いてロシアのプーチン大統領は、ウクライナと欧州を排除した米中ロによる3者首脳会談を提案した。トランプ大統領が終戦交渉で「大きな進展」が実現していると主張する一方で、ウクライナの意思が排除された中でロシアに有利な合意が推し進められるのではないかという懸念も高まっている。

 このところのトランプ政権の動きで際立っているのは、ロシアとウクライナに対する圧力の不均衡だ。トランプ大統領は9日(現地時間)にプーチン大統領とロシア産軽油の国際市場への供給拡大で合意したのに続き、16日には先月議会が超党派で可決した対ロシア制裁法の最重要条項の適用を猶予した。一方、ウクライナに対しては、ロシアの石油精製施設への攻撃の中止を繰り返し要求している。

 このような政策の変化の背景には、中間選挙を控えて原油価格高騰という負担がのしかかっていることがある。米国エネルギー情報局(EIA)によると、12日現在の全国平均の軽油価格は1ガロン当たり6.18ドルで、1年前に比べ約69%上昇。農業や貨物輸送などに不可欠な軽油の価格の急騰は、トランプ大統領の主要支持層の離反を招いている。

 米国の要求はウクライナの交渉力も弱めている。ロシアの石油精製施設に対する長距離攻撃は、ロシアの戦争遂行能力を弱体化させるためのウクライナの主要な手段となっている。ゼレンスキー大統領は、ウクライナによる石油精製施設への攻撃の中止を条件に、ロシアによるウクライナのエネルギー施設への攻撃の中止、または米国によるパトリオット迎撃ミサイルの追加供給を提案。しかし、どちらも受け入れられなかった。

 軍事・情報支援をめぐる対立も深まっている。ゼレンスキー大統領によると、米国はロシアの弾道ミサイル発射に関する事前情報の共有を一時中断し、後に再開。ウクライナ軍が使用するスターリンクの軍用衛星通信サービス「スターシールド」でも、無人機などが時速161キロ(100マイル)を超えると通信が制限される現象が発生した。ゼレンスキー大統領は、この日公開されたブルームバーグ通信およびNBCのインタビューで、米国によるパトリオットの供給がバイデン政権時代の4分の1(月に12発)に減少したことと、情報・通信制限に言及しつつ、それらを「ウクライナの降伏を引き出すことを狙った圧力」だと主張した。特に衛星通信の制限は「米国政府のメッセージ」にもとづくものであり、米国がロシア側につくのは「歴史的な過ちであり悲劇」だと批判した。しかしトランプ政権は、情報提供の意図的な遮断、スターシールドの速度制限指示という疑惑を否定している。

 トランプ大統領は逆にゼレンスキー大統領に責任を転嫁している。同氏はこの日、ソーシャルメディアのトゥルース・ソーシャルで、ウクライナによるロシアの石油精製施設への攻撃が世界の軽油市場を混乱させており、米国の農家や企業を苦しめていると主張。ロシアは安価な軽油を供給していると擁護する一方で、ゼレンスキー大統領については「戦争を終わらせたがっておらず、おそらく最初からそのつもりがなかったのだろう」と非難した。

 プーチン大統領は、このような状況を利用して交渉の枠組みそのものを変えることを狙った動きを見せている。この日、ウォール・ストリート・ジャーナルは関係者の話を引用し、プーチン大統領が9日にトランプ大統領と電話で会談し、中国の習近平国家主席も参加する3者首脳会談を提案したと報じた。来月中国の深センで開催されるアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議を機に行うというもの。クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官も、3者会談の可能性について協議中であることを認めた。

 この構想の要は、戦争当事者であるウクライナと欧州を排除することにある。協議について報告を受けたロシア情報機関の元関係者は、プーチン大統領は大国同士で勢力圏を分け合う「第2のヤルタ会談」を構想しているようだとウォール・ストリート・ジャーナルに語った。ただしトランプ大統領はまだ会談に同意しておらず、開催されるかも不透明だ。

 こうした対立の中にあっても、ゼレンスキー大統領はこの日、トランプ大統領の特使を務めるスティーブ・ウィトコフ氏、トランプ大統領の娘婿のジャレッド・クシュナー氏と40分間にわたって電話し、追加交渉について協議したと明かした。ゼレンスキー氏はブルームバーグのインタビューで、「選挙期間中は政治が非常に攻撃的」になると述べつつ、トランプ大統領の強硬な圧力は中間選挙を前にした一時的な現象にすぎず、選挙後に両国関係が改善することを期待すると語った。

ワシントン/キム・ウォンチョル特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/america/1283161.html韓国語原文入力:2026-10-20 05:00
訳D.K

関連記事