ペットを飼う行為は、人間だけに観察される固有の行動なのだろうか。人間が他の種の動物をそばに置いてかわいがる行動が、霊長類の普遍的な社会本能に根ざしているとする研究結果が発表された。
英国オックスフォード大学のシリル・グリューター人類学博士らからなる国際研究チームが、霊長類が他の種の動物と結ぶ社会的相互作用を体系的に分析したところ、人間固有の文化だとみなされていた「ペットの飼育」が、霊長類で広く観察されることが明らかになった。研究結果をまとめた論文は先月、国際学術誌「霊長類(Primates)」に掲載された。
研究チームは今回の研究で、人間がペットとしてさまざまな動物を飼うことになった起源を理解するために、他の霊長類の種間相互作用を調査した。これまで、霊長類の間で異なる種同士が、遊び・運搬・毛づくろいなどの行動を示したり、完全に異なる非霊長類の動物と相互作用をしたりする様子が数多く観察されてきた。
最も有名な事例としては、500以上の手話で人間とコミュニケーションをとったゴリラ「ココ」が1984年、自ら望んでプレゼントとして受け取ったネコの「オールボール(All Ball)」をかわいがったケースが挙げられる。翌年、ネコが交通事故で死ぬと、ココは涙を流したという。イスラエルのある動物園では2017年、クロザルが自分の檻の中に入ってきたニワトリを保護する行動を示し、日本の鹿児島県にある屋久島国立公園では、ニホンザルがシカにまたがって移動する様子が観察された。
しかし、このような種間相互作用についての体系的な研究は、これまで行われていなかったと研究チームは説明している。ペットは長きにわたり研究者たちを困惑させてきた謎だったという。今回の研究には参加していない米国ウェスタン・カロライナ大学心理学科のハル・ハーツォグ名誉教授は「人間が、進化上の利害関係がまったくない他の種に資源を惜しみなく投入することは、まったく理にかなっていないようにみえる」と、米国ニューヨーク・タイムズに述べた。それでも、世界の多くの文化圏で人々はペットを飼い、深い愛情を注いでいる。ペットについての最も古い考古学的証拠は、1万4000年前のドイツの墓で、男女とイヌが一緒に発見された事例だ。ハーツォグ教授は「残念ながら、人間がどれほど前から動物をペットにしていたのかはわからない」と付け加えた。
論文の第一著者であるグリューター博士は、修士課程の学生だったとき、中国の上海動物園で観察したある場面が、今回の研究のアイデアになったと述べた。グリューター博士は「飼育スペースのなかにいたメスのテナガザルが、小さなネズミを捕まえた後、そっと手に包み、優しくなでる姿を目撃した」とし、「テナガザルはネズミを本当にていねいにかわいがっており、ネズミも手のひらで安らぎを感じているようにみえた」と振り返った。
研究チームは、霊長類が他の種の動物とどのような関係を結んでいるのかを調べるため、過去の学術研究(303件)、報道資料(58件)、霊長類学者を対象に行ったアンケート調査(66件)を通じて、種間相互作用427件を収集した。その結果、研究対象には、野生または飼育環境で生活する霊長類88種と非霊長類127種(哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、軟体動物、昆虫)が含まれた。
事例を分析したところ、他の種との相互作用は異なる霊長類種の間で最も頻繁に発生したが、親密な行動はイヌや鳥など進化的に遠く離れた分類群でもみられた。最も一般的な行動は遊びと毛づくろいで、幼い個体は主に遊びに参加し、成体のメスは毛づくろいの行動を多く示した。成体のオスは概して親密な行動をあまり示さず、時には暴力的だった。しかし、いくつかの事例では、その関係が明らかに飼育に似ていたと、研究陣は説明した。
相互作用は概して霊長類が先に始める傾向にあった。すべての相互作用において、行動の方向性が報告された219件のうち、霊長類が始めた相互作用は66%(144件)に達し、両方向の相互作用は33%(72件)、非霊長類が始めたケースは1%未満(3件)にすぎなかった。研究チームはこのような分析結果から、「世話、寛容、探索、遊びのような人間と動物の親密な関係は、これまで考えられてきた以上に、霊長類の間で広くみられる可能性がある」と説明した。
ならば、サルと類人猿はなぜ自分と血縁関係のない動物と相互作用をするのか。グリューター博士は、その動機の一部は孤独感にあるのではないかと推測した。人間が孤独を感じるときと同様に、「霊長類の親戚たち」も温かい体を持つ他の存在をなでたり、しばらく体を寄せ合ったりすることで、親密さへの欲求を満たすことができるということだ。