一般的に、現在の青年(若者)世代、あるいは20〜30代世代の主な特徴の一つとして、「能力主義」(meritocracy)の重視が挙げられる。能力主義とは、誰もが自身の努力と実力に応じて、富や名誉といった社会的報酬が与えられるべきだという理念だ。実際、能力主義は20〜30代だけでなく、全世代にわたって韓国社会で広く受け入れられている価値体系であり、より広くは、現代資本主義社会を支える中核的な理念とも言える。
しかし、2026年の韓国の青年たちが直面している現実は、能力主義が支配する社会ではなく、「相続主義」(inheritocracy)の力が強固になりつつある社会ではないだろうか。相続主義社会とは、英国の学者イライザ・フィルビー氏の定義に従えば、人生の機会が「ママ・パパ銀行」(the bank of mum and dad、子どもに有形・無形の経済的恩恵を提供する親のセーフティネット)によって決まる社会、すなわち家族の富が成功の触媒となる社会だ。厳密にいえば、現在の中高年世代でさえ、親の経済力の影響がなかったといえるだろうか。問題は、その影響力がますます大きくなり、その結果としてあらわれる人生の格差がさらに広がっているという点だろう。
教育機会の平等は、能力主義がしっかり機能するためには中核となる仕組みだが、すでに機能不全に陥って久しい。所得上位20%と下位80%の間の上位大学進学率の格差のうち、75%は学生の潜在能力ではなく「親の経済力効果」の結果であると、韓国銀行は推計した。韓国社会において学歴は職業を決定し、職業は生涯にわたる所得水準の基盤となる。
「ママ・パパ銀行」がその威力を発揮する第二の段階は、資産形成の局面だ。過去30年余りの間に数回にわたり不動産価格が階段状に急騰した結果、今やソウル・首都圏で家を購入することは、貯蓄と融資に加え、親の支援があって初めて可能となる夢となった。今年第1四半期の住宅購入資金調達計画書によると、ソウルの住宅購入に活用された贈与、相続、その他の借入(家族間の借入など)資金は2兆6330億ウォン(約2760億円)で、昨年より63.9%も増加した。最近では株も資産蓄積の主要な手段として定着した。最近、インスタグラムなどでは、株で大金を稼いだという大学生の投稿を容易に見かけることができる。学費や生活費、家賃などを稼ぐために、勉強の時間を割いてアルバイトをしなければならない大学生がいる一方で、これらすべてを親から支援してもらい、自分のアルバイト代を株式投資に充てたり、株式投資資金まで親から提供してもらっている大学生もいる。資産形成は、ライフサイクルにおいて早く始めれば始めるほど有利だ。残りの人生の間、雪だるま式に資産を増やし続けることができるからだ。結局、親による早期の贈与が重要だという意味だ。
相続主義の完結は、文字通り「相続」において成し遂げられる。現在20〜30代の人々が50〜60歳前後になる頃には、ベビーブーム世代である親が死去した後、どの程度の資産を相続できるかによって彼ら内部の格差は再び広がるだろう。
およそ2010年頃から、韓国社会では断続的に「青年世代」をめぐる議論が沸き起こってきたが、最近、「青年」が再び公論の場の前面に登場した。一つのきっかけは、6月3日の統一地方選挙での「投票用紙不足事態」だ。20〜30世代はこれに対し激しい怒りを表し、大統領は「実に貴重で尊敬に値する」と彼らを称賛した。もう一つのきっかけは、半導体の超好況とKOSPI(韓国総合株価指数)の急騰に酔いしれていた韓国社会が、サムスン電子の成果給をめぐるストライキと地方選挙における与党の(事実上の)敗北を機に、急速にその裏側、すなわち二極化の深刻化という問題に目を向け始めたことだ。そして、いわゆる「K字型経済」の下位に位置する様々な集団の中でも、青年がその代表格とされている。
20〜30世代の心を掴めなければ、2028年の総選挙、2030年の大統領選挙でも与党「共に民主党」の勝利は難しいという「不吉な」見通しが相次ぐ中、政府と与党の動きも慌ただしくなった。李在明(イ・ジェミョン)大統領は「青年」に言及することが多くなっており、「青年世代は最も大きな疎外者たちだ」とも述べた。政府は半導体税収で青年層への支援を拡大する見通しであり、与党の一部では青年を専門に担当する省庁の新設を推進するとしている。
過去10年余りの間、歴代政府が様々な青年政策を打ち出し、社会経済的状況も変化したが、青年世代内の格差は拡大してきた。その主な原因の一つが、相続主義の強化だ。政府の政策もまた、親の銀行口座の残高によって左右される青年のスタートラインを、いかにしてできるだけ縮めるかに集中すべきだ。AIの波に立ち向かえる雇用対策は基本として、金融と不動産という二つの軸にわたる資産形成支援策が必要だ。大学の授業料無償化や大学生の住居費支援も検討対象に加えるべきだ。大統領と与党の下落した支持率を回復させようとする目の前の政治的な目的ではなく、共同体の統合を脅かす亀裂の拡大を防ぎ、多くの青年の不安と苦痛を軽減するという時代的使命感が、政策設計の出発点とならなければならない。