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「卵の殻エリア」に住む「節約ヒーロー」…半導体好況の台湾、韓国も他人事ではない

登録:2026-06-24 07:40 修正:2026-06-24 11:28
台湾の現地住民と出稼ぎ労働者たちが、5月1日の国際労働節の集会で、様々な要求事項が書かれたプラカードを掲げて行進している=台北/EPA・聯合ニュース

 「台湾の景気が良いというニュースが出るたびに、通りすがりの人を捕まえて聞きたくなります。本当に良いのかと。半導体会社や工場が密集している地域は、事情が少しはマシなのでしょうか」

 台湾経済は人工知能(AI)と半導体ブームに支えられ、16年ぶりの高成長局面に入った。ところが、台北のある中小企業に勤めるチョンさんの生活は、ますます厳しくなっている。両親と同居する「パラサイトシングル」の35歳のチョンさんは、独立は無理だと語った。

 「ワンルームでも借りて生活するなら、家賃と基本的な生活費で2万5千台湾ドル(約12万7千円)はかかります」。社会人になって7年目を迎え、給料がひと月4万5千台湾ドルの彼は、結婚も、子どもを持つこともほぼ諦めた。世界最大のファウンドリ企業TSMCが牽引した「豊かな台湾」という数字の陰で、台湾の人々は高い住宅価格と低い賃金、生活費の負担に押しつぶされ、自分たちが暮らす台湾を「鬼島」(幽霊しか住めない島)と自嘲している。

 台湾の経済指標を見る限り、好況であることは明らかだ。台湾行政院主計総処が発表した資料によると、第1四半期の国内総生産(GDP)は前年同期に比べ14.55%成長した。48年ぶりの最高水準だ。台湾中央銀行は18日、今年の成長率見通しを9.45%に上方修正した。この見通しが現実になれば、台湾は2010年(10.25%)以来、16年ぶりに最も高い成長率を記録することになる。

 成長をけん引したのはAIブームだ。台湾の5月の輸出は前年同月に比べ51.7%増加し、月間ベースで歴代2位の規模を記録した。電子部品の輸出は66.9%、情報通信製品の輸出は118%に急増した。台湾の半導体および情報通信技術(ICT)産業が、世界的なAIブームの主要な恩恵を受ける地域として浮上した結果だ。

 こうした数字は、台湾市民が肌で感じる景気とは異なる。台湾の消費者信頼感指数は、今年5月基準で前月の62.47から小幅下落した62.08で、2023年1月以来の最低水準を記録した。この指数は、台湾国立中央大学の台湾経済発展研究センターが、国内景気や家計経済、雇用、物価などに対する消費者の期待を総合して算出するもので、100を下回ると悲観的な認識が優勢であることを意味する。美容サービス業を営むマオさんが感じている景気状況と変わらない。「昨年から景気が良くなるというムードはあったが、店を訪れる客は増えていない」。商売がうまくいけば店舗規模を拡大しようと考えていたが、結局断念した。

 「有名なごく一部の企業の状況が良くなったからといって、一般の人々の懐が潤うわけではないことを思い知らされた」。こうしたマオさんの言葉は、数字に裏付けられている。経済規模は急速に拡大しているが、労働者に還元される分は横ばい状態だ。国内総生産(GDP)に占める被雇用者の報酬の割合を示す労働所得分配率は改善されていない。台湾の労働所得分配率は1990年代まで50%に達していたが、その後徐々に減少し、2024年には43%まで低下した。台湾の2025年の月平均賃金は6万4千台湾ドルで、韓国の約73%にとどまっている。昨年、1人当たりの国民総所得(GNI)が韓国を上回り4万ドルを突破したが、労働者の賃金事情は韓国よりも劣悪だ。

 産業間の格差も次第に広がっている。TSMCやメディアテック、フォックスコンといった先端企業の従事者はAIブームの恩恵を受けているが、サービス業や伝統的な製造業、非正規・低賃金の若年層は、高成長の恩恵から遠ざかっている。ある産業や階層は急成長する一方で、別の産業や階層は停滞したり、さらに下へと押しやられたりする構造だ。台湾内外で「K字型経済」という言葉が使われているのもそのためだ。台湾中央銀行はこうした指摘に対し、「伝統産業が悪いのではなく、電子産業の成長勢いが過度に強いだけだ」という趣旨で説明した。だが、この説明は経済全体の平均値と市民の肌で感じる景気との間に生じた隔たりを十分に説明できない。

 この乖離が最も鮮明に表れているのが住宅だ。台湾の若者たちの間では、「卵の殻エリア(蛋殼区)」という言葉が広く使われている。台北の都心を卵の黄身、その周辺を白身に例えた場合、住宅費を払えなくなった若者たちが、さらに外側の郊外地域、すなわち卵の殻に当たる地域へと押し出されているという意味だ。家を買うどころか、家賃や通勤費を賄うだけでも生活が苦しいという声が高まっている。首都・台北の中位所得に対する住宅価格比率は16倍で、英国のロンドンや米国のニューヨークなどよりも高い。

 若者たちのライフスタイルも、こうした現実を反映している。最近、台湾では「節約ヒーロー(乞丐超人)」という言葉が注目を集めた。コンビニのアプリで、賞味期限が迫り値引きされたお弁当や生鮮食品の在庫を確認した後、決まった時間に店舗へ駆けつけて商品を購入する「若者の節約族」を指す表現だ。出費を抑えるための合理的な消費という評価もあるが、国家経済が記録的な好況にある中で、若者たちが値引きシールが貼られたお弁当を求めて走り回る姿は、成長と日常の乖離を象徴的に示している。

 厳しい生活は出生率の低下につながる。出版社を経営し、結婚5年目のリンさん(42)は、子どもを産まないつもりだ。彼女は「大学の同級生5人のうち3人が結婚したが、子どもがいるのは1人だけ」と語った。昨年の台湾の出生者数は10万7812人で、10年連続で最低値を記録した。合計特殊出生率(生殖可能年齢の女性1人が生涯に産むと予想される子どもの数)は、過去最低の0.695人となった。台湾の頼清徳総統は先月28日、少子化による人口減少問題を解決するため、3800億台湾ドルを投入する「台湾人口対策新戦略」を発表した。頼総統は、育児を社会・企業・国家が共同で支援する「公共支援型育児」システムへと転換すると述べた。リンさんは、こうした対策が講じられても考えを変えるつもりはないと語った。「社会の支援拡大が必要なことは事実だが、結局、カギとなるのは各家庭の経済的安定だ」と話した。

台湾にあるTSMCの工場にロゴが掲げられている様子/ロイター・聯合ニュース

 台湾は半導体産業において強力な競争力を備えているが、同時に産業間、地域間、職種間の格差が拡大している。台湾の独立系研究機関である公力研究社は報告書で、「2010年から2019年まで企業の営業利益は年平均約4%の成長率を記録し、労働賃金の上昇率と同水準を示したが、2020年から2024年までの営業利益は7%へと急増した一方で、労働賃金の上昇率は約4%にとどまった」と指摘した。さらに、「こうした格差のため、多くの労働者、特に非電子産業の従事者は、急速な経済成長の恩恵を享受しにくい」と指摘した。

 台湾社会の悩みは、「半導体産業への過度な依存が危険」という点にとどまらない。成長の果実を、いかにして住居の安定や賃金上昇などに結びつけるかという悩みを抱えている。輸出大企業や先端産業が稼ぎ出した利益が、家計全体や地域社会に波及しなければ、高成長はかえって格差を拡大させる恐れがある。台湾政府もこれを意識し、現金給付、賃金引き上げ、若者の住宅支援、社会住宅の拡大などを進めてきた。だが、一時的な支援事業だけでは構造的な格差を緩和することは難しく、「豊かな台湾、貧しい台湾人」という逆説が続く可能性が高い。

 韓国にとっても他人事ではない悩みだ。韓国もまた、半導体輸出の好況が成長率と株式市場を押し上げる一方で、若年層は高い住宅価格や不安定な雇用、低い実質所得を訴えている。台湾は韓国より先にAI・半導体の好況の急流に乗り出したが、同時に、成長の果実が社会全体に行き届かなかった場合、どのような亀裂が生じるかを示す「先に訪れた未来」でもある。

北京/イ・ジョンヨン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/asiapacific/1264797.html韓国語原文入力: 2026-06-23 14:06
訳H.J

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