ドナルド・トランプ大統領が踏み切ったイラン攻撃が、米国の外交的な失策を超えて、全世界の核不拡散体制崩壊の始まりとなる可能性があるとする警告が出てきた。米マサチューセッツ工科大学(MIT)安全保障研究計画(SSP)専任研究員のジェームズ・ウォルシュ博士は7日(現地時間)、ハンギョレのビデオインタビューで「空爆で建物を壊すことはできても、イランの科学者たちの頭の中にある核兵器の製造知識を爆撃することはできない」として、「核開発の意志をくじくどころか、むしろ刺激することになり、北朝鮮には『米国を信じるな』という明確なシグナルを送ることになるだろう」と分析した。ウォルシュ博士は、イランと北朝鮮を訪問し、当局者と核問題を直接協議した経験を持つ数少ない米国人の一人だ。
ウォルシュ博士は、今回の空爆の背景には合理的な政策判断はないと分析した。「トランプは感情と誤った情報に基づいて判断を下している。今回の空爆は、単に彼がイランに対して怒りをあらわにしているにすぎない」。特に、トランプ大統領がイランに「無条件降伏」を要求したことについては「戦術的に可能な最悪の行動」だと指摘した。「危機の状況においては、相手が体面を保ちながら抜け出せる出口を作らなければならない」として、「誇り高きペルシャ民族の国であり、アラブ諸国のなかの非アラブの少数派国家であるイランに無条件降伏を要求するのは、よりいっそう激しく戦わせるだけだ」と述べた。さらに、「これが政策的な論理に基づく決定だったとしたら、このような話を公にするはずがない。トランプという個人の性向が生んだ惨事」だと指摘した。
空爆の効果についても懐疑的だった。ウォルシュ博士は「核開発計画は空爆では破壊できない」として、「むしろ、イランの核兵器開発の決意をさらに強めることになるだろう」と警告した。今回の空爆がイラン国内の一部の核施設を物理的に破壊した可能性は認めながらも、これがただちにイランの「核兵器開発能力の除去」を意味することにはならないと強調した。「空爆で人々が死亡して建物が破壊され、一部の濃縮施設も被害を受けたが、核兵器の開発能力自体が消えたわけではない。爆撃で遠心分離機を作る知識を人々の頭の中から消し去ることはできない。彼らは20年間にわたって取り組み、数万個の遠心分離機を作った。すべての人材が失われたわけでもない」
また、イランが米国の攻撃を十分に予想して備えていた点を挙げ、核開発計画の早期再建の可能性は小さくないと予想した。「イランは愚かではない。爆撃を予想していたならば、完成された遠心分離機を攻撃されやすい場所にそのまま置いておかず、部品単位で分解して分散させておくだろう」と分析。広大な領土を有するイランが部品を全国各地に隠した場合、これをすべて探して爆撃するのは不可能だという意味だ。「もし、イランがフォルドから60%の濃縮ウランを回収できるとか、あるいは別の場所に保管しているという場合、これを90%まで濃縮するにはそれほど時間は要しないだろう」と予想した。
ウォルシュ博士は、今回の戦争の余波が、イランを超えて全世界的な核不拡散体制の危機に発展する可能性にも懸念を示した。「この傾向が続く場合、第2次トランプ政権の発足は、核不拡散体制の危機の始まりとして記録されることになるだろう」。特に、北朝鮮問題に関連して「今回の空爆は、北朝鮮に非核化合意を結んではならない理由をもう一つ増やしたことになるだろう」と指摘した。潜在的な核能力の維持にとどめていたイランが攻撃されたのをみて、北朝鮮は核兵器を最後まで放棄せず、米国への不信感に基づく基本方針を固めるという意味だ。
さらに、「イランの政権交替がすなわち核開発阻止」という認識についても、懐疑的な立場を示した。「イランの核開発計画は、イスラム共和国に限った政策ではなく、1979年のイスラム革命前の親米王政であるパーレビ王朝時代にも存在した」として、「指導者が変わるといって、戦略的環境が変わるわけではない」と説明。「イスラエルや米国が軍事攻撃を加え続ける場合、イランにいかなる政権が生まれたとしても、核兵器で自らを守ろうとするだろう」と述べた。