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「ビー・グッド」と米国民主主義【寄稿】

登録:2026-01-16 01:24 修正:2026-01-17 07:49
11日(現地時間)、第83回ゴールデングローブ賞授賞式に出席したマーク・ラファロ(左)と、ミュージカル・コメディ部門の主演女優賞を受賞した俳優のジーン・スマート。2人とも「ビー・グッド」と記されたバッジを身につけている/AP・聯合ニュース

 先日、米ロサンゼルスで第83回ゴールデングローブ賞授賞式が開催された。「KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ」が2冠を獲得したというニュース以外にも、注目すべきことがある。それは、映画「アベンジャーズ」シリーズでハルク役を演じたマーク・ラファロのタキシードに、そしてこの日、主演女優賞を受賞したジーン・スマートのドレスにも、小さなバッジがつけられていたこと。白地に黒い文字で「ビー・グッド(be good)」という2つの単語が記されただけのバッジだ。いくつかの韓国メディアが「善良に生きよう」と翻訳して報じている。間違いではないが適切ではない。同授賞式でポップスターのアリアナ・グランデは「アイス・アウト(ICE OUT)」と記されたバッジを身につけていた。この「ビー・グッド」とは、7日にミネソタ州ミネアポリスで移民関税執行局(ICE)の要員に銃で撃たれて死亡したレニー・ニコル・グッドさんを追悼するとともに、王のように君臨して不当な公権力を行使するトランプに抵抗するよう呼びかけるスローガンだ。

 グッドさんは米国の市民権者で、同性結婚したレズビアンだった。配偶者と共に息子を学校に送った帰りだった。道路に車を止めた時、覆面をかぶって銃を手にした取り締まり要員たちが車に近づいてきた。短い会話の後、車を回そうとしただけだったにもかかわらず、突然3発の銃声が鳴り響いた。驚いたことに、要員たちは血を流すグッドさんに応急処置を一切しなかった。道を行く医師が駆けつけてきて助けようとしたが、それを止めるだけだった。結局グッドさんは死亡し、数時間もたたないうちに、記者団とインタビュー中だったトランプ大統領は正当防衛だと主張した。その時はまだ、画質の悪い現場の映像がいくつかインターネットに流れていただけだった。それだけではない。バンス副大統領は何の根拠もなくグッドさんを左翼テロリストと規定し、被害者を非難した。しかしグッドさんが「大丈夫です。あなたは私を怒らせていません」と笑みを浮かべながら言う最後の姿が、発砲したジョナサン・ロスの携帯電話に残されていた。つまり、ロスは携帯電話を片手で持って撮影しながら、もう一方の手で銃を握っていのだ。これが凶悪なテロリストに対する姿勢だと言えるだろうか。言い換えれば、公務員が非武装の市民に対して、警告射撃ではなく、いきなり顔に向かって発砲したのだ。決して正当防衛にも過剰防衛にもなりえない。相手を蔑視した処罰に近い。ロスの映像には、発砲後の口汚く女性蔑視の言葉を並べ立てる声がありのままに記録されている。

 事件現場には、グッドさんの配偶者のレベッカ・グッドさんもいた。トランプは当然なすべき遺族への謝罪はせず、レベッカさんのことを「友人」と言った。同性結婚は認めないという意図的な言葉の選択だ。米司法省は発砲したロスを起訴しないことを決定。逆にレニーさんとレベッカさんが左翼かどうかを調べるという。このような不当な決定に抗議して、司法省公民権局の4人の検事が辞任した。米国では今、全域でグッドさんを追悼し、トランプ政権に抵抗する市民のデモが徐々に広がっている。

 まさにこれだ。善良であるということは、力のある者に順応することではない。隣人の肌の色、出身国、性的指向などに関係なく、優しく親切に接し合うということだ。そして、このような価値を守るために最後まで抵抗し、闘わなければならないということだ。善良な人間になろうというスローガンが米国の民主主義を守る力になることを祈る。「私たちの誰もが愛する人々のもとに安全に帰れる世の中を作るために、共に力を尽くします」。レベッカ・グッドさんが配偶者を失った大きな悲しみの中でそう語ったことを思いながら。

//ハンギョレ新聞社

ハン・チェユン|韓国性的マイノリティー文化人権センター活動家 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1239808.html韓国語原文入力:2026-01-15 05:00
訳D.K

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