天文学的な財産分与額で注目されていたチェ・テウォン-ノ・ソヨン離婚訴訟の結論が、最高裁でまたも変更された。控訴審では「盧泰愚(ノ・テウ)秘密資金の財産への寄与」を認め、アートセンターナビのノ・ソヨン館長に対する1兆ウォン以上の分与を命じる判決が下されたが、最高裁は違法資金の寄与を認めてはならないとして異なる判断を下した。
最高裁1部(主審:ソ・ギョンファン最高裁判事)は16日のチェ会長とノ館長の離婚訴訟の上告審で、ノ館長に対する1兆3808億ウォン(約1470億円)の財産分与をチェ会長に命じた原審を破棄し、事件をソウル高裁に差し戻した。
2017年7月にチェ会長が離婚調停を申し立てたことで始まった今回の訴訟の最大の争点は、「盧泰愚秘密資金がチェ会長の財産形成に寄与したかどうか」だった。一審では、財産分与額が665億ウォン、慰謝料が1億ウォンと算定された。しかし控訴審の過程でノ館長側は「盧泰愚秘密資金の流入」を主張。二審の判断は財産分与額を1兆3808億ウォン、慰謝料を20億ウォンへと大きく引き上げるものだった。
天文学的な財産分与額は、「盧泰愚元大統領が1991年に先代のチェ・ジョンヒョン会長に渡した300億ウォンの秘密資金が夫婦の共同財産のもととなった」との主張を、二審がすべて認めたことで算定されたもの。二審は「チェ・ジョンヒョン会長が太平洋証券を買収する過程、移動通信事業への進出過程で、盧泰愚大統領が盾の役割」を果たしたとも判断した。
政経癒着の典型的な事例で、2人の婚姻後に秘密資金が流入し、SKグループの成長のもととなったという判断だった。チェ会長がT&C財団のキム・ヒヨン理事長との不正行為を続けていたことは、慰謝料増額の根拠になった。二審は「婚姻の純潔と一夫一婦制をまったく尊重しないあり方」、「心より謝罪したり誤りを認めたりしていない」として、チェ会長を強く批判してもいた。
最高裁はこの日、20億ウォンの慰謝料については上告を棄却し、確定した。しかし、財産分与額を1兆3000億ウォンと算定した控訴審の論理は誤りだと指摘した。最高裁はノ館長側の主張どおりに「盧泰愚秘密資金」がSKグループの拡大に寄与したといえど、それは返還を請求できない不法原因給付(民法746条)だと判断した。
最高裁は「被告(ノ館長)の父親である盧泰愚が1991年ごろに原告(チェ会長)の父親であるチェ・ジョンヒョンに300億ウォンほどの金銭を支援したと考えたとしても、その金の出所は盧泰愚が大統領在職中に受領した賄賂だと考えられる」として、「賄賂の一部で巨額の金を姻戚、あるいは実子の夫婦に支援したうえで、それに関して口を閉ざしたことにより、それに関する国家の資金の追跡と追徴を不可能にしたという盧泰愚による行為は、善良な風俗その他の社会秩序に反しているうえ、反社会性、反倫理性、反道徳性、反道徳性が顕著なため、法の保護の領域の外にある」と判断した。
最高裁はまた「被告が盧泰愚の支援した金の返還を求めるのではなく、(離婚訴訟の)財産分与での寄与だと主張しているとしても、違法性は絶縁され得ない」と述べた。
婚姻関係が破綻する前にチェ会長がすでに処分していた財産を分与の対象と認めた控訴審の判断についても、誤りだと判断した。チェ会長は先に、弟のチェ・ジェウォンSK首席副会長、親戚、関連財団に927億7600万ウォン相当のSKグループ株を贈与しているが、最高裁は「経営権の確保や経営者としての円滑な経済活動のためのもので、究極的に夫婦の共同財産の形成・維持と関連しているため、すでに贈与していて保有していない株を分与対象とすることはできない」と判断した。最高裁は今回の判決について、「社会的妥当性のない行為をした者は法的に保護しないという民法の趣旨を再確認したという意義がある」と説明した。
チェ会長はこの日午後6時ごろ、米国出張のために訪れたソウル江西区(カンソグ)の金浦ビジネス航空センターで記者団に対し、「裁判所の判断については、私にはもはや言うべきことはない」と述べた。チェ会長はソフトバンクの孫正義会長の招きで訪米の途につき、米国のトランプ大統領の別荘であるフロリダ州パームビーチのマール・ア・ラゴ・リゾートを訪問する予定となっている。チェ会長は「難しい経済懸案がかなり多い」として、「懸命に最善を尽くして韓国経済に寄与できるよう頑張る」と付け加えた。