米移民関税執行局(ICE)は今年、移民者の収容施設を2倍に増やす。また、移民取り締まりに投入する人員1万人を米国全域から募集している。
ワシントン・ポストが15日に入手した内部のロードマップ文書によると、ICEは来年1月までに移民の拘禁施設の収容規模を5万人余り(2025年1月現在)台から最大10万7000人にまで拡大するとする内部計画を進めている。年内に少なくとも2カ所の家族拘禁センターを新設することを含め、全国的に125カ所の施設を新設または拡張する予定だ。1000人以上を収容できる超大型収容施設は、今年末までに49カ所に増える。このうちの相当数が「幕舎型」、すなわち大型テントでできた構造物で、数週間で設置できるが、上水道や冷暖房などの基本設備が足りず、劣悪な環境に対する懸念が示されている。軍事基地の一部区域の用途変更や、閉鎖された刑務所の再利用などのケースもある。
トランプ政権は収容規模を2倍に増やすと公言してきたが、どのように増やしていくかの具体的なロードマップが明らかになったのは今回が初めて。特に、児童を一緒に収容する家族拘禁施設が大幅に増える見通しだ。テキサス州ブラウンズビルに最大3500人を収容できる新規施設が建設される予定であり、これは約20年ぶりの家族拘禁施設の最大記録更新となるものとみられる。これまではテキサス州にある約2000人規模の家族拘禁センターが最大だった。人権団体は児童収容に反対し、「子どもを含む家族拘禁は本質的に非人道的だ」と指摘する。
私設刑務所(民間矯正施設)の運営会社との契約規模も拡大。トランプ政権は先月、議会が承認した450億ドル規模の移民取り締まり予算を基盤に、民間矯正施設の運営会社との大規模な契約を通じて収容施設を増やしている。年間5億ドル以上の規模の新規契約を、「ジオグループ」は今年一年で13件、「コアシビック」は12件獲得するものと予想され、両社とも移民者拘禁関連の総売上が2倍以上に増える見通しだとワシントン・ポストは報じた。
ICEは一方、強硬な不法移民取り締まり政策に対する社会的反発によって取り締まり要員の人気が落ちたことから、入社ボーナス・借金返済免除などの「褒美」を掲げた。新入社員には最大5万ドルの入社ボーナスを支給し、勤続3年以上の職員には毎年1万~6万ドル規模の学資金貸付の返済または免除を支援することにした。また、大卒の学歴要件と年齢制限をなくした。退職者にも再入社を勧めている。25%の追加手当て、年金拡大などの条件も掲げた。提示した取り締まり要員の年俸は5万~10万ドル、捜査官は6万~14万4千ドル台。ウォール・ストリート・ジャーナルは、米国の新人警察官の初任給が6万1000~2000ドルであることと比べれば「入社ボーナスや学資金貸付免除のメリットまで考慮すると、ICEの新規採用は警察より破格に良い条件」だと伝えた。
世論戦も繰り広げている。1990年代のドラマ「スーパーマン」の主演で有名な俳優ディーン・ケインがICEの一日「名誉取締官」に任命され、宣伝に加勢した。募集ポスターには「国を守れ」、「愛国者募集」などの第2次世界大戦時代に見られたスローガンまで登場した。現在、ICEの職員は2万1000人ほどだが、1万人を追加募集する予定だ。