米国のトランプ政権が半導体を標的とした「爆弾関税」を予告したことで、韓国の政府と企業で緊張が改めて高まっている。情報技術協定(ITA)に則り、現在は韓米を含む協定加盟国同士の無関税が適用されている半導体製品に対し、自動車(韓国製は15%)はもちろん、鉄鋼・アルミニウム(50%)より高い品目別関税を課すという構想だからだ。業界からは、米国が国内に半導体産業を誘致するために、分業システムを担ってきた国々にムチをちらつかせている、との解釈が示されている。
トランプ大統領は6日(現地時間)、ホワイトハウスの執務室で行われたアップルの対米設備投資計画の発表イベントで、「半導体とチップに対して約100%の関税を課す予定」だとして、「米国内で製造しているか、確実に米国内での生産を約束した企業には適用しない」と述べた。続けて「工場を建てると言っておきながら実際には建てなかった場合は、その時に追加関税を課す」と補足した。トランプ大統領は何度も半導体関税を予告してきたが、関税率を公開したのは初めて。
トランプ大統領のこの日の発言は、アップルが今後4年間で米国に1千億ドルを追加投資すると発表した直後に飛び出した。関税免除を受けるために要求される米国内の製造比率や具体的な条件は公開されていない。
半導体は韓国の対米輸出品目の中で、自動車に次いで2番目に規模が大きい。韓国貿易協会によると、昨年の韓国の米国に対する半導体輸出額は107億ドル。先に韓国政府は、米国との貿易交渉で半導体と医薬品は品目別関税で最恵国待遇(MFN)の約束を取り付けたと明らかにしていた。米国は先に、欧州連合(EU)と半導体に15%の品目関税のみを課すことで合意しているため、韓国にも15%が適用される可能性がある。半導体の関税政策は来週に正式に発表されるという。
業界では、トランプ大統領の関税圧力は半導体サプライチェーンの国内化のための布石だと解釈している。現在の世界の半導体サプライチェーンは、米国企業が付加価値の高い設計を担い、韓国や台湾などの東アジア諸国が製造と生産を担うという分業構造となっている。米国の半導体製造力を高めるために、前任のバイデン政権が大規模な補助金という「ニンジン」をぶら下げたとすれば、トランプ政権は関税という「ムチ」をちらつかせているわけだ。
米国の半導体関税が韓国企業に及ぼす影響は、決して小さくない。半導体は自動車に次いで対米輸出額が大きい第2位の品目だ。昨年、国内で生産された半導体全体のうち、米国に直接購入された半導体の輸出額の割合は7.5%で、絶対的な割合は高くなく、中国(32.8%)、香港(18.4%)、台湾(15.2%)、ベトナム(12.7%)に続く5位だ。
しかし、半導体に関税を課すことで直ちに対米直接輸出品の価格が跳ね上がるうえ、韓国製の半導体を買って再加工して米国に輸出している主要国の企業が関税の負担を口実に韓国企業に価格引き下げを迫ってくる可能性も排除できない。企業の立場からすると、関税を避けるために、投資から稼動まで少なくとも数年かかる米国現地での半導体工場の建設を考えなければならなくなる。現在、アップルだけでなく、複数の半導体メーカーが米国内での生産拡大を約束している。台湾のTSMCは1650億ドル規模の米国内投資を約束しており、NVIDIAは今後4年間で人工知能(AI)インフラに5000億ドルを支出する計画だ。
韓国政府は、米国が約束した最恵国待遇に期待をかけている。韓米関税交渉で、半導体や医薬品などの品目別関税で他国に比べて「不利でない待遇」(最恵国待遇)を受けることで合意しただけに、EUに提示された15%という関税率を超えることはないだろうというのだ。産業通商資源部のヨ・ハング通商交渉本部長はこの日のラジオ番組のインタビューで、「最恵国の半導体の関税率が15%に決まれば、韓国にも15%が適用されるだろう」とし、「今後(半導体の品目別関税が)100%になろうが200%になろうが関係ない」と述べた。ただし、トランプ大統領の即興的な意思決定のせいで依然として不確実性があるとの懸念も強い。政府の関係者は「具体的に何をどうするつもりなのかは、今後公開される行政命令を見なければならないと思う」と伝えた。
業界の一部には、半導体に対する爆弾関税が現実のものとなることはほぼないという見方もある。半導体はスマートフォン、自動車、電子製品などに必須の「産業のコメ」であり、AI事業に注力する米国のビッグテック(巨大技術企業)が最大の消費者であるだけに、高率の関税は米国経済にとって直接の負担になる可能性が高いからだ。また、微細な部品である半導体は製造、設計、パッケージングなどの様々な工程を経て最終商品として完成するため、一律に関税が課されても打撃はそれほどでもないという見解も示されている。
例えば、SKハイニックスが国内で生産した高帯域幅メモリー(HBM)は、台湾のTSMCが製造するNVIDIAのAI加速器パッケージに使われており、メキシコのデータセンターのサーバのメーカーの加工を経て最終的に米国に輸出されるという。単一の関税を課すのが難しいほど複雑な分業工程を経ているわけだ。
産業研究院のキム・ヤンペン専門研究員は、「米国のメモリー半導体企業であるマイクロンも米国現地の工場ではチップを生産していないため、半導体関税で韓国のみが競争力が落ちたり不利な状況になったりするわけではない」としつつも、「対米輸出企業が関税の負担を転嫁して韓国の部品メーカーなどに価格引き下げを要求するとか、市場全体が萎縮するなどの影響は生じうる」との見通しを示した。