尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領の妻のキム・ゴンヒ氏が6日、ミン・ジュンギ特別検察官(特検)チームに出頭し、フォトライン(記者が取材対象者から一定の距離を置いて取材するよう設定した境界線)の前に立った。これまで多くの疑惑が持たれ、多くの犯罪容疑がかけられていたにもかかわらず、まともな調査さえされず、治外法権として君臨してきた聖域が崩れ去る、象徴的な場面だった。特検は迅速かつ厳しい調査によって、法の下の平等を立証すべきだ。
キム氏はこの日、カメラの放列の前で「国民のみなさまに私のように何でもない人間がご心配をおかけして、心より申し訳なく思う。捜査をしっかり受けて出てくる」と低姿勢を示した。しかし、この言葉をそのまま信じる国民は多くはないだろう。これまでキム氏は、世論の批判が強い時には頭を下げたかと思えば、自分がいつそんなことをしたのかというように一切無視するという態度を繰り返してきた。2022年の大統領選挙を前に自身の論文盗用や経歴詐称などが批判にさらされた際には、記者会見をおこなって頭を下げ、「夫が大統領になっても妻の役割を務めるにとどめる」と約束したが、就任式前から与党の候補公認に介入するなど、国政を壟断してきたことが明らかになってもいる。
キム氏は何ら悔いることなくうそを繰り返してきた。うそを隠すために夫を通じて国家機関を総動員し、国の綱紀を回復が困難なほど傷つけた。その代価として検察は解体を目前にしており、監査院や国民権益委員会などのその他の権力監視機関も不信の泥沼でもがいている。法治が生きているという国民の信頼も同時に崩壊した。
今回の危機さえ免れれば済むという臨機応変は、もはや通用しないだろう。キム氏のうそを覆い隠したり合理化したりしていた権力は消え去った。キム氏のこの日の謝罪がうそでないことが認められるためには、特検の調査で事実通りに答えなければならない。しかし、いわゆる「NATOネックレス」と呼ばれるヴァンクリーフのダイヤモンドのネックレスに関する釈明だけでも、言っていることがすでに5、6回変わるなど、依然としてうそで切り抜けようとしているようにみえる。病気を口実に拘束を免れようとするかのように入院したり、車椅子に乗って病院を後にし、何の問題もなく歩いて車に乗る様子が撮影されたりもしている。どうしてこうも一貫して欺瞞(ぎまん)的なのか。
キム・ゴンヒ特検法に示されている犯罪容疑以外にも、余罪が芋づる式に出てきているが、事実が立証されれば一つひとつがすべて重刑を免れがたい犯罪だ。一人の人間の犯罪リストがこのように史上類を見ないほど長くなったのは、長きにわたって法曹権力の庇護(ひご)の下で一度も処罰されず、うそにうそを積み重ねてきたからだ。尹錫悦-キム・ゴンヒ夫妻によって破壊された国を再建する唯一の道は、徹底した調査と適切な処罰だ。