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【社説】「内乱代行」の大統領選出馬、「12・3内乱」はまだ終わっていない

登録:2025-05-03 06:35 修正:2025-05-03 09:15
ハン・ドクス前首相が2日午前、ソウル汝矣島の国会疎通館で、大統領選挙出馬宣言を終え取材陣のインタビューに答えている=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

 ハン・ドクス前首相が6月3日に行われる大統領選挙への出馬を宣言した。ハン前首相の出馬には名目がなく日和見主義で無責任な選択だと国民の多数が考えているにもかかわらず、ハン前首相は「前に進まなければならない」と述べ、ついに大統領選挙に飛び込んだ。内乱の終結と民主主義の回復、国家の正常化を望む国民の念願に真っ向から挑戦する行為だ。

 ハン前首相は2日、国会で記者会見を開き、(就任後)即時改憲と3年後の退任▽通商問題の解決▽国民統合・弱者との同行を約束し、大統領選挙への出馬を宣言した。ハン前首相は、大統領と国会が力を分かち合えるよう、就任直後に改憲を進めると述べた。また、通商交渉本部長、経済副首相、駐米大使、首相などを務めた経歴を挙げて、自身が米国との通商問題を解決するのに適任者だと主張した。

 しかし、このような約束は出馬の名目にはならない。ハン前首相の出馬は、内乱の克服と新時代の幕開けを望む国民に対する冒涜だ。ハン前首相は違憲・違法な非常戒厳宣言で罷免された尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領とこの3年間国政を運営してきた共同責任者だ。ハン前首相は戒厳宣言を職をかけて阻止せず、大統領権限代行として憲法裁判官3人の任命を拒否し、尹錫悦弾劾審判と憲政秩序の回復を積極的に妨害した。尹前大統領の罷免後には「権限代行の憲法機関任命権行使は控えるべきだ」という自身の言葉まで覆し、大統領任命枠の憲法裁判官候補2人を指名し、内乱勢力の地位固めを試みた。ハン前首相に付けられた「内乱代行」のレッテルは決して大げさではない。

 ハン前首相は「現状況の収拾が最後の任務」だと言っていたにもかかわらず、公正な大統領選挙管理を含む国政管理の責務を投げ捨て、自らプレイヤーとなった。ハン前首相は出馬説に曖昧な態度を示し、国政混乱の震源地となった。成果として掲げる米国との通商外交さえも、何が成果なのかは不明で、むしろ大統領選挙用に活用しようとしたのではという疑惑が持ち上がっている。大統領権限代行のポストを活用し、事実上官権選挙を行ったという声まであがっている。ハン前首相は「国益の最前線である通商外交まで政争の素材にする現実を到底納得できない」と述べたが、その「政争」を招いたのはまさにハン前首相自身だ。

 このような人物の大統領選出馬をめぐり、国民の10人中7人が「不適切だ」と答えており、与党「国民の力」の内部からも「ハン・ドクスの出馬は尹錫悦の出馬に他ならない」という批判が出たのは当然だ。にもかかわらず、ハン前首相はまともな謝罪すらせず、出馬を強行した。

 尹前大統領の憲政破壊を延長しようとした彼が、今となって改憲を主張するのは、出馬を合理化するための浅はかな論理にすぎない。また、現政局の混乱の原因が両極端の衝突にあるかのようにごまかし、「統合のリーダー」として自分のイメージを浮き彫りにしようとした。これは、尹前大統領の非常戒厳の暴挙によって行われる早期大統領選挙の基本的な性格をあいまいにし、自分の責任を隠そうとする行動だ。

 ハン前首相は「首相としてはできなかったことを大統領の力で必ずやり遂げる」とし、「私の言葉ではなく、私が生きてきた人生を見てほしい」と訴えた。だが、国民がいま見ているのは「エリート官僚の無責任と日和見主義」の決定版だ。ハン前首相は現在、内乱容疑で捜査を受けている被疑者でもあり、「追及を免れるための出馬ではないか」という疑念を抱かせている。

 ハン前首相の前途は順調ではないだろう。3日に決定される「国民の力」の候補との一本化は、ハン前首相の存在感と政治力が試される初関門になるだろう。何よりも最も冷静な試験台は国民の選択だ。親尹錫悦派が後押ししたハン前首相の出馬は、内乱勢力の生命延長と全面復帰の試みといえる。「12・3内乱」はまだ終わっていない。ハン前首相はこれを明確に認識している国民の厳しい審判を受け入れなければならない。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/1195592.html韓国語原文入力: 2025-05-02 18:34
訳H.J

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