尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が、先の大統領選挙で(政治ブローカーの)ミョン・テギュン氏に世論調査などの支援を受けた見返りに、キム・ヨンソン前議員に公認を与えたという疑惑が次第に明らかになっている。これと関連し、(尹大統領夫人の)キム・ゴンヒ女史が電話で話した肉声が公開され、この事件を捜査した昌原(チャンウォン)地検の検事たちがキム女史捜査の必要性を摘示した報告書に連署した事実も明らかになった。にもかかわらず、検察の捜査は遅々として進まない。ドイツモーターズ株価操作事件の捜査で見られた「キム女史庇護」を繰り返すつもりなのか。
時事週刊誌「時事IN」が24日公開した録音ファイルには、尹大統領夫妻がキム前議員の公認に介入した情況がはっきりと含まれている。尹大統領は2022年5月9日の通話で、キム前議員の公認を求めるミョン氏に対し、「とにかく(ユン)サンヒョンにもう一度言う」と語った。約40分後にはキム女史がミョン氏に電話して「大統領(当時は就任前)がいま電話したが、大統領の名前を出さずに『このまま進めてくれ』と言った」と語った。 尹大統領が公認管理委員長だった「国民の力」のユン・サンヒョン議員にキム前議員を公認するよう圧力を加えた事実が明らかになった通話内容だ。
大統領選当時、尹大統領に有利な世論調査をミョン氏が操作した過程にキム夫人が介入していたという疑惑も深まっている。昌原地検捜査チームは昨年11月13日、「世論調査会社『PNR』に対する家宅捜索の必要性」という捜査報告書を作成したが、同報告書は「キム女史が世論調査を単なる参考用として提供されたのではなく、尹錫悦候補に有利な世論調査をミョン氏に要請したのではないかと疑うだけの情況がある」と指摘した。異例に検事8人がこの報告書に連署した事実も確認された。検察が確保した証拠に照らしてみると、キム女史に対する捜査の必要性がはっきりしているという意見を示したものといえる。
にもかかわらず、検察はその後3カ月が過ぎても捜査を進めていない。昨年、ドイツモーターズの株価操作事件で容疑が明確なキム女史について、名ばかりの取り調べを行った末に、嫌疑なしの処分にした検察は、今回も同じ屈辱を自ら買って出た。大統領とその夫人が関わっている事件なら、犯罪容疑にも目をつぶり、ただ時間稼ぎをしようとする卑怯な振る舞いをいつまで繰り返すつもりなのか。キム女史は民間人にもかかわらず、盗聴防止機能付き電話(秘話フォン)を使い、12・3非常戒厳前日に国家情報院長に携帯メールを送るなど、内乱事態にもかかわったのではないかという疑惑が持ち上がっている。検察が厳正な捜査の意志を示さないなら、特検を通じて必ずすべての疑惑を明らかにしなければならない。