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焦土化したガザ地区、15カ月ぶりに平和を取り戻したが…「虐殺、深く刻まれている」

登録:2025-01-17 06:27 修正:2025-01-17 09:10
イスラエルとパレスチナのイスラム武装組織ハマスの間の休戦交渉が妥結したというニュースが伝えられた15日(現地時間)、パレスチナの人々が喜びを示している=ロイター・聯合ニュース

 ガザ地区の全てを破壊した15カ月間にわたるイスラエルとイスラム組織ハマスのガザ戦争はひとまず止まるものとみられる。しかし、ガザの住民とイスラエル人の暮らしに平和が訪れるかどうか、未来は依然として不安な状態だ。

 イスラエルのメディア「タイムズ・オブ・イスラエル」などは15日(現地時間)、米国、エジプト、カタールの仲裁でイスラエルとハマスが3段階の休戦に合意し、休戦は19日に始まると、イスラエル当局者の話などを引用して報道した。イスラエル内閣は16日午前、閣議を開き、休戦案の承認関連表決を進める予定だったが、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相室はハマスが合意の一部を破棄したという理由を挙げて、閣議の招集はひとまず延期した。べザレル・スモトリッチ財務相など極右派の閣僚たちの反対が影響を及ぼしたという報道も出た。

 今回の休戦案は、段階的な履行を骨子としている。第1段階では42日(6週間)にわたり、イスラエル軍の一部が撤退し、双方の人質と捕虜の交換が行われる。ハマスはガザ地区に抑留中の人質のうち、女性や子ども、老人、負傷者など33人をまず解放する。

 第2段階では、ハマスがイスラエル兵士を含め残りの人質を解放する。第3段階では、死亡した人質の遺体まで全てイスラエルに送還する。

 ところが、平和を保障するにはまだ早い。3段階で構成された段階的休戦案のうち、最終合意に達したのは1段階であり、16日後に2段階以降の交渉を再開する。イタマル・ベングビール国家安保長官のようなイスラエルの極右派は、ハマス再建の機会になるとして休戦に反対している。

 休戦が成立した背景には、ハマスと支援勢力の弱体化、そしてまもなく発足するドナルド・トランプ米政権がある。イスラエルは戦争初期だった2023年11月、1週間ハマスと休戦したが、その後ジョー・バイデン政権の相次ぐ休戦仲裁に冷ややかな反応を示し、戦争をむしろ拡大してきた。

 昨年7月31日、ハマスの政治最高指導者イスマイル・ハニヤ氏が、イランの首都テヘランでイスラエルの仕業と推定される攻撃で暗殺された。ガザ戦争勃発直後からイスラエル北部地域を攻撃し、ハマスを支援したレバノンの武装組織ヒズボラもイスラエル軍の昨年9月の絨毯爆撃と、これによる指導者ハサン・ナスララ氏の死亡で勢力が急激に弱まった。イスラエル奇襲攻撃作戦の設計者であるハマスの指導者ヤヒヤ・シンワル氏が昨年10月16日にイスラエル軍に殺害されたことも、ネタニヤフ政権にとって重大な成果となった。結局、イスラエルは昨年11月27日、ヒズボラとの休戦に合意し、その後、ハマスとの休戦交渉の議論が本格的に再開された。

 政権1期目の時、極端なイスラエル偏向政策を展開したトランプ氏の当選も動力になった。トランプ次期大統領は、自分が任命した中東特使スティーブ・ウィトコフ氏をイスラエルのネタニヤフ首相の元に送り、イスラエル首相室はウィトコフ氏と面会したネタニヤフ首相の写真を公開して歓待した。

 トランプ次期大統領は休戦が成立した後、ソーシャルメディアへの投稿で、「この雄大な休戦合意はひとえに我々の歴史的な11月(大統領選挙)の勝利の結果」だとし、自身の成果に掲げた。また、第1次トランプ政権時代(2017年1月〜2021年1月)に治績に挙げてきた「アブラハム協定」を拡大する意欲を示した。「今回の休戦を動力にして歴史的なアブラハム協定を拡大する」と書いた。アブラハム協定は、イスラエルと敵対していたアラブ首長国連邦(UAE)などアラブ諸国との外交関係の樹立だ。その軸となるのはアラブの盟主であるサウジアラビアとイスラエルの国交樹立だが、ガザ戦争勃発後、サウジアラビアは交渉中断を宣言した。ガザ戦争の休戦でトランプ氏はアブラハム協定を完成する材料を得た。

 これは終戦になったとしても、ガザ住民を含むパレスチナ人の苦痛が終わらない可能性があることを示唆する。ネタニヤフ首相がトランプ氏の要求をある程度聞き入れ、イスラエルに有利でパレスチナに抑圧的な措置を米国から引き出す恐れがある。トランプ氏は昨年11月の大統領当選後、国際社会が不法だと批判するユダヤ人入植地建設を擁護するマイク・ハッカビー元アーカンソー州知事を駐イスラエル米国大使に指名するなど、イスラエル寄りの政策を予告した。

 イスラエル軍は交渉妥結後もガザ地区に対する空襲を続け、16日午前までに子ども20人と女性25人を含め少なくとも73人が死亡したと、AFP通信が報道した。休戦発効まで残りの3日間、イスラエルがガザ地区を集中爆撃する恐れがある。ハマス幹部のカリル・ハイヤ氏は15日、ビデオメッセージを通じて「イスラエル占領軍と支持者が467日間にわたり犯した野蛮な虐殺戦争は、わが国民と世界の記憶の中に現代史で最も恐ろしい集団虐殺として永遠に刻まれるだろう」と述べた。

チェ・ウリ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/arabafrica/1178344.html韓国語原文入力:2025-01-16 21:54
訳H.J

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