韓国のバッテリーメーカーの工場が徐々に止まりはじめている。中国を除く全世界がキャズムという深い需要不振の谷に陥り、韓国バッテリー3社の工場稼働率がますます下がっている。電気自動車(EV)に否定的なドナルド・トランプが米大統領に当選したことでキャズムが長期化する見通しであり、バッテリー業界の悩みはさらに深まっている。
17日に確認したSKオンの四半期報告書によると、同社は今年第1~3四半期、韓国内外の工場の平均稼働率が46.2%だった。操業日の半分以上も工場が稼動されなかったということだ。昨年の平均稼働率(87.7%)に比べて半分水準であり、今年上半期の稼働率(53.0%)よりもさらに低くなった。平均稼働率は、休日を除く1年の操業日のうち、工場を稼働させた時間がどれくらいかを示す。
SKオンだけの話ではない。サムスンSDIの二次電池事業部門の第1~3四半期の小型電池工場の平均稼働率は68%で、上半期(76%)以降著しく低下した。EVに入る中型・大型電池も似たような流れだ。LGエナジーソリューションは上半期の稼動率(59.4%)よりも第1~3四半期の稼動率(59.8%)は小幅に上がったが、昨年の平均稼動率(69.3%)には大きく及ばない。
グローバル市場でEVの需要が鈍化し、EV用中型・大型バッテリーの需要が同時に減った影響だ。バッテリーセルメーカーの売上と収益性も大幅に悪化した。LGエナジーの第1~3四半期の売上は19兆1684億ウォン(約2.1兆円)で前年同期に比べ25.5%減少し、営業利益率も7.09%から4.18%へと大きく悪化した。サムスンSDIもやはり二次電池事業部門の売上が21.3%減少し、営業利益率は7.73%から4.83%に下落した。SKオンは売上が半分に減り、営業損失は5632億ウォンから7676億ウォンに拡大した。
トランプ政権が発足すれば、これまで米国政府がインフレ抑制法(IRA)によって韓国のEVバッテリーメーカーに支給していた先端製造業の生産税額控除(AMPC)の支援金が打ち切られるか減額される余地がある。かろうじて黒字を維持していたLGエナジーも赤字も転換しかねないとの分析も出ている。米国ゼネラルモーターズ(GM)・ステランティスなどと提携して米国現地にバッテリー工場を建てているサムスンSDIも財務負担が大きくなる。バイデン政府は、米国や米国と自由貿易協定(FTA)を結んだ国で製造されたEVバッテリーに税額控除の特典を与えてきた。
米国の政策変化は、EVのキャズムの長期化を招きかねないという点でも致命的だ。キャズム克服のためには充電インフラの拡大とバッテリー技術の発展を通じた価格引き下げが必要だが、政策動力が弱くなれば充電インフラ構築やバッテリー業界の技術革新が遅れる可能性がある。
当面の生存と未来競争力という二兎を得ようとするバッテリー業界の悩みは一層深まっている。悩みの結果の一つが、コスト削減と共に新たな収益源であるエネルギー貯蔵装置(ESS)用バッテリー事業の強化だ。ESSバッテリー市場は、米国を中心に、人工知能(AI)による電力需要急増と新再生可能エネルギーの発電がの広がりを受け、急成長中だという評価だ。最近、LGエナジーが2026年から4年間にわたり、80ギガワット時(GWh)規模のESS供給契約を受注した事実を強調したのもこのような理由からだ。親会社であるSKイノベーションとSK E&Sの合併を通じて財務構造の安定化を推進中のSKオンは、着実に原価節減に力を入れている。今年第3四半期(7~9月)の売上原価率は74.0%で、1年前に比べて23.1%減少した。