肥満は栄養を豊富に摂取している現代の成人の最大の悩みの一つだ。体に脂肪が蓄積されると、糖尿病、心臓病、肝臓疾患、各種のがんを含む成人病やそれにともなう早期の死亡のリスクが高まる。
世界保健機関(WHO)によると、2022年時点での全世界人口の8人のうち1人が、肥満(BMI30以上)だ。18歳以上の成人を基準にすると、その割合がさらに高まり16%に達する。過剰体重(BMI25以上)の人口まで加えると、成人の43%になる。肥満度をあらわす指数(BMI=ボディ・マス・インデックス)は体重(キログラム)を身長(メートル)の二乗で割った値だ。
これによって、WHOは肥満を治療が必要な「病気」であり、21世紀の新種の伝染病だと規定した。WHOが定義する肥満は「健康を害するほど脂肪組織に異常または過剰な脂肪が蓄積された状態」を指す。
これに照らしてみると、肥満管理の要は食事の時間や食事の量、献立の構成を変えることだ。オーストラリアのボンド大学の研究チームが、このうち食事のタイミング戦略に関連する3つのダイエット方法の効果を比較分析した研究結果を、米国医師協会(JAMA)が発行する「ジャマ・ネットワーク・オープン」に発表した。
研究チームは世界各国で実施された29件の臨床試験に含まれた間欠的ファスティング、夕食抜き、間食抜きの3つの食事習慣の効果を分析対象にした。
これによると、3種類の方法は、12週間の試験での体重の減少幅は1.4~1.8キログラムで、いずれも似た効果を示した。
■朝・昼を中心に食事する
研究チームはまず、一日のうち遅い時間に食べるのは新陳代謝機能を悪化させるものとみられると明らかにした。私たちの体がインスリンに適切に反応できず、体重増加につながる可能性が高まるということだ。一方、早い時間の食事は新陳代謝機能を向上させることが明らかになった。
しかし、遅くに起きて遅くに寝床につく夜型の人たちは、どのような方法を使っても、体重減量効果が減ったことが分かった。研究チームは、これは遺伝的要因や食事の構成の問題など、様々な要因が作用したためだと推定した。
■間食なしで1日3食だけ食べる
食事の摂取回数を減らすのはどうだろうか。あるいは、食事の量を減らして食事の回数を増やすのはどうだろうか。
研究チームは、一部では少しずつ何度も分けて食べることがダイエットの成功率を高めるといわれているが、今回の研究では、1日3食の方が6食よりも効果が高いことが判明したと明らかにした。1日3食の食事によるダイエット法は、すべての間食をやめることだ。しかし研究チームは、1日2食の方が3食にくらべ望ましいとする証拠はないと付け加えた。
研究チームはカロリーを早めに摂取すること、すなわち、朝と昼に1日に必要なカロリーの大部分を摂取することがダイエットにもよく、空腹を減らすうえでも役立つと明らかにした。
■14時間以上食べない間欠的ファスティング
間欠的ファスティングは、1日のうち最も活動的な6~10時間内に1日の食事をすべて終え、残りの14~18時間の間は断食(ファスティング)することを指す。
研究チームは、動物の研究では間欠的ファスティングが体重減少や新陳代謝の改善につながることが確認されたが、人間にも同じ効果が現れるかどうかは断言が難しいと述べた。間欠的ファスティングの場合、全体的に食事の摂取量が減る傾向にある。研究チームは、間欠的ファスティングの効果が時間の間隔のためなのか、あるいは全体的な食事の摂取量の減少のためなのかも不明だと補足した。
したがって、食事習慣の変化による体重減量を望むのであれば、それぞれの生活方式に最も適した方法を選べばいいと明らかにされた。
*論文情報
doi:10.1001/jamanetworkopen.2024.42163
Meal Timing and Anthropometric and Metabolic Outcomes.