韓国外交部が先月、ユネスコ世界遺産委員会の開催を控えて配布した報道資料で、佐渡鉱山(佐渡島の金山)の展示物に関する日本代表の発言を事実と異なる形で伝えた事実が確認された。日本代表が言及した「すべての労働者」という表現を「韓国人労働者」に変更したのだ。
先月27日、インドのニューデリーで開かれた第46回世界遺産委員会の会議で、日本の首席代表を務めたユネスコ日本代表部の加納雄大大使は、佐渡鉱山で働いた「すべての労働者」のための展示物を設置したという事実に触れ、登録への賛成を呼びかけた。ところが、外交部が出した報道資料には日本代表の発言に登場した「すべての」が「韓国人」に変わっていた。外交部は「長い発言を短くする過程で発生したこと」だと釈明した。
■「長い表現を短くする過程で起きたこと」という外交部
8日、国会外交統一委員会所属のチョ・ジョンシク議員(共に民主党)が外交部から提出された日本首席代表の発言文(国会事務処の翻訳版)によると、「日本はすべての労働者の過酷な労働環境を説明し、彼らの苦難を記憶に留めるため、すべての労働者と関連した新たな展示物をすでに現場の説明・展示施設に設置した」となっている。
ところが外交部が会議前日の先月26日に配布した報道資料には、同じ内容が「日本は韓国人労働者が置かれた過酷な労働環境と彼らの苦難を記憶に留めるための新しい展示物を佐渡鉱山現場にすでに設置した」に変わっている。
外交部はこのような指摘に対し、変更を認めたうえで、「日本代表の発言文を訳す際、あまりにも長すぎたので短くする過程で発生したこと」という趣旨でハンギョレに説明した。
■屈従外交を隠すため国民を欺瞞する試み
しかし、外交部の説明とは違って、問題の報道資料は日本代表の発言文を「縮約」したのではなく、発言の主要部分を抜粋したものだ。単語の意味だけでなくニュアンスも重要視する外交現場で、相手国代表の発言の一部を恣意的に縮約・変形して報道資料に掲載することも常識に合わない。これをめぐり波紋が広がったことを受けて外交部は、問題になった発言が韓国を明示的に言及してはいないものの、両国間で行われた合意の意味が変わるわけではないとし、鎮火に乗り出した。
チョ・ジョンシク議員は「この事件は単純な単語の歪曲を越えて、対日屈従外交を隠すために国民を欺瞞し愚弄したもの」とし、「外交部の報道資料が配布される過程でどのように修正され、龍山(ヨンサン)大統領室とも意思疎通があったのかを詳しく確かめなければならない」と述べた。韓日関係の専門家である世宗大学の保坂祐二教授も「(日本側が)韓国の労働者を『すべての労働者』と表現し焦点をぼかそうとしているのに、韓国外交部がこれを看過すること自体が、韓国が日本の論理をそのまま受け入れていることを示している」と指摘した。