韓国検察が「尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領名誉毀損」事件を捜査する過程で、政治家やジャーナリスト、さらには一般市民まで無差別に通信資料を照会したことが明らかになった。捜査機関の無分別な通信照会は国民の基本権を侵害する行為だ。しかも、大統領一人のための捜査目的で一般市民の通信資料まで大量に照会するとは、自由民主主義国家の検察としてありえない。
ソウル中央地検反腐敗捜査1部は2日、「通信利用者情報提供事実の通知」という携帯電話のショートメールを通信照会対象者らに一斉に送った。尹大統領が検事だった時代、「釜山貯蓄銀行不正に対するずさんな捜査疑惑」を報道した記者たちと電話で話したジャーナリストや野党「共に民主党」のイ・ジェミョン前代表など野党政治家たちが多く含まれていた。彼らだけでなく、同報道を行った記者の親戚や学校の先輩・後輩など、報道と全く関係のない市民まで通信照会の対象に含まれたという。今回の通信照会対象者は3千人に達するという報道まで出た。対象と規模において前例がないほどの無分別な通信照会だ。
通信資料(通信利用者情報)には携帯電話加入者の名前や住民登録番号、住所などが含まれる。捜査対象者と電話で話した人物が誰なのかを調べるのに活用される。通話の日付と時間など裁判所の令状が必要な「通信事実確認資料」とは異なるが、通信資料を大量に把握しておけば記者の主な取材源が誰なのかが分かるため、取材活動の自由が脅かされる。政治家もどの記者、どの報道機関と主に接触するかが明らかになるため、「監視活動」ではないかという疑念を抱かせる。何より、今回の捜査と全く関係のない罪のない市民たちは、検察の通信照会通知にどれほど不安を感じているだろうか。
尹大統領は大統領候補時代の2021年12月、高位公職者犯罪捜査処(公捜処)が自身と夫人のキム・ゴンヒ女史、現与党の「国民の力」議員など135件の通信資料を照会した事実が明らかになったことを受け、「独裁時代を彷彿とさせる出来事」だとし、「政治家に対する監視活動」であり、「国民に対する監視活動」だと強く非難した。今「尹錫悦師団」が掌握した検察は当時の公捜処よりはるかに膨大で無差別な通信照会を行ったものとみられる。尹大統領は、自分と関連した捜査で起きた今回の事案については、どのような見解を持っているのか。そもそも検察が正当な報道に対して「大統領名誉毀損」容疑を突きつけて捜査したこと自体が問題だ。検察は裁判所の発行した令状の範囲を越えた取材資料まで大量に押収もした。何としても起訴に持っていくためにあらゆる強引な捜査方式を動員したのだ。