「昨日、砲射撃訓練が始まり、マンション入居者のグループチャットがざわついています。みんな不安で仕方がないと…」
3日午前11時、京畿道漣川郡漣川邑(ヨンチョングン・ヨンチョンウプ)のあるマンションに住むソ・ヒジョンさん(56)は、記者に会うやいなや携帯電話を差し出した。携帯電話のメッセンジャーアプリには、マンション入居者たちの不安がリアルタイムで綴られていた。前日、漣川郡中面(チュンミョン)の赤巨里(チョッコリ)射撃場では、午前8時から約2時間にわたり、K9自走砲などの砲射撃訓練が行われた。入居者のグループチャットは射撃訓練開始直後の8時11分から「今、何かが爆発する大きな音は…砲声でしょうか?」を皮切りに「音が大きくてびっくりしました」、「うちの息子は雷が鳴ってると言ってます」などのメッセージが相次いだ。ソさんは「爆発音が防音効果の高い二重窓を越えて聞こえてくるほど大きく、皆が不安がっていた」とし、「昨年入居が始まった新築のマンションだが、漣川に初めて引っ越してきた住民たちはさらに驚いた様子だった」と語った。
陸軍は2日午前、国防部の定例会見で「軍事境界線5キロメートル以内の射撃場で砲射撃訓練を再開した。この訓練にはK9自走砲6門、車輪型自走砲6門が参加し、計140発余りを発射した」と発表した。軍事境界線5キロメートル以内の砲兵射撃訓練と連隊級以上の野外機動訓練は、9・19南北軍事合意以降は中止されていた。ところが、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は先月4日、北朝鮮の汚物風船への対応として9・19南北軍事合意の効力を全て停止した。そんな中で砲射撃訓練が再び始まったのだ。
漣川郡は2014年、北朝鮮が北朝鮮向けビラに対し対空射撃を敢行し、韓国軍も対応射撃を行った地域でもある。当時、北朝鮮軍が撃った弾丸が漣川郡中面に一部飛んできた。漣川郡の住民たちはその時のことを思い出し、敏感に反応した。漣川郡で生まれ育ったオ・ミョンチュンさん(61、漣川邑)は「幼い頃からたくさんの砲射撃訓練を見てきた。だが、北朝鮮が銃を撃った10年前は本当に驚いた」とし、「再び砲射撃の音を聞くと、局地戦でも起きるのではないかと心配になる」と語った。漣川郡郡南面(クンナムミョン)に住むクォン・ミヨンさん(58)は、「帰農して11年ほど経つが、今は漣川郡を離れるべきか悩んでいる」とし、「砲声を聞いて猫がびっくりしてぶるぶる震えた。その姿を見ているうちに、これまで平穏に暮らしてきたのに、最近どうしてこんなふうになったのかと思うと悲しくなって、庭で一人で号泣した」と話した。
この日午後4時には漣川郡議会大会議室で「対北朝鮮ビラ散布禁止と南北境界地域住民の安全のための緊急懇談会」が開かれた。全谷商圏連合会のオ・ジンソク会長は「ときどき軍部隊の非常事態になると、私たちはコロナ禍と似たような状況に直面する。街から人が消え、早く店じまいをして帰る店主が多い」とし、「南北境界地域でこのように事件・事故が続けば、地域で商売で生計を立てるのはほぼ不可能だ」と付け加えた。漣川郡農民会のイ・ソクヒ会長も「漣川で対北朝鮮ビラを飛ばすと、民統線(民間人出入統制区域)地域で農業を営む人たちが出入りできなくなる」とし、「実際、今回の対北朝鮮ビラと汚物風船で、一部地域で民統線以北地域の出入りが禁止された。このままだと農業をやめざるを得ない」と語った。このような住民たちの訴えにもかかわらず、軍の訓練は続く。漣川では9日、装甲車など軌道車を使用した戦術訓練が予定されている。