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[寄稿]「少子化」する国を心配して結婚するだろうか=韓国

登録:2024-05-15 08:16 修正:2024-05-15 12:04
クリップアートコリア//ハンギョレ新聞社

 『結婚するなんてどうかしている』は2000年に発表されたイ・マンギョの小説で、2002年にユ・ハ監督が同名の映画を制作したことで広く知られるようになった。当時、最高の人気を博していたオム・ジョンファ、カム・ウソンが主役を務めたこの映画は、120万人の観客を集めた。映画を見ていない人にも、当時としてはかなり挑発的なタイトルが深く印象づけられたことだろう。

 24年が過ぎた今、このタイトルはもはや異様には感じられない。25~39歳の女性に占める既婚者の割合は、2000年の80%から現在は40%に低下している。20代後半の未婚女性に占める1年以内に結婚する女性の割合は、2000年の約20%から現在は約5%へと低下している。結婚は「どうかしている振舞い」だとまでは言えずとも、少数の選択肢になっているということは確実に思える。結婚が出産の前提条件となっている韓国社会においては、結婚の減少は出生児数減少の主な要因だ。

 なぜ若者は結婚しないのか。異なる時代を生きてきた筆者は、いまの若者の気持ちや事情を十分に推し量ることはできない。だが、一部の人々の主張のように文化的な規範や結婚に対する態度の変化だけで説明するのは難しい、ということを指摘したい。若者が結婚を選択することを困難にする長期的、構造的な要因を同時に考慮してこそ、私たちは結婚が急激に減るという現象の原因と解決策を見出せるだろう。

 第一に、若者たちが自身の人生を見通せなくなっていること。米国の経済学者リチャード・イースターリン教授によると、家族を作ろうと決めることは、現在の所得水準ではなく、人生に対する期待値とその実現可能性との差に左右される。また、人生に対する期待値は親の経済的条件に影響を受けるため、成長期に形成される。この理論は、高度成長期に青年期を過ごした親を持つ低成長時代の若者たちが結婚を先送りしたり、結婚しなかったりする現象の説明に合致する。韓国の生産年齢人口1人当たりの国内総生産(GDP)成長率は、親の世代が青年期を過ごした1980年代には年平均7.5%だったが、子どもの世代が青年期に入った2010年代には2.3%に落ちている。

 急成長の時代が終わって停滞と縮小の局面にさしかかると、過去の地位を維持するための競争が激しくなるため、優れた才能を持ち、途方もない努力をしている青年も機会を得るのが難しくなる。1998年のアジア通貨危機以降、大量失職に追い込まれ、年を取ると雇用の不安定さと貧困に直面した親世代を見て、子どもの世代も自身の将来に不安を感じただろう。このような状況においては、遠い未来を見通すことができてこそ可能な結婚を決めるのは、さらに難しくなったことだろう。

 第二に、結婚の経済的な誘引力がかつてに比べて弱まっていること。結婚が与えてくれる経済的便益としては、家庭内分業を通じた効率の向上、リスクが分散される可能性、共同消費という恩恵などがあげられる。だが、男性と女性の社会経済的な役割が似てきたことで結婚による分業の効果は弱まり、社会保険と福祉制度の拡大は家族のリスク分散機能を部分的に代替するようになった。また技術と消費パターンの変化は、共同消費という便益を低下させた。例えば「オンライン動画サービス(OTT)」の普及は共に映画館に行ってくれる人を必要なくさせ、ひとり飯やひとり酒も容易に、そして当たり前になった。

 結婚の経済的コストは膨らんだ。住宅価格と家を借りるコストが上昇したことで新居準備の負担が重くなり、結婚式にかかるコストも増加した。女性の場合、かつてより結婚の機会費用が高まった。一生働き続けることに対する準備が整っていて、職場での成功に対する意志の強い今時の若い女性にとって、家庭と職場に今も残る既婚女性の不利さは結婚を敬遠する要因となっている。

 若者たちが結婚できる社会への転換は、このように結婚しないという決定が「合理的な選択」となってしまっている現実を直視することから始めなければならない。このような現実を変えることは難しく、長い時間にわたる根本的な変化の努力が求められることを認識することから出発しなければならない。結婚奨励策として提示している若者を対象とする教育、キャンペーン、放送内容の変化などでは、結婚が「どうかしている行為」となってしまった現実そのものを変えることはなかなかできない。何より、少子化問題とは関係なしに、青年にとって恋愛も結婚も困難な社会はそれ自体が問題であり、不幸な社会であるわけで、このような状況を変えなければならないという視点への転換が必要だ。韓国の少子化を緩和するために結婚しろと叫んでも、いまの若者たちは応えてくれないだろう。

//ハンギョレ新聞社

イ・チョルヒ|ソウル大学経済学部教授・国家未来戦略院人口クラスター長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1140444.html韓国語原文入力:2024-05-14 07:00
訳D.K

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