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[寄稿]統一が平和より自由を前面に掲げる時

登録:2024-03-26 06:27 修正:2024-03-27 10:50
尹錫悦大統領が1日、ソウル中区の柳寛順記念館で開かれた第105周年三一節記念式典で演説をしている/聯合ニュース

 最近、国内外の学界では北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長のいわゆる「戦略的戦争決定論」と「二つの国家論」に関する議論が活発だ。前者の場合、偶発的軍事衝突と戦争拡大の可能性はあるが、北朝鮮が「計画による大規模戦争」を敢行する可能性は低いというのが大方の見解だ。しかし、後者に対しては攻勢的・戦術的対応論と守勢的・構造的転換論が拮抗している。

 筆者は平壌(ピョンヤン)の最近の動きを構造的転換とみる。伝統的に北朝鮮の統一政策は二つの軸で成り立っていた。「一つの民族、一つの国家、二つの地方政府、二つの体制」を特徴とする連邦制または低い段階の連邦制統一案が一つの軸であり、「南朝鮮」を含む「全国的範囲で民族解放民主主義革命」を成し遂げるための統一戦線戦略がもう一つの軸だった。特に、3大革命の力(北朝鮮、韓国、国際社会)の強化を通じて、韓国内部に地下党組織を構築し、共産革命を企てた統一戦線戦略は、韓国にとって大きな脅威となってきた。過去の革新政権ですら国家保安法を撤廃できなかったのはそのためだ。

 金正恩委員長は昨年末に開催された朝鮮労働党中央委員会の全員会議で、南北関係が交戦状態の「敵対的な二国間関係」であると宣言した。今年1月15日に開催された最高人民会議では、「共和国(北朝鮮)の民族の歴史から『統一』、『和解』、『同族』という概念そのものを完全に取り除かなければならない」とも述べた。これは「統一を目指す過程で暫定的に形成される特殊関係」という南北基本合意書の合意事項を全面的に無効にするという意味であり、同時に先代から続いてきた「一つの国家論」に基づく連邦制統一案を真っ向から否定するものだ。(統一政策において)北朝鮮体制の主な特徴の一つだった「遺訓統治」が効力を失ったわけだ。

 北朝鮮は2021年の第8回党大会で、労働党規約の序文の全国的範囲での「民族解放民主主義革命」という部分を削除し、統一戦線戦略の変化を予告した。今度は、廃棄へと方向を変えたわけだ。労働党の主要部署である統一戦線部を公式に解体する前に、祖国平和統一委員会、民族和解協議会など対南事業部門の機関を大幅に整理し、対南宣伝メディアの「我が民族同士」と対南国営放送の「平壌放送」の送出も中止した。さらに驚くべきなのは、北朝鮮体制が金科玉条のように扱ってきた平壌楽浪区域統一通りの「祖国統一3大憲章記念塔」までも「見苦しい」との理由で撤去を指示したという点だった。これは統一戦線戦略の完全なる廃棄であり、コペルニクス的転換だ。

 金正恩委員長はその理由をこのように説明した。「我々を『主敵』と宣布し、外勢と野合して『政権崩壊』と『吸収統一』の機会ばかりを狙う輩を和解と統一の相手と考えることは、これ以上私たちが犯してはならない過ちだ…米国の植民地子分にすぎない奇異な輩と統一問題を論じることは、我々の国格と地位に合わない」。一次的には、これは「我が国第一主義」という金正恩体制の統治哲学を反映した結果ともいえる。しかし本質的には、韓国側の体制威嚇に対する先制的防御といえる。もはや統一戦線戦略に基づき、韓国の体制に対する脅威を加えないから、大韓民国も憲法第3条の領土条項などを取り上げず、国際法とルールに則り、内政干渉と北朝鮮の体制を脅かすことをするなというメッセージも含まれている。

 しかし、細かいところまで考慮すると、このような変化が私たちにとって必ずしも否定的だと断定する理由はない。韓国の統一政策はもともと「二つの国家モデル」に基づいていた。「一つの民族、二つの国家、二つの体制と政府」という原則に従い、欧州連合式の国家連合モデルを想定してきたためだ。自由民主主義を土台にする「単一民族統一国家」を好むが、統一の究極的な形は南北合意で国民投票を通じて決めようというものだ。こう見ると、最近の平壌の「二つの国家論」は逆説的に韓国側の従来の主張に近づいてきたものともいえる。ただし難しい課題は、敵対的な両国間の関係をいかに友好と善隣の関係に切り替え、平和的合意統一の扉を開くかということだ。

 しかし、状況はそう容易ではない。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は三一節記念演説で、「北朝鮮政権の暴政と人権蹂躙は人類普遍の価値を否定すること」だとし、「自由と人権という普遍の価値を拡張することがまさに統一」だと述べた。いわば自由の北進統一を掲げたわけだ。統一部も自由主義統一言説を樹立するための具体的な動きに入った。「平和」の代わりに「自由」を真っ先に掲げる統一政策がもたらす未来は、果たしてどんなものだろうか。戦争、破壊、分断の深化を防ぐのに役立つだろうか。尹大統領の姿に、自由という槍を手に、ラ・マンチャの風車に向かって突進するドン・キホーテのイメージが重なって見える。

//ハンギョレ新聞社
ムン・ジョンイン|延世大学名誉教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1133651.html韓国語原文入力: 2024-03-25 09:20
訳H.J

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