「大統領配偶者キム・ゴンヒ株価操作疑惑特検法」が29日、国会再表決の末に最終的に否決された。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の拒否権行使を覆すためには出席議員の3分の2以上の賛成が必要だったが、与党の「国民の力」の組織的反対で失敗に終わった。国民70%が支持し、国会議員60%が賛成票を投じたにもかかわらず、100票あまりの与党の反対で立法に失敗したのだ。否決直後、与党指導部は満面の笑みを浮かべた。しかし、民意に逆らって大統領夫人の庇護を選んだ政権勢力の非常識と不公正を、多くの国民ははっきりと記憶に留めるだろう。
キム・ゴンヒ特検法は昨年12月28日、国会本会議を通過した。当時、各種世論調査で国民の支持は70%前後に達した。「法の下の平等」原則に基づき、大統領の配偶者もまた他の国民と同じく公正に捜査し、真実を明らかにすべきという民意の現れだった。実際、2020年4月の初告発以降、4年が過ぎたにもかかわらず、キム女史に対する検察の捜査は一歩も進んでいない。ドイツモーターズの株価操作事件の主な共犯たちにはすでに昨年2月、一審で有罪が言い渡された。裁判の過程で、公判検事も判事もキム女史が加担した情況を指摘した。ところが、検察組織は「捜査中」という言葉だけを繰り返し、疑惑を押しつぶしてきた。特別検察官の捜査でこのような異常を正すべきというのが圧倒的多数の民意だった。
しかし、政権勢力は一丸となって民意とは正反対に動いた。与党は特検法が通過する前から「総選挙を狙った悪法」だとして拒否権行使を煽り、尹大統領は緊急国務会議まで開いて拒否権を使った。国家的公益のために極めて例外的に使うべき拒否権を、配偶者の捜査を阻止するために私的に使った類を見ない事例だ。これから歴史に長く汚点として記録されるだろう。法務部は「前政権の検察が2年以上捜査してもキム女史に対しては呼出しすらできなかった事件」だとし、拒否権の乱用を擁護した。ところが、尹錫悦政権発足から2年が経った今も、検察は嫌疑なしの処分すら下せず、戦々恐々としているではないか。後に責任を負うことを恐れて捜査を先送りし、「爆弾回し」をしていることを知らない人はいない。「拒否権行使は間違っている」という国民世論が70%前後であることが、これを裏付けている。にもかかわらず、与党はついに表決まで党論で否決させた。
特検法案の廃棄は、政権勢力の崩壊した公正と正義を象徴する。野党は4月、特検法を再び推進することにした。今回がだめなら、次の第22代国会でも必ず権力者の傲慢と特権に警鐘を鳴らし、正義を建て直さなければならない。