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[寄稿]反尹錫悦政治の虚しさ

登録:2023-12-20 23:10 修正:2023-12-21 09:41
共に民主党のイ・ジェミョン代表が20日、国会で行われた最高委員会議で発言している/聯合ニュース

 いつのまにか年末だ。忙しい日常の中にあっても少しでも呼吸を整え、この1年を振り返ろうと努める時期だ。同時に新年の計画を立てる時期でもある。何を続けるのか、あるいは何を変えたいのかを自問する。このように考えながら韓国政治のこの1年を振り返ってみると、すぐに暗い気持ちになる。総体的な退行がこのまま続くのではないかと、何も変わらないのではないかと恐ろしくさえある。このような状態で1年を終えてもよいのだろうか。

 総選挙を前にして民生議題は消え去り、二大政党はひたすら収支計算に忙しい。与党「国民の力」は「今の我々には政治技術者が必要だ」と語り、野党「共に民主党」は「格好がついても負けたら何の意味もない」と語る。明確なビジョンや哲学もないくせに、はなから露骨に浅はかな駆け引きをするのに忙しいと自白しているのだ。利害関係の前では大義と原則を捨ててもよいと、過去の過ちを知りながら繰り返してもよいと公言しているのではないか。あなたたちの政治は季節商売なのか。既得権を守ろうとして約束を覆す政党に、私たちの未来を任せるのは困難だ。

 さらに言えば、未来を構想する能力と意志はあるのか。民主党の各種の公式発表に耳を傾けてみても、そこには尹錫悦(ユン・ソクヨル)-キム・ゴンヒ批判以外にはこれといった内容がない。追求する価値がどのようなものなのか、核となる哲学がどのようなものなのか、具体的なビジョンはどのようなものなのか、何も表に出てこない。今の時代、尹錫悦-キム・ゴンヒ批判は政治家でなくても誰もがしている。単に相手の過ちを指摘するにとどまらず、代案を作り上げ、韓国社会が進むべき道を指し示すことができて、はじめて政治家たりうる。内容のない反尹錫悦政治の虚しさに、いつまで耐えなければならないのか。

 反対と打倒に集中しているうちに自らの内容を失った政党は、ただの「対立項」として存在するに過ぎない。頭数だけ見れば巨大な政党なのに、現局面で反射利益も得られずにいるのだから、もしかしたら民主党は対立項の役割もまともに果たせていないのではないか。ならば、より賢い第3の勢力が登場すれば終わりなのではないか。それが政党であれ社会運動であれ、巨大な無党派層はどこへでも飛び込む体と心の準備はできている。その熱望を反映するかのように、新たにうごめく諸勢力が登場し続けるだろう。

 惰性に陥った既成の政治に幻滅を感じる人は少なくない。人々は敵対と嘲笑に乗るお手軽な「尹錫悦反対」ではなく、新たな政治の原型を示してくれる勢力を渇望している。より良い暮らしのモデルを提示することで現政権の実情を暴露する政治、暮らしを革新しうる政策を説明することで今の政策が自分のためのものではなかったことを気付かせる政治、正義と平等の価値を実現するロードマップを示すことで韓国社会が実に不公正だったことを証明する政治。これこそ現在の暴政を真正面から攻撃する政治だ。受動的で反応的な対立項の政治ではない、能動的で積極的な展望の政治を実現しなければならない。

 誰もが危機と災厄を論じつつ抜本的変革が必要だというが、肝心の政界は能動的な展望の政治を実現する人物を探しても育ててもいない。韓国社会に必要な価値観と政策に激しく苦悩する姿勢もみられない。「尹心競争」と「イ・ジェミョン(民主党代表)防衛」に汲々(きゅうきゅう)としているから、落ち着いてビジョンを設計しうる基盤が固められないのではないか。むしろ力量のある構成員さえ声をあげられない構造だ。変革的リーダーシップ理論は「『今-ここ』に注力し、可視的な成果に集中する人物」はマネージャー、「中長期的ビジョンと未来の価値観を提示する人物」はリーダーと、両者を区別している。もちろん、短期的利益に迅速に対応するマネージャーも必要だ。だが韓国政治においてリーダーとは誰なのか。ビジョンと価値観を自ら示し、国民を信頼させ、構成員の政治的力量を増進させるリーダーはいるのだろうか。

 既得権と組織の防衛を最優先にする政治は必要ない。私たちは価値観とビジョンを持つ「内容のある」政治を望んでいる。自分と考えが異なってもよいから、心から検討したり議論したりできる深みのある言説を作ってほしいということだ。私たちの暮らしの安寧を反映する諸指標は改善する兆しが見えず、次の世代は生まれておらず、全地球的な災厄に全力で対応しても足りないのに、こう着状態に陥っている二大政党政治は世の中を変えることができるのだろうか。2024年を迎えるにあたって、新年の願い事を言い訳にして新たな政治を渇望してみる。新年はどうか政治を見せてほしい。

//ハンギョレ新聞社

キム・ジョン・ヒウォン|米アリゾナ州立大学教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1121217.html韓国語原文入力:2023-12-20 18:22
訳D.K

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