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済州4・3文学の巨匠「尹大統領の率先訪日は恥」

登録:2023-04-04 03:10 修正:2023-04-04 07:28
2017年9月、第1回イ・ホチョル統一路文学賞を受賞した時の金石範さん=ソウル恩平区提供//ハンギョレ新聞社

 済州4・3事件が代弁する歪んだ現代史を日本社会に知らしめ、親日の責任を再度問う『火山島』に続き、その完結編である『海の底から』(2020年)の韓国語版を先日韓国に紹介した在日朝鮮人作家の金石範(キム・ソクポム)さん。来年白寿(99)を迎える同氏の筆跡には今も力がみなぎる。金さんに、日本語の大河小説を20年かけて完成(7巻、1997年刊)させても『海の底から』が必要だった理由を先月29日、電子メールで聞いた。金さんは400字原稿用紙8枚に自筆のハングルで回答を寄せた。

-全7巻の『火山島』を完成させても、90歳を超えてから、さらに完結編が必要だったのはなぜですか。

 「真の8・15の解放空間は南北の平和的統一だった。しかし現実は、一言で言えば、反統一分断の歴史の形成期だった。第2次世界大戦後の最初のジェノサイドである済州4・3大虐殺は、8・15解放空間の時代に起きた。歴史的過ちを犯した8・15解放空間の形成を是正するための歴史的再審、真の第2の解放空間を形成しなければならない。

 『火山島』において動く様々な群像は概して解放空間を背景にしているため、作家が恣意的に動かせるものではない。作品そのものの要求、作品に込めた時代の要求、作品中の人物たちの要求によるものだ」

-2000年の『海の底から、地の底から』、2006年の『地底の太陽』もありました。実際にその意味はつながっています。

 「権力によって抹殺された記憶が復活するのに半世紀かかった。死の島、沈黙の島、済州島。死に限りなく近い凍てついた記憶は一度に太陽の下、地上に湧き出てくるのではなく、時間をかけて空の下に湧き出てくるものだ。限りなく死に近い記憶の復活だ。地の底に、海の底に埋もれた記憶が蘇る行路、死者は生ける者の中に住む。記憶の伝承だ」

-今年は4・3抗争から75年です。韓国人はなぜ今も4・3に注目しなければならないのでしょうか。

 「4・3は済州島の地域的問題ではない。4・3の解放は8・15解放空間の再審、そして真の解放空間の形成と不可分の関係にある。8・15解放空間の再形成-李承晩(イ・スンマン)政権の解放空間の再審査。同時に4・3の歴史的位置づけと正名が必要だ。4・3に注目せねばならないのかではなく、8・15解放空間を国民による力で再審査せよということだ」

-主人公のイ・バングンはよく「豚になってでも生き残れ」と言っています。『海の底から』はその遺志の展開だといえそうですが。

 「犬死にという言葉があるように、虐殺の場で生き残ってはじめて、いつかは人としての役割を果たすことができる。豚になってでも命を支え、敵との戦いの場に立たなければならない」

金石範さんは400字原稿用紙8枚分の回答を自筆のハングルで送ってきた//ハンギョレ新聞社

-4・3がきちんと語れない過去の条件について「記憶の自殺と他殺」とおっしゃっています。歴史に対する日本の逆転した態度のようにも見えます。最近の韓日両国の対面をどうご覧になりましたか。

 「韓国大統領は韓日で歴史の清算ができていないにもかかわらず、日本は何度も謝罪したと述べつつ率先して訪日(したものであり)、恥ずべきことだ」

 金さんは1965年の韓日基本条約にさかのぼって自らの論理を展開した。そして当時の日本の援助の中の「3億ドル無償資金」を「独立祝賀金」とみなしたことからして「恥辱的」だと述べた。

 金さんは「返事に非常に悩んでいる」として返信に時間をかけた。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の訪日に続き、折あしく独島領有主張を深め、強制徴用の強制性を否定していると読める日本の小学校の社会科教科書の検定結果が報じられていた時だ。

 金さんは恋愛小説が書きたいとしばしば言ってきた。彼は言った。

 「女性が男性を支配する架空の社会を設定し、男女の群像の生活像を描きたいと思っていた時期がありました。その空間に漂うエロティシズムを探ってみたかったんです。女性の愛と復讐。(もはや)無駄な話になってしまって申し訳ない。期待しないでください。いつの間にか年を取ってしまって、書く時間はなさそうです」

イム・インテク記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/1086259.html韓国語原文入力:2023-04-03 11:50
訳D.K

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