大統領室は3日、「巫俗人の天供(チョンゴン)が大統領官邸の候補地だった漢南洞(ハンナムドン)の陸軍参謀総長公館を訪れていた」という疑惑を提起したプ・スンチャン元国防部報道官と、これを報道した「ニューストマト」、「韓国日報」の記者たちを警察に告発した。大統領室は「偽疑惑」だとしつつ、「天供の動線が直接・間接的に確認されたとか、官邸への出入りを目撃した証人や映像などの客観的根拠が少なくともあるべきだ」と述べた。
最初の報道となった2日のニューストマトの記事を見ると、プ・スンチャン元報道官のインタビューと「大統領室の事情に詳しいある関係者」の具体的な証言があり、プ元報道官がナム・ヨンシン前陸軍参謀総長と天供の公館訪問について話したという昨年4月1日の陸軍行事に、2人が参加していたことも確認できる。またナム前総長、天供、警護処などに確認を要請しているなど、反論と釈明の機会提供にも努めている。これらの人々は答えていないか、否定している。大統領室の主張のように「天供の動線」と「官邸に出入りする映像」の把握や提示はできていない。刑事告発したのだから、これから捜査機関が確認すればよいだろう。しかし、大統領室が先に「官邸に出入りするCCTV(防犯カメラ)映像」と、名指しされた政府関係者の当日の動線を明らかにし、釈明すれば良いのではないか。
報道機関は捜査機関ではない。報道機関が報道を行うためには、法的枠組みの中でできる限り最善を尽くした確認過程を経て、真実へと近づいてゆかなければならない。しかし、完璧に確認するまでは「疑惑」提起もしてはならないというのは正しくない。加えて、権力は常に牽制・監視されなければならない。最高権力機関が自らに対する疑惑をきちんと釈明せずに、覆い隠しておいてまず告発から手を付けるというのは恥ずべきことだ。
報道翌日に、主張した本人であるプ元報道官だけでなく報道したメディアをも告発したということからは、他のメディアによる追加取材を防ごうという目的が明白にうかがえる。とりわけ、報道機関の責任者ではなく報道した記者個人を告発したというのは稚拙な行為だ。脅しと威圧を最大化しようとするものだ。大統領室は昨年12月にも「天供疑惑」を提起した正義党のキム・ジョンデ前議員と、当時キム前議員が出演した番組「キム・オジュンのニュース工場」の司会者だったキム・オジュンさんを放送翌日に告発している。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は演説のたびに「自由」を口にしているが、「尹錫悦の自由」とは「大統領室の告発する自由」なのか、問わざるを得ない。
大統領による告発は慎重でなければならない。法に訴えたり依存したりするのは力のない人々が最後のとりでにすることであって、報道機関の口封じのための大統領の道具となってはならない。