本文に移動

「父の誕生日に娘がレストランを予約してくれた日…」梨泰院惨事、慟哭の葬儀場

登録:2022-10-31 09:31 修正:2022-10-31 09:33
30日午前、京畿道高陽市一山東区の東国大学一山病院の葬儀場の様子/聯合ニュース

 「ちがう、これは夢だ」。若い盛りの子の遺体を確認した親は、体を支えられず泣き崩れた。

 「全部嘘みたい」。数日前まで一緒に笑っていた友人の死に直面した20代女性は、電話を握ってすすり泣いた。

 200人を超える死傷者が発生した「梨泰院惨事」直後、犠牲者が安置された首都圏全域の大型病院の葬儀場は、どこも号泣であふれた。154人の訃報を受け入れる余力のない葬儀場の前では、遺体を運んできた救急隊員と病院スタッフの間でいさかいが起きたりもした。30日午後10時30分現在、犠牲者154人は京畿道一山(イルサン)の東国大学病院をはじめ、40カ所あまりの病院に分かれて安置されている。

犠牲者を臨時安置した体育館は明け方もごった返し

 この日、死亡した人たちが移送されたソウル順天郷大学病院と龍山多目的室内体育館などには、家族や知人の生死を確認しにきた市民たちが集まり、夜通し気を揉んでいた。夜明け前の時刻にも、遺体を運ぶ担架を目にするたびに犠牲者の家族は切迫した泣き声を上げながら駆けつけ、顔を確認した。行方不明者の家族はもどかしさに身悶えした。「どうして電話に出ないの」。ある中年女性はすすり泣いていた。犠牲者の家族は茫然自失した。「ありえない、圧死だなんて…」。 事故が起きた29日の午後11時55分、娘のソ・イェソルさん(19)の友人から娘が死亡したという話を聞き、慌てて体育館を訪れたアン・ヨンソンさん(54)は、「どこに行けばいいのか、どうすればいいのか分からない。葬儀はどうなるのか…」と涙を拭った。

「育ててくれてありがとう」娘の最後のメッセージ

 夜が明けて犠牲者の身元が続々と確認されると、犠牲者が安置された病院の葬儀場の各所に遺族が集まった。現場を訪れた遺族と知人たちは皆一様に「信じられない」「嘘みたいだ」「現実じゃないみたい」と口にした。被害者の大半が健康な若者であるうえに、一度も想像できなかった事故だったため、残された人々のショックはさらに大きかった。

 「スジョン(仮名)はどこ。スジョンが待ってるのに。お腹が減ったろう」。 この日、梨大木洞病院のロビーで会ったある遺族は、亡くなった20代の孫娘の名前を呼びながら歩き回った。高齢者は「もともと外を出歩く子じゃない。孫娘がかわいそう、あんなに冷たいところに置いて」と涙を拭った。30才の娘を亡くした60代の男性も「家族の花のような子だった」と涙を飲んだ。

 Kさん(58)も娘(27)がボーイフレンドと梨泰院に行き事故で死亡したという知らせを聞き、病院に駆けつけたところだった。父の誕生日に「お母さんと一緒に行ってきて」と高級レストランを予約してくれた優しい娘だった。Kさんは「娘が予約してくれて妻とおいしい食事をしたが、夕方ずっと電話が通じなかった。千万分の1にもならない確率のこのようなことが、私たちに起こるとは思わなかった」と言い、うつむいてすすり泣いた。亡くなった娘がKさんに最後に送った誕生日祝いのメッセージには「今まで育ててくれてありがとう。これからお返します^^」と書かれていた。

遺体を横たえる場所もなかなか見つからず

 最も多くの犠牲者(14人)が安置された一山の東国大学病院では同日朝、遺体をめぐって葬儀場側と救急隊の間でいさかいが起こった。「20人収容できる」という説明を聞いて到着した救急隊に、葬儀場側が「一般死亡者と霊安室の問題で、霊安室全部を梨泰院惨事の犠牲者に渡すには力不足だ」と難色を示したためだ。救急隊が運んできた4体の遺体は病院に入ったものの、結局再び運び出された。「とにかく当院は今は無理です」。 病院側はきっぱりと言った。横たえる場所も見つからない遺体を包んだ茶色の毛布の端から、楽しい外出のために選んだはずのピンク色のスニーカーが覗いていた。

クォン・ジダム、パン・ジュノ、シム・ウサム、キム・ミンジェ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/assembly/1064904.html韓国語原文入力:2022-10-31 01:25
訳C.M

関連記事